
馬は信頼している人間の顔を覚える les1858/pixabay
群れで暮らす社会的動物は、嗅覚的、聴覚的、視覚的な手掛かりに基づいて仲間の個体認識を行っている。この能力は敵や味方を見分け、行動を決定するために必要なものだ。
では人間に対してはどうなのだろう?
今回、フランスの研究チームは馬を対象に、どれだけ人間の写真を認識できるかという実験を行った。その結果、馬は飼育係のような信頼関係のある人の顔を認識し、見知らぬ人の写真と見分けることが可能であることが判明したという。『Scientific American』などが伝えている。
【馬が人間の顔を認識できるか実験】
これまでの研究によると、猿や鳥、家畜など、社会的な生活を営む動物の一部は顔の特徴によって同種の個体を識別することができ、写真だけを見ても異なる顔を区別できる高い知能があることが明らかになっている。
では、馬はどうだろうか。
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25~30年の寿命を生きることができる馬は、野生馬以外は生涯を通して人間との関わりを持つことを常としているため、大量の情報を保持する能力があるかもしれない。
そこで今回、フランス国立農業・食糧環境研究所の行動学者レア・ランセードさんは、5000年以上の歴史を人間と共有してきた馬が、写真で個々の人間をどれだけ認識できるかを調べる実験を行った。
実験には、英ウェールズ原産のメス馬(全て3歳)11頭が参加。フランス国立農業・食糧環境研究所で繁殖し、飼育されている馬たちだ。
【コンピュータ画面で2枚の写真を見せ、区別するよう訓練】
研究チームは、最初にコンピュータ制御画面を使用して、11頭の馬にそれぞれ2枚の写真を同時に提示し、どちらかを選択することを訓練した。
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馬たちは鼻で画面の写真に触れるよう教えられ、チームはそれを認識の合図とした。ちなみに、どの馬も過去に誰の写真も見せられたことはない。
この訓練を何度か繰り返した後、チームは馬に飼育員の顔と見知らぬ人の顔を見せた。すると、馬は今の飼育員の顔を正しく識別。見知らぬ人の顔を75%の確率で無視した。
更に、馬は6か月間会っていない過去の飼育員の写真も認識したという。
チームによると、実験中馬が毎回正しく知った顔を理解していたというわけではないが、今の飼い主を特定する確率と同じぐらい正確に過去の飼い主を識別することができたそうだ。
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【馬は人間への顔認識能力と長期記憶を持っている】
結果として、馬は見慣れた人間の顔とそうでない顔の区別をすることができるだけでなく、写真がにおいや音など他に手がかりのない実生活の2次元表現であることを、直感的に理解していることがわかった。
加えて、馬は人間の顔に対して強力な長期記憶を持っている可能性があることも判明。これは、馬の能力が人間の最古の仲間である飼い犬よりも優れていることを示唆したものであり、馬の寿命と家畜化の歴史と一致するものだとチームは述べている。
今後の実験では、過去に悪い経験をした人たちの写真を見せて、馬が不安を感じたり回避したりする可能性があるかどうかをテストしていく予定だそうだ。
なお、今回の調査結果は、4月14日にジャーナル誌『Scientific Reports』にて発表された。
Female horses spontaneously identify a photograph of their keeper, last seen six months previously | Scientific Reportswritten by Scarlet / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41598-020-62940-w
記事全文はこちら:馬は信頼している人間の顔を認識し、写真からでも見分けることができる(フランス研究) http://karapaia.com/archives/52290781.html
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