
謎の丸い物体は卵だった image by:Francisco Hueichaleo, 2020
南極で発見されたアメフトのボールくらいの化石は「ザ・シング(物体)」と呼ばれている。
10年前に発見されて以来、さまざまな議論が交わされてきた謎の物体だったが、このほどその正体がついに判明したそうだ。
『Nature』(6月17日付)に掲載された研究によると、どうやら6800万年前に絶滅したとされる大型の海生爬虫類か、もしくは恐竜が産んだ、軟らかい殻を持つタマゴであるという。しかも、これまで発見されたものとしては最大の大きさだ。
【アメフトボールのような巨大な軟殻卵】
テキサス大学オースティン校のルーカス・ルジャンドル氏は説明する。
これまで発見された軟殻のタマゴとしては圧倒的に最大です。こうしたタマゴがこれほどまでに大きくなれるとは知りませんでした。
大型の海生爬虫類のものだと推測していますが、そうだとすれば、そうした動物のユニークな生殖戦略を示していると思われます
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image by:Legendre et al., (2020)
タマゴの化石は、2011年に南極でチリの研究グループによって発掘された。それは28×18センチとアメフトのボールくらいの大きさで、どことなくジャガイモにも似ている。
あまりにも大きく、しかも中に骨の類が入っているわけではないので、タマゴと言われてもすぐにはピンとこないことだろう。
しかし横断面の分析からは、軟膜に似た層構造とそれよりずっと薄い硬い外層が確認されたとのこと。また化学的な分析によっても、周囲の堆積物とははっきりと違う卵殻があり、元々は生きた組織だったことが示されたそうだ。
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image by:Legendre et al., (2020)
【卵の産みの親は誰?】
だが、巨大なタマゴを産んだ生物の正体は相変わらず謎に包まれたままだ。
なにしろ、これよりも大きなタマゴとなると、17世紀までマダガスカルに生息していた巨鳥「エピオルニス」のものくらいしか知られていないのだ。
現在2つの仮説が立てられている。海生爬虫類か、恐竜かだ。
海生爬虫類の卵説
ルジャンドル氏らの推測によれば、恐竜のものではないという。当時の南極に生息していた恐竜のほとんどはこれを産むには小さすぎるし、大きな種のタマゴはどちらかというと球形に近いことが知られているからだ。
爬虫類の一種で、もしかしたら当時南極でよく見られた魚のような「モササウルス」の仲間のものではないか? というのがルジャンドル氏らの見解だ。
この仮説の裏付けとして、巨大タマゴの発掘現場からは子供のモササウルスの骨や、海生爬虫類の「プレシオサウルス」も見つかっていることが挙げられている。
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謎の丸い物体は卵だった image by:Francisco Hueichaleo, 2020
恐竜のタマゴ説
だが、『Nature』(6月17日付)に掲載されたもう1つの研究によれば、別の可能性が考えられる。爬虫類ではなく、恐竜のタマゴかもしれないのだ。
これまで行われてきた化石の調査から、恐竜は硬殻卵しか産まないというのが一般的な見解だった。
しかし、モンゴルで発見された「プロトケラトプス」の胎児6匹の化石を目にしたアメリカ自然史博物館のマーク・ノレル氏は、次のような疑問を抱いたそうだ。
「なぜ、恐竜のタマゴは中生代末期の、しかも限られた種のものしか見つからないのか?」と。
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プロトケラトプス復元図
さらにアジアや北アメリカといった地域ではタマゴが数多く発見されているにもかかわらず、そこでもっとも一般的だったはずの角竜類についてはタマゴの殻が見つかっていないのも妙だった。
そこでノレル氏が導き出した答えは、初期の恐竜のタマゴは軟殻卵で、化石にならないというものだ。
この仮説を検証するために、プロケラトプスの胎児の化石と生まれたばかりのムスサウルスの化石の周囲にある物質を分析したところ、その化石が柔らかい革のような卵殻で包まれていたことが判明したそうだ。
はたして巨大な”物体”の親は恐竜だったのか? それとも爬虫類だったのか? 現時点でははっきりしないが、きっと親もまた巨大な動物だったに違いない。
References:newatlas / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:南極で発見された謎の化石の正体がついに判明、巨大な卵であることが判明。 http://karapaia.com/archives/52292036.html
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