シリアルキラーの心の闇に迫る、 伝説のFBI特別捜査官が使った10のプロファイリング・テクニック

凄腕FBI捜査官の人心掌握テクニック /iStock
 プロファイリングとは、行動科学的な視点から犯罪の性質や特徴を分析し、犯人の姿を推測する捜査手法のことだ。

 このプロファイリングを語るうえで外せないのが、伝説の元FBI特別捜査官——ロバート・K・レスラージョン・E・ダグラスの両名だ。


 彼らはチャールズ・マンソンやテッド・バンディをはじめとする犯罪史上に名を残す数多くのシリアルキラー(連続殺人犯)と対談し、プロファイリングの発展に貢献した。
 
 その知的かつ劇的な捜査は、『羊たちの沈黙』やより最近の『マインドハンター』など、映画やドラマのモデルにもなってきた。

 シリアルキラーとの面談でその心の内を探り出すには、心理学の知識と何より長年の経験が必要になる。そのテクニックは怪物のような相手だけでなく、普通の人間から情報を引き出す際に有効な場合もあるだろう。

 以下では彼らが教えてくれたそのためのヒントだ。彼らいわく、「画家を理解したければ、その絵画を観よ」なのだそうだ。
【10. 徹底した下準備】

 危険かつ複雑な人格を宿す相手から手がかりを聞き出すには、徹底した準備が必要となる。シリアルキラーとの面談に先立ち、関連するあらゆる資料を読み、その犯罪を熟知しておかねばならない。

 同じシリアルキラーは二人といない。ダグラスとマーク・オルシェイカーの著書『The Killer Across the Table』ではこう述べられている。

我々が調査する犯罪者はみな殺人犯だが、それでいてみな違う。どの人殺しもいく層もの微妙な差異をまとっていた

 シリアルキラーがFBI捜査官の面談に応じる理由もさまざまだ。


 自分を対象とする心理分析をただ楽しむ者、捜査が好きで警察とのやりとりを楽しんでいる者、協力の見返りを期待する者、刑務所内の退屈な日々に変化が起きることを歓迎する者、自分が犯した殺人を語るのが好きな者など、彼らにはそれぞれの動機があるのである。

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徹底した下調べ/iStock
【9. 自尊心をくすぐる】

 シリアルキラーに彼らのおそるべき犯行をしゃべらせる手っ取り早い方法は、自尊心をくすぐってやることだ。

 彼らの多くは、道徳感や良心が欠如しており、そのためにあまり不安を感じず、犯行においては攻撃的かつ加虐的だ。また神経が図太く、恐ろしい犯罪を犯した直後に、何事もなかったかのように恋人と食事をとったりする。

 そのような連中には、いくら圧力をかけても意味がない。それではむしろ反感を買うのがオチだろう。そうではなく、自尊心をくすぐってやるのだ。

 FBI行動分析課のロビン・ドリークは、どのような意見でも反対したりはせず、認めてやらねばならないと述べている。

どんな意見も批判してはいけない。もし同意できないと思えば、そいつはすごい意見だねとか、深い意見だねとか言って、『どうしてそう思うのか、僕が分かるよう教えてくれないかい?』って頼むのさ。


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ロビン・ドリーク元FBI捜査官による、誰とでも仲良くなれる3つの方法

【8. 殺人犯の立場になって考えてみる】

 プロファイリングは複雑なパズルを解くようなものだ。効率的に解きたいのなら、殺人犯の視点から物事を考えてみることだ。


 それに耐えられないなら、サバンナのライオンになったところを想像してみよう。目の前にはレイヨウの群れがいる。さて、捕まえやすそうな奴はどれだろうか? あいつは足が弱そうだな。なら、次の獲物は決まりだ――。

 これは人間を狩るシリアルキラーも同じだ。彼らは狩りの興奮を味わっている。

 「マインドハンター」の原作者であるジョン・ダグラスとマーク・オルシェイカーはこう述べている。

襲撃者の立場に身をおかねばならない。そいつのように考え、そいつのように計画し、抑圧された妄想が実現し、ついに犠牲者を完全に操り支配する瞬間に感じるそいつの満足を理解するために。私もまた殺人犯になったつもりで歩まねばならない。

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Vladimir Zapletin/iStock
【7. メモを取らない】

 シリアルキラーとの面談で厄介なのは、メモを一切取れないことだ。

 彼らとの面談でダグラスが早いうちに学んだのは、記録という行為が相手を身構えさせるということだった。
ドラマでならメモを取ったり、会話を録音したりするシーンが登場するかもしれないが、実際にそのようなことをすれば彼らは口をつぐんでしまう。

 面談は通常、2~6時間ほど続く。そして、それが終われば57ページもある書類に記入をしなければならない。それなのに録音もメモも取れない。だから、シリアルキラーとの面談ではまず優れた記憶力が要求される。

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iStock / Jirapong Manustrong
【6.殺人犯のレベルに合わせる】

 シリアルキラーの信頼を得るためには、相手のレベルに合わせねばならないときがある。

 リチャード・スペックという男がいる。1960年代、彼はシカゴにあった看護実習生の寮に押し入り、一晩で8人の女性を拷問や暴行をくわえた末に次々と殺害した。

 彼と面談したレスラーとダグラスだが、最初スペックはまったく協力しようとはせず、無視を決め込んでいたという。そこで2人はやり方を変えることにした。まるでそこにスペックなどいないかのように仲間内で会話を始め、このようなことを言ったのだ。

 「そいつのせいで、俺たちゃ全員、女8人をトンビに油揚だぜ、不公平だよな?」

 するとスペックは笑って、「イカれてやがる。
そこのところが、俺とお前の違いだぜ」と話し、それから質問に応じるようになった。

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一晩で8人を殺害したアメリカの殺人犯、リチャード・スペック / wikimedia commons
【5. 嘘に対処する術を身につける】

 せっかくの面談だというのに、シリアルキラーの嘘に振り回されるのはゴメンだろう。

 レスラーとダグラスが面談した連中の多くには死刑判決が下されているが、それでもなお彼らは想像力をたくましくし、状況をコントロールしようと試みている。要するに、シリアルキラーには夢想家が多いのだ。

 1970年代のニューヨーク市で6人を通り魔的に射殺したデビッド・バーコウィッツという男は、面談で近所の犬に取り憑いている3000歳の悪魔に人を殺すよう強要されたと主張していた。

 だがダグラスは相手にせず、「おい、デビッド、嘘をつくな、犬は関係ない」と告げた。バーコウィッツは笑って頷くと、犯行の動機を語り出した。

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ニューヨークを恐怖のどん底に陥れたデビッド・バーコウィッツ / wikimedia commons
【4. 慈悲や罪悪感を押し付けない】

 普通の人間なら、苦しんでいる人間を目にすれば同じように苦しみを感じる。その苦しみが少しでも和らいだことを知れば、同じようにホッと胸をなで下ろすだろう。人間には他人の感情を理解する共感力が備わっているからだ。

 シリアルキラーとて他人が苦しんでいることを理解できるし、その恐怖を認識することもできる。だが、それに対して捕食者として行動する以外、特に気持ちが揺さぶられるようなことはない。


 このような特性があるからこそ、迷子になって泣いている子供や夜道を一人で歩いている女性の弱みにつけ込むことができる。本能的に捕食者として行動を開始してしまったら、彼らの凶行について罪悪感を感じろと言うのは土台無理な話なのだ。
 
 FBIでプロファイラーだったメアリー・エレン・オツールらの著書『Dangerous Instincts』には、こう書かれている。

サイコパスに慈悲心や罪悪感を感じるよう説くのは、男性に子供を産んでくれと頼むようなものだ。連中には無縁の経験である。そのようなことを求め続ければ、彼らは苛立つことだろう。彼らにとって感情は問題でしかなく、感じる価値を見出せないものだ。


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Motortion/iStock
【3. 恋人とデートをしているかのような態度で接する】

 コミュニケーションの55%はボディランゲージで占められているという。だから面談での身振りや手振りはとても重要なものとなる。それ次第で、数時間続く面談でも、シリアルキラーに気分良く過ごしてもらうことができるのだそうだ。

 だからまるでデート中でもあるかのような態度で振る舞わねばならない。相手とはきちんと向き合う。
腕組みなどせず、アイコンタクトを欠かさず、穏やかな声で話す。また警戒させる恐れがあるので、「殺す」「殺人」「暴行」などという言葉も避けるべきだ。

 もう1つ。相手を見上げるような姿勢をとるのもいい。ダグラスはそうすることで相手に優越感を与え、口を軽くさせてきたという。

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Former FBI Agent Explains Criminal Profiling | Tradecraft | WIRED

【2. 決して気を許さない】

 シリアルキラーの中には、相手の心を読み、操るのが非常に得意な者たちがいる。

 レスラーは『Whoever Fights Monsters』の中で、彼のチームのほぼ全員が多大なストレスを感じており、多くの捜査官が夜中に見るようになった悪夢に耐えられず、数年でプロファイラーを辞めてしまったと述べている。

 またある捜査官は、シリアルキラーにまんまと取り入られて、彼の上訴を有利にするような情報をうっかり伝えてしまったこともあるという。レスラーによれば、シリアルキラーに操作されないようにするには、安定した私生活が大切になるそうだ。

 またダグラスはこう述べている。

胸糞悪くなる凶悪犯罪の被害者に対応し、そうした被害者のことなど気にも留めない、犯罪史上に残るような連中と話をする。

だが、面談ではそいつにはまるで問題がないかのように振る舞う。思ってもいない共感すら示してやることだってある。そうせねばならないのだ。

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SIphotography/iStock
【1. 1人で面談をしない】

 「ナチュラルボーン・キラー」と呼ばれたエドモンド・ケンパーという男がいる。2メートルを超える大男で、女性8名をバラバラにして殺害した彼は、ダグラスとレスラーに殺人犯の心についていくつもの貴重な洞察を与えてきた。

 だがあるとき、レスラーは単独で彼と面談を行ったことがあった。4時間が過ぎた頃、レスラーは呼び出しボタンを押して、守衛に面談の終了を知らせた。ところが誰もやってこない。15分後、再び呼び出しボタンを押す頃には、自分の焦りをケンパーに気取られてしまっていた。

 するとケンパーはこう切り出した。「俺がここでキレたらあんた大変なことになるぜ。その首引っこ抜いて、テーブルの上で守衛とご対面させてやることもできる。」

 心理的に優位に立とうとするレスラーとケンパーの言葉の応酬は30分続いた。

 「FBI捜査官を殺したら大変なことになるのはそっちだ」とレスラー。「連中に何ができる? テレビでも取り上げるのか?」と鼻で笑うケンパー。

 ようやく守衛がやってきたとき、震えるレスラーに対してケンパーはこう言った。「なあ、冗談だよ。分かってるだろ?」と。こうしてレスラーは重要な教訓を学んだのである。

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エドモンド・ケンパー Mindhunter vs Real Life Ed Kemper - Side By Side Comparison
References:An FBI Agent Reveals 5 Steps To Gaining Anyone's Trust / Top 10 Tricks Used By FBI Profilers In Serial Killer Interviews など/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:シリアルキラーの心の闇に迫る、 伝説のFBI特別捜査官が使った10のプロファイリング・テクニック http://karapaia.com/archives/52290879.html
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