SFの世界が現実に。NASAは本当にワープ航法を研究していた

NASAはワープ航法の研究を行っていた/iStock
 無限の宇宙を自由に移動することができる究極の航法――すなわちワープは実現すれば素晴らしいが、実際にはSFの中だけの話にも思えるが、NASAは実際にワープ航法について研究を行っていたようだ。

 あるレポートからはその可能性がうかがえる。
少なくとも、時空を操作して宇宙を移動するというアイデアは、将来的な選択肢としてはきちんと視野に入っているようだ。

 NASAジョンソン宇宙センターの研究者がまとめた『ワープ・フィールド・メカニクス101』と題されたそのレポートでは、光速に匹敵あるいはそれを超える速度を実現するとされる「アルクビエレ・ドライブ」を取り上げ、その問題点と打開策を解説している。

【時空に流れを作り出しワープするアルクビエレ・ドライブ】

 アルクビエレ・ドライブは、メキシコの物理学者ミゲル・アルクビエレが考案したアイデアで、宇宙船の前方にビッグクランチを、後方にビッグバンを作り出し、それで時空の流れを作り出そうというものだ。

 アインシュタイン方程式が基になっており、一般相対性理論を破ることなく、光速を超える速度での移動が可能になるとされている。

 イメージとしては、宇宙船が乗っている時空を、ちょうどお皿の乗ったテーブルクロスのように、前から後ろへと引っ張ることで目的地を引き寄せるような感じだ。

 レポートには次のように説明されている。

アルクビエレが提唱した航法コンセプトでは、宇宙船は従来の推進システムを利用して起点(たとえば地球)を出発し、距離dを移動。次いで起点から相対的な位置で停止する。

ここで場を発動させると、宇宙船は目的地まで一気に進む。局地的には光速を破ることなく、それでいて任意の短い時間でその距離を移動する

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【アルクビエレ・ドライブの問題点】

 宇宙船ではなく、時空自体を流して移動するアルクビエレ・ドライブだが、それを実現するには問題がないではない。

 たとえばレポートは、時空に流れを作ることができたとしても、宇宙船がどちらに進むのか分からないと指摘している。

そのエネルギー密度が生じると、X軸のプラス方向の選択は数学的に任意となってしまう。
こうなると、どちらへ向かうのか宇宙船ですら知らない


【ローリングスタートで進行方向を決める】

 SFでは、進行方向が不明という問題を安定したワームホールを考案することで解決したようだが、このレポートでは、それとはまた別の打開策が提案されている。

 機体を停止させて、それからワープするスタンディングスタート方式ではなく、走りながらスタートするローリングスタート方式を採用し、それを進行方向のガイドとするのだ。

修正案はこうだ。地球を出発した宇宙船は、まず亜光速にまで達し、それから場を展開する。すると場によるブーストはスカラー乗数的に初期速度に作用し、見かけ上の速度はずっと速いものとなる

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【まず地球上でアルクビエレ・ドライブは発展する】

このレポートでは、アルクビエレ・ドライブの数学的な問題がたった1点取り上げられただけだ。その実現までには、まだまだ越えねばならないハードルがいくつもある。それでも、はるか彼方にある星々への移動実現に一歩近づいたことは確かだ。

 なおレポートでは、ワープ航法の性能実験は身近なところで行われる可能性もあると述べられている。

ワープ航法のコンセプトについては、潜在的には地球上でも有用な応用の仕方があるかもしれない。そうしたものを通じて、実際の星間航法システムに採用される前に熟成を進めることができるだろう。

 アルクビエレ・ドライブの前提にあるのは、”負の質量”の存在だ。この仮説上の概念を実現することができなたら、それはまず地球上で使われるに違いないのだ。


Microsoft PowerPoint - White_100YSS_Presentation.pptx
https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20110015936.pdf
References:Warp Drive - Is Warp Drive Possible? | NASA Working On Warp Drive/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:SFの世界が現実に。NASAは本当にワープ航法を研究していた http://karapaia.com/archives/52290957.html
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