
ポルトガルの海岸で津波のような形をした巨大な雲が目撃された。
これはアーチ雲の一種である、「ロール雲」と呼ばれる珍しい気象現象で、熱波による極端な高温と冷たい海水が生んだものだ。
波のように押し寄せる巨大な雲は、ビーチを訪れていた多くの人々に畏怖の念を抱かせるには十分なもので、すぐさまスマホで撮影され、その光景はSNSなどを通じて広まった。
津波かと思ったら巨大な雲!
2025年6月29日、ポルトガル北部から中部の海岸で、津波のような巨大な雲が海の上を転がるように押し寄せた。
海と空の境界に長く伸びるその雲は「ロール雲」と呼ばれ、波が押し寄せるような迫力ある姿で人々の目を引いた。
ビーチにいた多くの人々はすぐさまその光景をスマホで撮影した。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの気候科学者パウロ・セッピ氏[https://www.washingtonpost.com/climate-environment/2025/07/02/roll-cloud-weather-heatwave-portugal/]は、「見た目は壮観だが、恐れるものではない」とコメントしている。
ロール雲の特徴と発生条件
ロール雲はアーチ雲[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%81%E9%9B%B2]の一種で、正式には「ストラトキュムラス・ヴォルータス(Stratocumulus volutus)」と呼ばれる。
アメリカ国立気象局[https://forecast.weather.gov/glossary.php?word=roll%20cloud]によると、ロール雲は雷雨の突風前線や寒冷前線に伴って強い下降気流が前方に押し出されるときに発生するという。
また、同局はロール雲が「比較的まれ」な気象現象であることを指摘している。
雲は他の雲から独立した筒のような形をしており、横方向に長く伸びるのが特徴だ。回転しているように見えるのは、雲の上下で冷たい空気と暖かい空気がぶつかり、空気の流れに渦が生じるためである。
ロール雲は時に数十kmから数百kmにわたって伸びることがあり、比較的低い高度を水平方向に移動する。
日本でも寒冷前線通過時や積乱雲の発達に伴い、沿岸部などでまれに目撃されることがある。
今回のポルトガルでは、熱波による高温の陸地と冷たい海水の温度差が強い下降気流を生み出し、ロール雲の発生を後押ししたと考えられている。
陸地には届かず海上で停滞
ポルトガルの海岸に現れたロール雲は、津波のように海の上を押し寄せるように進んだ。しかしその雲は陸地に届くことなく、まるで同じ場所で波が砕け続けているように海上で停滞した。
気候学者のマリオ・マルケス氏[https://www.planoclima.com/]によると、その理由は陸地の高温にある。陸地の空気が海上よりもかなり高温だったため、冷たい空気の流れが陸に向かって進む力を失ってしまったのだという。
つまり、ロール雲を生み出した冷たい下降気流が、陸地の熱で勢いをなくし、その場で止まってしまったのである。
このため、迫力あるロール雲の姿は海の上にとどまり、陸地を覆うことはなかったのだ。
強力な熱波により発生した可能性
ポルトガルはここ数週間、ヨーロッパの多くの国と同様に猛暑に見舞われていた。
ブルガリアの報道機関、BGNESによると、6月29日には中部モラ地方で約46.5度という記録的な高温が観測された。
この極端な高温と冷たい海水が組み合わさったことで、ロール雲が発生するのに理想的な条件が整ったとインペリアル・カレッジ・ロンドンの気候科学者パウロ・セッピ氏は説明している。
セッピ氏はさらに、気候変動の影響で、今後こうした気象現象を目にする機会が増える可能性があると述べている。