
動物界の中でも個性派の呼び声高いクシクラゲ(有櫛動物)の中には、4日以内で脳を再生するなどエイリアンめいた構造を持つ種もいたりするが、アメリカの研究所が深海でとらえたほんのりホラーなクシクラゲの映像を公開している。
アカカブトクラゲ(Lampocteis cruentiventer)と呼ばれるこの生物は、2001年に正式に認められた種で、英語圏では「血まみれの腹をもつクシクラゲ」なんて異名で親しまれている。
光を受ければ燃え盛る炎のように美しく輝くボディをもちつつも、物騒なあだ名を拝命しているアカカブトクラゲにズームインだ。
[動画を見る]Weird and Wonderful: The bloody-belly comb jelly, a deep-sea fireball
【光がわずかな深海に生息するアカカブトクラゲ】
これは深海調査に熱心なモントレー湾水族館研究所(MBARI)の研究者がとらえたアカカブトクラゲ(Lampocteis cruentiventer)の映像だ。
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クシクラゲ類(有櫛動物)に含まれるこのクラゲは、2001年に科学的に認められたばかりの新種で、有触手綱カブトクラゲ目アカカブトクラゲ科アカカブトクラゲ属に分類されている。
体長はおよそ16cm。主に水深300m~1012mほどの中深層に生息する。そこは太陽の光がわずかしか届かない暗い世界だ。
【血まみれの腹をもちまぶしく輝くクシクラゲ】
アカカブトクラゲは英語圏でbloodybelly comb jelly(直訳:血まみれの腹のクシクラゲ)ともよばれている。
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MBARIの科学者は以下のように語る。
このクシクラゲは「血まみれの腹のまぶしく輝くクシクラゲ」とも呼ばれています。 …赤は海中で吸収されるため、深海では黒っぽく見えます。その色は暗闇に溶け込むカモフラージュに役立ちます。
【光の加減で虹色に輝く器官をもつクシクラゲ類】
アカカブトクラゲを含むクシクラゲ類は体表に沿ってキラキラ輝いて見える8本の細いスジをもっている。
だがそれらは発光体ではなく光の反射によるものだ。
櫛板(しつばん)列と呼ばれるその器官は、細い繊毛から成っていて移動などに使われるが、光の加減によって構造色を発するため虹色に輝くように見えるのだ。
無人潜水機ROVの白色ライトで光るアカカブトクラゲは燃え盛る火の玉のようにゴージャス。
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だが残念ながら光が少ない深海ではその鮮やかさも失われ、彩度の乏しいシルエットになってしまう。
【赤い胃で食べた生物の光を隠すカモフラージュも】
またアカカブトクラゲは体の色を琥珀色や紫、時には透明にも変化させるが、胃にあたる部分だけは常に血液のような赤色を保っている。「血まみれの腹」という名もそのせいだ。
それは食事中に胃からもれる獲物の光を覆い隠すためとみられている。
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半透明なゼリー状のクシクラゲは発光するプランクトンなども食すが、それらを暗い海中で食べると体が光って捕食者に狙われやすい。
そのため、アカカブトクラゲは深海で黒っぽく見える赤い胃で光を隠し、周囲をあざむいているという。
てことで独自路線で進化するクシクラゲにも凝ったカモフラージュをする種もいるようだ。きらめく反射板をもち、偽装もするクシクラゲ類。こりゃますますもって目が離せないな。
References:laughingsquid / wikipedia / mbariなど /written by D/ edited by parumo
記事全文はこちら:なんという異世界クリーチャー感!エレクトリカルパレードな赤いクラゲ「アカカブトクラゲ」 http://karapaia.com/archives/52292191.html
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