
乳児時代の気質は人格形成に大きな影響 / Pixabay
個人の人格(性格・気質)はどのように形成されていくのか?遺伝なのか?環境なのか?かねてから様々な研究が行われており、そのどちらも影響を及ぼしている可能性が示唆されている。
今回、アメリカで発表された研究は、生まれてまだまもない乳幼児時代の気質が、その人の一生の気質にどう影響するかを調べたものだ。
その結果、乳幼児期、内気で内向的な気質を持つ人は大人になっても変わらず、成人になってからの人格形成に影響を及ぼしていることがわかったという。
【乳児期の気質が成人後の人格形成に影響を与えている】
メリーランド大学カレッジパーク校、アメリカ・カトリック大学、アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)は共同で、乳幼児時代の気質が成人後の性格や気質にどのような影響を与えるのかを断続的に調査した。
その結果、乳幼児期の行動抑制(BI)気質が、26歳になったときの内省的、内向的な気質に関係していることがわかった。
この調査結果は、ミスをすることに異様に敏感になる思春期の子どもは、成人になってから不安症やうつなどの内在化障害を引き起こすリスクが高いことを示す。
この研究は、米国科学アカデミー紀要に発表され、幼児期の気質が成人になったときの性格を決める確たる証拠を示した。
NIMH ≫ Infant Temperament Predicts Personality More Than 20 Years Later
https://www.nimh.nih.gov/news/science-news/2020/infant-temperament-predicts-personality-more-than-20-years-later.shtml
NIMHの研究者であるダニエル・パイン氏はこう語る。
幼児期の行動を精神病理学のリスクに結びつけている研究は数多くありますが、私たちの研究の発見は独特です。
人生の非常に早い時期、乳飲み子くらいの頃の気質を調べ、それぞれ神経プロセスの異なる段階を通じて、20年以上後に起こる結果に結びつけているからです
気質とは、まわりの世界に対するその人の感情的、行動的な反応の生物学的個人差をさす。幼児期における気質は、のちの人格形成の基礎となる。
行動抑制(BI)と呼ばれるひとつのタイプは、見慣れない人や物、状況に対して慎重になる、恐怖心を抱く、回避するという行動をとる特徴がある。
BIは幼児期や子ども時代に比較的よく見られるが、この傾向の強い子どもは、そうでない子どもよりも、将来、引きこもりや不安症になるリスクがかなり高い。
この発見は、幼少期に抑制気質のある子供が長じてどういうことになるかを示しているが、かなり幼い頃から大人になるまでの長期に渡って、抑制気質のある子供を追ったデータはふたつの研究しかない。
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【生後14ヶ月で行動抑制(BI)気質の子供は大人になっても変わらず】
今回の研究は、生後4ヶ月の乳幼児のサンプルを集め、14ヶ月(1歳2か月)になった時点でその子のBI気質を調査した。
さらに、これまで発表されているふたつの研究と違い、のちに精神病理学リスクのある個人差を特定するために、神経生理学的な測定を行った。
14ヶ月の子どものBI気質を評価し、その子たちが15歳になったときに、もう一度、調査して神経生理学的なデータを集めた。
この測定は、エラー関連陰性電位(ERN)を評価するのに使う。ERNは、例えばコンピュータ化されたタスクで間違えたときに脳が発する信号を記録して測定するもので、ネガティブな出来事にその人がどれぐらい敏感かをうつし出す。
この信号が大きい人ほど、不安症など内向的な状態に陥りやすいという。逆に、この信号が小さいということは、衝動的、薬物使用といった外向的な状態と関係している。被験者たちが26歳になったとき、再び、人格、社会生活機能、学歴、雇用など、精神病理学的調査を行った。
「これほど長期に渡って、同じ人たちと接触し、調査し続けることができたことは驚きです。最初は、被験者の両親、その後は本人たちが、ずっとこの研究に興味をもち続け、参画してくれたのですから」メリーランド大学のネイサン・フォックス博士は言う。
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【乳幼児時代内気な子は大人になっても内気】
生後14ヶ月でBI傾向があった人は、26歳の大人になってもその気質が残っていた。彼らは過去10年間、恋愛経験がほとんどなく、友人や家族との関係も希薄で、内にこもる傾向があり、これは15歳の時点でERN値が大きかった人だけの傾向ではなかった。
BI傾向は、一般的に外向的な精神病理学や、学歴や雇用状態などとは関係がなかった。
この研究から、赤ん坊のときにみとめられた気質が、大人になっても続いていることが確認でき、ERNのような神経生理学的マーカーが、大人になって内向的精神病理を発症するリスクがもっとも高い個人を特定するのに役立つかもしれない。
「わたしたちは長年、行動抑制の生態を研究してきて、それが発達成果に大きな影響を与えることを明らかにしました」フォックス博士は言う。
今回の研究は、この分野での過去の調査を繰り返して、さらに拡張したわけだが、こうした発見を一般的に理解してもらうには、今後の研究で、もっとたくさんの多様なサンプルがそろえる必要があるという。
References:Infant temperament predicts personality more than 20 years later: Behavioral inhibition in infancy associated with introversion and internalizing psychopathology in adulthood -- ScienceDaily/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:乳幼児時代の気質は20年後の人格形成に影響を与えていることが判明(米研究) http://karapaia.com/archives/52290510.html
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