
無意識に顔を触ってしまう理由 /iStock
コロナの感染予防の為、手を洗う前に顔を触らないように呼びかけられている。手に付着したウイルスが、目・口・鼻から侵入するのを防ぐためだ。
だが、わかっていても無意識に顔を触ってしまうのが人のサガというものだ。
それには理由があるという。人間は本能的に自分の手の匂いを嗅ぐようにできており、そのせいでつい顔に触ってしまうのだそうだ。
【人が顔を触るのをやめられない理由】
呼吸器疾患の25%は顔を触ることで感染すると考えられている。なのに、それをなかなか止められない。
ワイツマン科学研究所(イスラエル)の研究チームは、それほどまでに人が自分の顔を触りたい生き物なのならば、そこに何か進化上の理由があるのでは? と考えた。
1つ考えられるのは、顔を手で触ったときに、その匂いを嗅いでいるという可能性だ。
たとえば、それによって自分が手で触れたものについて情報を得ているのかもしれない。自分自身が臭くないか確認しているとも考えられる。
あるいは、大昔には鏡などなかったことを考えれば、匂いで自分自身を認識している可能性だってあるだろう。
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顔を触るのが止められない/pixaboy
【人は匂いを嗅ぐのが好き】
研究チームは今回、19ヶ国で約400名に対してネット調査を実施し、匂いを嗅ぐ頻度を尋ねてみた。参加者のうち137名は男性、260名は女性。
平均年齢は35歳(19歳から74歳)だった。
結果、94%が「自分自身」の匂いを、60%が「他人」を、94%が「家族や親戚」を嗅ぐという回答が得られたとのこと。
女性の場合、男性と比べて、自分の子供の匂いをよく嗅いでいることも分かった。
さらに参加者の90%以上が、自分の手や脇の匂いを嗅ぐと回答。55%は手で脇に触れた後にその匂いを嗅いでおり、手で股間に触れた後に匂いも嗅ぐ人も大勢(男性73%、女性55%)いた。
また182名は、子供が手の匂いを一番よく嗅いでいたのは3~6歳のときだったと回答している。
Are humans constantly but subconsciously smelling themselves? | Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstb.2019.0372
【顔に触れるほど鼻で呼吸をしている】
この研究では、過去に行われた霊長類や人間を対象とした関連研究にも触れている。
たとえば、ある研究によるなら、私たちには顔に触れているとき鼻呼吸が増える傾向があるらしい。つまり自分自身の匂いを嗅いでいるのだ。
また別の研究では、さまざまな状況で顔に触れる頻度を観察し、ある状況では20分の間に最大13回も触るという結果が得られている。
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匂いを確認したい Pixabay
【人は手の匂いを嗅いで心を落ち着かせている】
このように、顔に触れるのは手の匂いを嗅ぐためだという視点から考えると、ちょっと面白いトリビアが見えてくる。
あなたは恥ずかしい思いをしたときに、手で顔を隠したりはしないだろうか?
研究チームによれば、これも匂いが関係している可能性があるのだそうだ。
手の匂いを嗅ぐことで自分自身を確認し、それによって感情をコントロールしやすくしているのだとか。
手の匂いを嗅ぐという行為は、心の安定を保つ上で重要なのだという。コロナ禍のせいで顔に触れないことが推奨されているが、もしかしたら、こんな不安なときだからこそ、余計顔に触りたくなるのかもしれない。
触りたい、でも触れない。このジレンマはもうどうしようもない気がするけれど、無意識に触ってしまうことがあるとわかれば、とにかくこまめに手を洗おう。
この研究は『Royal Society journal Philosophical Transactions B』(4月20日付)に掲載された。
written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:人が自分の顔を触るのを止められない理由。ある本能がそうさせる(イスラエル研究) http://karapaia.com/archives/52290211.html
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