私たちの指は古代魚からの贈り物だった!?指が生えた先史時代の水中生物が発見される

 
 生命の歴史の中で記念すべき出来事の1つは、魚が水から這い上がり、四足類に進化したことだろう。四足動物とは、4本足を持つ脊椎動物のことで、そこには我々人間も含まれている。


 この移行を完了するためには、いくつかの解剖学的な変化が不可欠だった。中でも重要だったのは、手と足の進化だ。

 2010年、フリンダース大学(オーストラリア)とケベック大学(カナダ)の研究グループが、カナダ、ケベック州ミグアシャ国立公園で「エルピストステゲ・ワトソニ(Elpistostege watsoni)」では初となる1.57メートルの完全な化石を発見した。

 『Nature』(3月18日付)に掲載されたこの化石の研究によると、どうも私たちの手は、このエルピストステゲのヒレから進化した可能性が濃厚であるらしい。
【魚類と四足動物の特徴を持つ先史時代の魚】

 エルピストステゲ類は、3億9300万~3億5900万年前のデボン紀中期から後期にかけて存在していた、すでに絶滅した魚の仲間だ。

[画像を見る]
エルピストステゲ・ワトソニ(Elpistostege watsoni)のイメージ図

 面白いことに、総鰭類の魚と初期の四足動物の両方の特徴を持っており、その姿は魚でありながらどこか四足動物に似ている。先史時代の魚と陸上で生きることができる動物と間にある空白を埋める可能性があるとされる所以だ。

 エルピストステゲなどの魚の胸ビレの先端には、「橈骨」という小さな骨がある。一連の列を形成したこの橈骨は、四足動物の指と基本的にはまったく同じものだ。

 違いがあるとすれば、エルピストステゲ・ワトソニの場合、それはまだヒレの中にあり、人間の指のように自由には動かせないということだ。

[画像を見る]
新しく発見された完全なエルピストステゲの化石。全長1.57メートル

【ヒレの中に指の起源となる骨が発見】

 完全なエルピストステゲの化石からは、そのヒレの中に上腕骨(腕)、橈骨と尺骨(前腕)、手根骨(手首)、ならびに別個の列に並ぶ小さな骨があることが判明した。


 研究グループによれば、これはまだ鰭条(ヒレを支える筋のような組織)のある魚のヒレの内部で発見された、指骨の存在を示す最初の科学的証拠であるという。

 この発見は、人間の指を含む脊椎動物の指が、まずエルピストステゲ類のヒレの中で指骨の列として進化したことを示唆しているそうだ。

[画像を見る]
Flinders University
【柔軟に動くヒレで体重を支える。やがては地面をつかむ手に】

 進化の視点から見ると、ヒレの中の指骨の列は、ヒレに柔軟性を与え、きちんと体重を支える上で有利だったと考えられる。

 この特徴は、エルピストステゲが浅瀬を這い回るときや、水中から地上へ登ろうとするときに便利だったかもしれない。

 だが、こうしたヒレを使う頻度が高くなってくると、やがて鰭条が失われるとともに、指が目立ち始め、手で地面をつかみやすいように大きく発達した。

 研究グループによると、エルピストステゲは、魚と陸上で生活する脊椎動物との境界を曖昧にするという。

 我々の直接の祖先というわけではないが、魚と四足動物の間にある空白を埋める「過渡期の化石」に一番近いものであるそうだ。

[動画を見る]
Ancient fish fossil reveals evolutionary origin of the human hand
References:theconversation / newatlasなど/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:私たちの指は古代魚からの贈り物だった!?指が生えた先史時代の水中生物が発見される http://karapaia.com/archives/52289056.html
編集部おすすめ