
2017年、起源不明の天体が太陽系を来訪した――。
史上初めて発見された恒星間天体「オウムアムア」は、その出自の謎だけでなく、まるで葉巻のような形状といった不思議な特徴をも有している。
『Nature Astronomy』(4月13日付)に掲載された研究によれば、「オウムアムアは恒星に引き裂かれた惑星の破片」と考えるとすべての謎が解けるのだそうだ。
Tidal fragmentation as the origin of 1I/2017 U1 (‘Oumuamua) | Nature Astronomy専門家の予想を大きく裏切るオウムアムアの姿 恒星間天体が存在するだろうことは、以前から予測されていた。だが天文学者が予想してきたその姿は、2番目に発見された恒星間天体「ボリゾフ彗星」のような天体だ。
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1065-8
ボリゾフ彗星は、ぼんやりとしたコマ(核を覆うチリやガス)に包まれており、その名が示すとおりの彗星だ。また太陽系外縁部にある氷の惑星にも似ている。
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ボリゾフ彗星 / NASA、ESA、D。Jewitt(UCLA)
ところが、オウムアムアにはコマがなく、葉巻のような細長い奇妙な形までしている。
それだけでなく、オウムアムアが太陽を通過する際に、重力以外のものに起因する加速が確認されている。
こうした現象は、太陽の熱によって氷やダストが溶かされてしまう彗星でならよく起こる。だが、オウムアムアではそのような蒸発は確認されていない。なのに、なぜ加速するのか?
「オウムアムアは太陽系にあるどの天体ともまるで違います。じつに謎めいていますが、色や電波放射の欠如といったいくつかのサインが、オウムアムアが天然の天体であることを指し示しています」と、中国科学院国家天文台の張韵氏は話す。
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青い丸がhttps://karapaia.com/archives/52273517.html / ESO/K
恒星の潮汐破壊によってバラバラになった惑星 張氏らは、オウムアムアの奇妙な特徴を高度なシミュレーションモデルによって解明しようと試みた。
それの結果によれば、惑星などがそれが公転する恒星からおよそ35万キロ以内の範囲を通過すると、潮汐力によってバラバラになってしまい(潮汐破壊)、惑星の組成によってはオウムアムアのような細長い葉巻のような形になって回転することがあるという。
このような激しい現象が起きると、破片は吹き飛ばされ、やがて主星の重力を振り切って星間宇宙へと旅立つようになる。
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恒星の潮汐破壊プロセス Zhang Yun
閉じ込められた氷がジェットとなって加速させた シミュレーションモデルからもう1つ分かったことは、惑星がバラバラになったとき、表面にあった水は恒星の熱で蒸発してしまうが、奥深くにあったものは氷のまま閉じ込められてしまうということだ。
オウムアムアが太陽に接近したときに加速したが、それは内部にあった氷が蒸発して多孔質の岩石から噴出。これが天然のロケットのように加速させたと考えれば辻褄が合う。
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Yu Jingchuan from Beijing Planetarium
惑星型恒星間天体と彗星型恒星間天体 従来、恒星間天体としてより一般的なのは、主星から離れたところで形成された彗星のような天体だろうと予測されてきた。
しかし本モデルで考察されたのは、恒星の近くで誕生した恒星間天体だ。そのような天体が、主星の重力を振り切って外へ飛びだすことは、彗星よりもずっと稀だろう。
しかし、彗星が一度に1つしか恒星間宇宙へ飛び出さない一方、惑星が砕けた場合は、数多くの破片が外へ向かって飛び散ることになる。
「小惑星型恒星間天体の総数は、彗星型恒星間天体よりも多いと予測します。ただ、小惑星型は彗星型よりも小さく、コマがないのが普通なので、仮にそれが太陽系を訪問したとしても検出するのはずっと難しいでしょう」と、張氏は説明する。
そうだとしても、今後もオウムアムアのような外宇宙からの訪問者はこれからも観測されるだろうとのことだ。
References:sciencenews / iflscience./ written by hiroching / edited by parumo
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