
ティラノサウルスは長距離ランナータイプ/iStock
進化生物学の一般的な見解によれば、長い脚は速く走ることに適応したサインであるという。
しかしティラノサウルスをはじめとする70種以上の獣脚竜の脚を分析したメリーランド大学(アメリカ)の研究によれば、ことはそう単純ではないようだ。
この研究では、500グラム程度から9トンを超えるものまで、さまざまな恐竜の脚のバランス・比率・体重・歩き方が分析されている。
そこから判明したのは、長い脚は確かに速く走るためのものかもしれないが、同時に持久力や効率を追求した結果である可能性もあるということだ。
つまり速く走る短距離走よりも、長く走り続けるマラソンの方が得意であるとも考えられるのだそうだ。
【走る速度は20~29キロ、ティラノサウルスは意外にも遅かった】
ティラノサウルスには、暴力的なまでのダッシュ力で獲物を仕留める俊敏なハンターというイメージがある。しかし、その運動能力についての最近の研究では、それほど卓越した走力はなかっただろうことが明らかになっている。
たとえば2017年、当時もっとも包括的なコンピューターモデルで、ティラノサウルスの歩きや走りをシミュレートするという研究が行われている。
その結果によれば、ティラノサウルスが移動する速度は時速20キロ程度が限界であるという。それ以上速く走ろうとすれば、その衝撃で足の骨が砕けてしまうのだ。
さらに別のモデルを使った同年の研究では、500種以上の現生種の最高速度や体の大きさなどが分析された。その結果からティラノサウルスの最高速度を推測すると、時速29キロ程度だったろうという結論が得られている。
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【がんばれば逃げ切れるかも?】
もしあなたが6600万年前の白亜紀にタイムスリップして、ティラノサウルスに遭遇してしまったとしたらどうなるだろうか?
通常、大人の歩く速度は時速4~4.8キロであるという。走る速度は人によって差があるが、その4倍と言われているので、時速16~20キロ程度と言われている。
つまり普通の人でもティラノサウルスといい勝負ができるということだ。
ウサイン・ボルト選手のトップスピードは時速44.6キロだったそうなので、彼なら余裕で逃げられる。走りに自信のある人なら、案外ティラノサウルスをぶっちぎれるかもしれない。
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【体の大きな肉食動物にとっては省エネが重要】
当然ながら、大きな体は移動速度に不利に働く。小型・中型の恐竜ならば、確かに長い脚があればそれだけ速く走れたことだろう。
しかし『PLOS ONE』(5月13日付)に掲載された今回の研究は、体重1トンを超える恐竜ともなれば話が違うことを明らかにしている。それによれば、そうした大きな恐竜にとって長い脚が意味するのは、エネルギーの効率性であるという。
肉食動物はエサを得るために、長時間獲物を探して歩き回らねばならない。そのため、いつエサを得られるとも分からない捜索時間のエネルギー消費をできるだけ抑えねばならなかった。長い脚はそのために有利なものであったようだ。
The fast and the frugal: Divergent locomotory strategies drive limb lengthening in theropod dinosaurs
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0223698References:These legs were made for walking: T. Rex had legs built for marathons, not sprints/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:ティラノサウルスの脚を分析。短距離走よりも長距離走に適したタイプだったことが判明(米研究) http://karapaia.com/archives/52290918.html
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