
アファンタジア/ Pixabay
昨日の食べた晩ごはんのことを思い出してみよう。もしくは家の玄関に置いてある靴でもいい。
頭の中に、料理や靴の形や色合いが浮かんでくるはずだ。
だが、これができない人がいる。毎日使っている者、見ているはずのものなのに、いざ頭の中で思い浮かべようとしても、その色も形状も視覚化できない。この症状は「アファンタジア」と呼ばれ全体の2~5%が当てはまると考えられている。
『Scientific Reports』(6月22日付)に掲載された最新の研究によると、アファンタジアの人は記憶だけでなく、聴覚や触覚、味覚、運動感覚など、他の感覚をイメージする力も弱いことがわかったという。
【アファンタジアを持つ人は未来をイメージする力も弱い】
アファンタジアという症状自体は1880年にはすでに知られていたが、名称が与えられたのは比較的最近という、いわば古くて新しい症状だ。
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アレクセイ・ドーズ氏(オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学)らは、自身がアファンタジアだと称する267名を含む計667名に、視覚化・記憶・夢・トラウマに関する質問をしてみた。
質問はたとえば、「記憶をどのくらい鮮明にイメージできるか?」といったものだ。これに対して、「記憶はあるが、まったくイメージできない」や「目で見ているものと同じくらい鮮明」といった選択肢で回答する。
その結果、アファンタジアの人は過去を思い出す力だけでなく、未来をイメージする力も弱いことが分かったという。
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【アファンタジアの人は夢をあまり見ない】
ところで、私たちは時折、主に視覚的なイメージでできている世界に迷い込むことがある——寝ているときに見る夢のことだ。
研究からは、アファンタジアの人が夢をあまり見ないことも明らかになっている。
見たとしても、内容はあまり鮮明でなく、そこから受ける感覚的な部分も曖昧であるという。
こうしたことは、記憶を処理する上で視覚的イメージが重要な役割を果たしている可能性や、視覚的な感覚がかかわっている認知機能ならどれでも低下する可能性を示しているという。
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【アファンタジアの人は頭の中に音楽が流れない】
また視覚的なイメージだけなく、他の感覚を思い描くことも苦手であるようだ。音や味、触れた感覚や運動感覚、さらには感情といったものをイメージする力もおしなべて低いのだそうだ。
あるアファンタジアの男性は、自身の体験を次のように綴っている。
最初、頭の中で音楽を聴くということが理解できませんでした。自分にとってはとんでもないことで、テレビで目にする手品のように思えます。
【アファンタジアの世界の探究は始まったばかり】
なお、今回の研究は、あくまで自己申告に基づく調査なので、それが回答者自身の自己イメージに左右されている可能性はあるとのことだ。
私たちの心の世界の体験について分かっていないことはたくさんある。今回の研究は、アファンタジアのイメージ力のだけがクローズアップされているが、逆にアファンタジアだからこそ、類まれなる能力が秘められている可能性もあるのだ。
もしあなた自身がアファンタジアだと思うのならば、「フューチャー・マインド・ラボ」のサイトからその謎を解き明かす研究に参加することもできる。
A cognitive profile of multi-sensory imagery, memory and dreaming in aphantasia | Scientific ReportsReferences:sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41598-020-65705-7
記事全文はこちら:心で思い浮かべたイメージを脳で視覚化できない「アファンタジア」の症状を持つ人は他の感覚にも違いがあることが判明 http://karapaia.com/archives/52292257.html
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