
20億年前の地球は酸素に満ち溢れていた image by:K. Paiste
どうやら大昔の地球はこれまで考えられていたよりもずっと酸素が豊富で、それが複雑な生命の進化をうながした可能性があるようだ。
アルバータ大学(カナダ)とタルトゥ大学(エストニア)の研究チームが提示する科学的証拠は、20億年前の地球はこれまでの常識よりもずっと酸素が濃かったことを示唆しているそうだ。
【微量金属の割合から20億年前の酸素濃度を推定】
この研究では、ロシアで採取されたボーリングコア(掘削機のパイプで取り込んだ円筒状の土壌サンプル)が調べられた。それは「シュンガ石」(シュンガイト)という、二酸化炭素をたっぷり取り込んだ20億年前の岩石を含むものだ。
分析の結果、モリブデン・ウラン・レニウムが圧倒的に多く、ウラン同位体の比率も高いことが明らかになった。
研究チームのカーレル・マンド氏によれば、一般にこうした微量金属が作られるのは、酸素が豊富に存在する海や堆積物の中においてだ。つまり、シュンガ石が堆積した当時、酸素が急激に増えていたことがうかがえるという。
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シュンガイト/iStock
【従来の炭素・酸素サイクルモデルと矛盾する謎】
ただ、謎も残されている。地球の炭素・酸素サイクルを説明する一般的なモデルは、シュンガ石が堆積した時代では酸素が急激に減少していたと予測しているのだ。
したがって今回の結果は、従来のモデルと完全に矛盾している。初期の地球で炭素・酸素サイクルの生み出した原因について、再検討をうながす結果であるとマンド氏は述べている。
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【真核生物の進化に影響?】
またこの結果は、複雑な生命の進化に関するヒントも与えてくれている。
20億年前という時代は「真核生物」が登場した時代でもある。真核生物はあらゆる複雑な生命の祖先であるが、生きるには大量の酸素を必要とする。
そのような複雑な生命の進化に適した条件は、これまでの常識よりもずっと早く整っていたという説があるが、今回の発見はこれを裏付けるものであるそうだ。
この研究は『Nature Geoscience』(3月16日付)に掲載された。
Palaeoproterozoic oxygenated oceans following the Lomagundi–Jatuli Event | Nature GeoscienceReferences:Ancient rocks show high oxygen levels on Earth 2 billion years ago | EurekAlert! Science News/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41561-020-0558-5
記事全文はこちら:古代の岩石から20億年前の地球は酸素が豊富だったことが判明。真核生物の進化に影響(カナダ・エストニア共同研究) http://karapaia.com/archives/52290857.html