
ハチドリの色覚能力がすごい/iStock
ハチドリはとても美しくカラフルな羽色で我々人間の目を楽しませてくれている。だが実際には、我々はその美しさを完全には堪能できていないようだ。
以前から、鳥は人間よりもすくれた色覚を持つことで知られているが、ハチドリには人間には見えない色を見る能力があることが明らかになったという。
ハチドリは、第4の色を感知することができるのだ。
【第4の色を感知する鳥】
私たち人間の目には、赤・青・緑を感知する3種類の色センサー、「錐体細胞(すいたいさいぼう)」が備わっている。だが、鳥はさらに第4の色、紫外線を感知するセンサーまで持っている。
プリンストン大学(アメリカ)のメアリー・キャズウェル・スタッダード氏によると、それは単純に紫外線の色が見えるというだけでなく、紫外線に緑や赤が組み合わされて生まれる色まで見えているのだそうだ。4色型色覚と呼ばれるものだ(ごく稀にだが、人間でも4色型色覚の持ち主が存在しているらしい)
【人間には見えない色を鳥が見えていることの証明】
人間には見えない色が鳥に見えていることを確かめるには、一体どうすればいいのだろうか?
スタッダード氏らが注目したのは、「非スペクトル色」の組み合わせだ。
非スペクトル色とは、赤・青・緑のようには光の波長に1対1で対応しておらず、2つの色が混ざることでできる色のこと。2色の組み合わせなので、たとえば赤と青が混ざってできる紫のように、スペクトル上で隣り合っていない色が含まれていることもある。
3種類の錐体細胞を持つ人間の目で感知できる「非スペクトル色」は赤紫だけだ。この赤紫は、赤と青を認識する錐体が同時に刺激されて見える色だ。
一方、4種類の錐体細胞を持つ鳥の目には、理論上5種類(紫、紫外線+赤、紫外線+緑、紫外線+黄、紫外線+紫)が見えていると考えられる。
そこでスタッダード氏らは、そうした非スペクトル色を発光できるLEDを開発し、その色を鳥が区別できるかどうか見てもらうという実験を行なった。
実験に協力してくれたのは、野生のフトオハチドリ(学名 Selasphorus platycercus)だ。彼らは花の蜜が大好きで、花の色に反応するように進化してきた。色の関係をさっと学習することができるため、この手の実験にはうってつけなのだそうだ。
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フトオハチドリ/iStock
スタッダード氏らの実験は次のようなものだ。毎朝フトオハチドリがよくやってくる高原を訪れ、砂糖水か普通の水が入っているLED付きの餌箱を設置し、それぞれを異なる色で光らせる。
さて、ハチドリは花の代わりにLEDの色でそこに甘い蜜があるかどうかを判断できるだろうか?
このとき、どちらが入っているか位置で判別できないように、餌箱の位置を定期的に変更し、さらに匂いや光以外の手がかりで中身が知られていないことを確認するための対照実験も行われた。
こうした実験の結果、ハチドリにはさまざまな非スペクトル色が見えていることが判明したとのことだ。
たとえば、紫外線と緑が混ざった光を単色の紫外線や緑とパッと区別することができたし、紫外線に異なる赤(薄い赤と濃い赤)を組み合わせた色の違いも区別できた。
【恐竜も色鮮やかな世界で生きていた!?】
なお、羽と植物に見られる3315色を分析したところ、鳥はそうした色の多くを非スペクトル色として認識しているらしいことが判明したそうだ。
このことは非スペクトル色だからといって、おそらくは他の色よりも特別であるわけではないということを示唆しているという。さまざまな非スペクトル色は、ただ鳥の目に4種の錐体細胞が備わっているから見えているに過ぎない。
スタッダード氏によると、4色型色覚は、初期の脊椎動物で進化したものであるそうだ。
鳥の他にも、多くの魚や爬虫類が持つ感覚で、ほぼ間違いなく恐竜にもあっただろうと考えられるのだとか。
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Pixabay
無骨な姿をした恐竜も、じつは私たちよりも繊細な色彩の世界で生きていたのかも知れない。
残念ながら、人間の目にはそうした色がまったく同じ色にしか映らない。鳥や恐竜が生きている世界の色がどのようなものか、私たちには想像することしかできないのだ。
この研究は『PNAS』(6月15日付)に掲載された。
Wild hummingbirds discriminate nonspectral colors | PNASReferences:phys/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.pnas.org/content/early/2020/06/09/1919377117
記事全文はこちら:ハチドリのビジョンは想像以上!人間には見えない多彩な色が見えている http://karapaia.com/archives/52291937.html
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