食べられるロボット?ゼラチンから作られた食用ロボットの開発(オーストリア研究)

食べるロボット /iStock
 今やロボット技術は人間の暮らしにとって欠かせないものとなった。多種多様なロボットが登場しているが、生き物にそっくりなロボットを作るのなら、柔らかく、しかも食べられれば完璧だ。


 ヨハネス・ケプラー大学(オーストリア)の研究チームが開発したのは、ゼラチンなどの食べられる素材から作ったバイオゲルと、これを使って作られたロボットだ。
【なぜ食べられるロボットが必要なの?】

 そもそもなぜロボットを食べられる素材で作るのだろうか? じつはこれには非常に便利な応用が考えられる。

 たとえば、このバイオゲルで虫などにそっくりなロボットを作ったとする。そのロボットを普段それをエサにしている動物にチラつかせてやれば、きっと食べるに違いない。これを利用すれば、動物に簡単に薬を与えることができるのだ。

 また、うっかり物を飲み込んでしまいがちな幼児用のおもちゃの素材としてもぴったりだろう。

 また動物だけでなく、このバイオゲルは排水の中にいる細菌にも好まれる。そのため、廃棄され埋め立てられることになっても、自然に分解されるという特徴もある。

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【食べられるし生分解性だが、耐久性は高く安全】

 食べられる上に、自然に分解されるとはいえ、体や細菌によって消化されたりしなければ、耐久性は高い。

 バイオゲルにはグリセロールが使われ、これが水分の蒸発を防ぎ、柔らかさを保ってくれる。実験では1年以上も乾燥せず、その特性が失われないことが確認されている。

 またクエン酸を使って細菌の増殖が抑えられているので、衛生面でも安心だ。


【ゾウの鼻で物をつかむことに成功】

 ついでにバイオゲルでゾウの鼻を再現したロボットを作り、33万サイクルぶっ続けで動かしてみたが、それでも乾燥したり、ひび割れたりするようなことはなかったそうだ。

 さらにコントロールやフィードバックを得るためのセンサー類を仕込むこともできる。ゾウロボットに圧力センサーを搭載してみたところ、鼻で物をつかませることにも成功したとのこと。
 
 ただし、今の時点でセンサーまでは食べられないようだ。

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image by:Soft Materials Lab, JKU Linz
【次世代ウェアラブルセンサーやデバイスに】

 第三者のダリオ・フロレアーノ氏(チューリッヒ工科大学)によると、ゼラチンは色々な用途に使うことができ、他の生分解性エラストマーに比べると製造が簡単かつ低コストであるという。新世代ウェアラブルセンサーやデバイスの開発にもつながると期待できるそうだ。

 カラパイアでは様々な生物を紹介しているが、そのたびにコメント欄に寄せられるのは「食べられるの?」「おいしいの?」という質問である。だが今回は安心して欲しい。おいしいかどうかはわからないがこのロボットは食べられるのだ。

この研究は『Nature Materials』(6月15日付)に掲載された。
Resilient yet entirely degradable gelatin-based biogels for soft robots and electronics | Nature Materials
https://www.nature.com/articles/s41563-020-0699-3
References:futurism./ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:食べられるロボット?ゼラチンから作られた食用ロボットの開発(オーストリア研究) http://karapaia.com/archives/52292013.html
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