
UFOによる強制着陸か/iStock
UFO目撃情報は数々あるが、特にパイロットなど航空関係者の報告は驚かされるものが多い。彼らは一般人と違って、空中で見ることになるものをきちんと把握し、異常があればすぐにわかるよう訓練されたプロだ。
中でも、1979年、スペインの旅客機が攻撃的で執拗なUFOに強制的に着陸させられたこのケースは奇妙さが際立っている。
【旅客機がとらえた2つの赤い光】
1979年11月11日夜、スペイン史上もっとも奇妙なUFO事件は起こった。スペインのTAE社JK297便が、カナリア諸島のラスパルマスへ向かうため、オーストリアのザルツブルグを飛び立った。
乗客は109人、乗員はベテラン揃いで、まったくいつもと変わらない通常のフライトだった。給油のためマヨルカ島に立ち寄ったときも、なんの問題もなかった。しかし、それから最終目的地に向かう途中で、おかしなことことが待ち構えていた。
突然、地上の管制塔から、緊急周波数チャンネルに切り替えるよう要請が入った。通常地域だが、非常ビーコンが探知されたというのだ。
パイロットのフランシスコ・ハヴィエル・レルド・デ・テハーダが言うとおりにすると、自分たちの航空機の左側に異様なものがいるのに気がついた。
夜空に赤い2つの光が見え、それがものすごいスピードで297便に向かってくる。
[画像を見る]
MickeyCZ/iStock
テハーダは急いでバルセロナの管制塔と連絡をとり、近づいてくる光についての情報を得ようとしたが、レーダーにはなにも映っていない。以下は、TAE297便と管制塔の会話の冒頭部分だ。
パイロット:バルセロナ、こちらTAE297便
管制塔:TAE297便、なんだ?
パイロット:当旅客機の左6.4から8キロほどのところに飛行体がいる。確認してくれ
管制塔:TAE297便、いや、航空機はなにも確認できない
パイロット:ふたつのシグナルが見える。赤い光だ。こちらの位置からおよそ4.8から16キロの間。高度はほぼ同じ
管制塔:そちらの位置を10とすると残り4.8キロか?
パイロット:そうだ
管制塔:了解
ーーパニックになった声ーー
パイロット:たのむ、あの飛行体について、今すぐ詳しくおしえてくれ
管制塔:TAE297便、そのルートにほかの航空機はない。イビザからアリカンテまで、きみたちの飛行機だけだ
パイロット:ありがとう。感謝する
管制塔:TAE297便、その光が見えるのは海上か、それとも空中か?
パイロット:繰り返す。飛行体がいる。同じ高度だ
管制塔:TAE297便、了解した
パイロット:バルセロナ、こちら、TAE297便。あれがどんなタイプの飛行体なのか確認してくれ
管制塔TAE297便、確認だが、同じ方角に向かっているのか
パイロット:そうだ! どんどん近づいている。ふたつの赤い光しか見えない。点滅はない
管制塔:TAE297便、まわりに飛行体の報告はまったくない。マヨルカのパルマにもっと低空でなにか見えるか確かめたが、やはりほかになんの飛行体もいないと言っている
[画像を見る]
スペインの航空会社、TAEの旅客機image by:wikimedia commons / Christian Volpati
【旅客機を一定距離を保ちながら追尾するUFO】
マドリードのトレホン・デ・アルドス軍事レーダーも、297便以外の飛行体をとらえることはできなかった。
このエリアで同時刻のフライトスケジュールはなかった。そうこうしているうちに、この光が高速で接近してきたので、テハーダは衝突を避けるために、急速に高度を下げて回避行動をとった。
光はその動きを真似て、同じ高度にぴたりとつけてきたが、今度はそれ以上近づいてこなかったという。
むしろ、297便からおよそ500メートルという嫌な位置を保っていたらしい。これがべつの航空機なら、安全対策ルールをまるで無視していることになる。この距離では、回避行動も危険すぎるからだ。
テハーダはたまらずに、バレンシアのマニゼスにある空港に緊急着陸許可を打診、許可された。
だが、297便が新たな方向へ向かおうとすると、この不気味な赤い光もどういうわけかついてきた。だが、相変わらずレーダーには映らないのに、クルーや乗客にははっきり見えていた。
マニゼス近くまで、この光は297便を追いかけてきたが、現れたときと同様、いきなり消えた。この時点では、光はかなり空港に近づいていたため、地上からでも肉眼で確認できた。
すると、レーダーが突然、3つのもっと大きな飛行体をとらえた。それは、直径がおよそ200メートルもあるような巨大な物体で旋回していた。緊急着陸のために現れた未登録のべつの航空機かと思われたが、どれほど呼びかけても、なんの応答もなかった。
[画像を見る]
Pixabay
【スペイン空軍が出動する事態に】
この事態は、スペイン空軍が厳戒態勢に入るのに十分だった。ロス・ジャノス空軍基地からミラージュF1戦闘機がスクランブル発進して、現状を確認しようとした。
戦闘機パイロットのフェルナンド・カマラは、その飛行物体は非常に高速で動き、追いつくのにマッハ1.4までスピードをあげなくてはならなかったと報告している。実際に彼は目視でその物体を確認できたが、それは円錐状をしていて、さまざまな色に光るライトがついていたという。
確認できたのはそれだけで、この奇妙な飛行体は、とても追いつけないスピードであっという間に見えなくなった。
バレンシアの近くでまた別の飛行物体が現れたという報告があり、パイロットが迎撃しようとしたが、近づくとどういうわけか電気系統の計器が動かなくなり、さらにミサイルレーダーにロックオンされているという不気味なアラームが鳴ったため、やむなく追跡をやめざるをえなくなった。
謎の飛行体はアフリカ方面へ逃げていき、追跡をやめると計器は正常に戻ったという。
[画像を見る]
iStock
【マニゼスUFO事件の真相は現在も不明のまま】
この不可解な事件の後、297便のクルーたちは、マスコミや世間にこの事件を口外しないよう厳命されたが、それでもやはりこの事件は騒ぎになった。
政府による全面的な調査が始まり、「マニゼスUFO事件」として知られるようになった。
[画像を見る]
image by:wikimedia commons
297便のパイロット、テハーダは自分が見た飛行体は従来の航空機ではないと断固として主張したが、あれがエイリアンの宇宙船だと断言するところまではいかなかった。
事件をとりあげたマスコミは、なんらかの陰謀があったのではないかと憶測した。
297便の乗客の多くは、実際にUFOを見たわけではないし、遅延し行先を変更されたフライトの払い戻し金を航空会社が払わずに済ませるための作り話ではないかと勘ぐったのだ。
もちろん、航空会社側は、この夜、空中で異常な事態が確かに繰り広げられたのだと言って、これをきっぱり否定した。しかし、実際になにが起こったのかについて、かなりの議論になった。
政府は、金星など星の通常の現象、遠くの化学工場の光など、懸命に苦し紛れの説明をしようとしたが、ベテランクルーがそろいもそろって全員誤認するなどありえないことのように思えた。
パイロットのカマラの戦闘機の計器がきかなくなった件は、なんらかの強力な電子兵器によるものとほのめかされた。こうした兵器は、当時、このエリアで米軍第六艦隊が行った軍事演習で使われていたという。
だが、パイロットはこの可能性を完全に否定。米軍の艦隊がいた場所は遠すぎるし、こうした妨害が発生したのは、パイロットが正体不明の飛行物体を追撃しようとしたときだけだったからだ。
目撃者たちのこうした主張にもかかわらず、公式の説明はいまだ滞ったままで歯切れが悪く、スペイン軍、政府、巻き添えになった航空会社は、この事件全体をまともにとりあわないようにし続けている。
しかし、当事者であるパイロットや、事情がよくわかっているベテラン飛行士たちは、このまま捨て置くのは間違っていると主張している。
[画像を見る]
iStock
とても奇妙な事件だ。これはただの錯覚なのか、本当にUFO、あるいはUAP(未確認航空現象)なのか、それとも軍による秘密実験なのか?
マニゼスUFO事件の答えを探り出そうとして、多くの説が生まれたが、UFOに着陸を強いられた民間旅客機の唯一の例として相変わらず語り継がれている。
References:Manises UFO incident / mysteriousuniverse/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:UFOに強制着陸されたスペイン民間旅客機。世にも奇妙なUFO事件(1979年) http://karapaia.com/archives/52291154.html
編集部おすすめ