
ディロフォサウルスは鳥に近い/iStock
「ディロフォサウルス」という恐竜は、映画『ジュラシック・パーク』に登場したことで一躍有名となった。首にエリマキトカゲのような襟飾りを持ち、頭からニワトリのようなトサカを2枚生やし、ついでに毒液を吐き出すアイツらのことだ。
これらは演出であって、実物とはかなり異なる。だが、新たに発表されたディロフォサウルスの化石の分析結果は、映画に負けないくらい奇抜な真実の姿を明らかにしている。
映画では小型の恐竜として描かれているが、じつは全長6メートルに達する当時最大の陸生動物で、現代の鳥と共通点が多かったようだ。
【知名度は高いが、実態は謎だらけの恐竜】
「ディロフォサウルス」は、1億9300万年前のジュラ紀初期に生息した獣脚類だ。映画のおかげで知名度は高いが、実際の姿や系統樹の位置などについては意外なほど不明な点が多い。
しかも困ったことに、初めて発見されたディロフォサウルスの化石はついて少々混乱が見られる。その化石を再構成して調べた結果が発表されている1954年の研究論文では、一体何が再構成されたのかという点についてはっきり述べられていないのだ。
そのために、ディロフォサウルスに関する初期の研究がどの程度、実際の化石記録に基づくものなのか判然としなくなってしまっている。にもかかわらず、これはその後のディロフォサウルス研究のいわばスタンダードとして扱われるようになった。
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image by:Brian Engh / The Saint George Dinosaur Discovery Site
【通説とは異なり、力強い筋肉を持っていた】
この恐竜の真の姿を知るために、テキサス大学オースティン校博士課程の学生だったアダム・マーシュ氏(現、化石の森国立公園)らは、ディロフォサウルスの完全な標本5体を分析した。
初期の研究では、ディロフォサウルスには傷つきやすいトサカと弱いアゴがあると記述されている。これはジュラシック・パークに登場する彼らの姿にも反映されているものだ。
だが、『Journal of Paleontology』(7月7日付)で発表された事実は逆だ。顎骨には力強い筋肉の土台として機能したらしき痕跡が見られるという。
さらに2枚のトサカの部分も含め、一部の骨にはところどころ空気をためる空間があり、骨格を補強していたらしいことも分かっている。これは緩衝剤のプチプチをイメージしてもらえばいい。
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ディロフォサウルス・ウェテリリの右後ろ足image by:(Credit: Matthew Brown / UT Austin Jackson School of Geosciences)
【現代の鳥に似た特徴】
こうした空気嚢はディロフォサウルス特有のものではなく、現代の鳥や世界最大の恐竜にも見ることができる。これによって負荷を軽減できるので、恐竜なら重たい体で押し潰されることを防げるし、鳥なら空を飛びやすくなる。
また鳥の場合、空を飛びやすくする以外にも、皮膚の伸びやすい部分を膨らませて求愛したり、大きな鳴き声を出したり、熱を逃したりするために空気嚢を利用することもある。
ディロフォサウルスの副鼻腔からトサカに向けて気泡嚢や管が複雑に伸びているという事実は、この恐竜もまた鳥のようにこの部分を利用していた可能性を示しているそうだ。
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ディロフォサウルスの頭蓋骨 image by:The Saint George Dinosaur Discovery Site
【今後も近縁種が発見される可能性】
なお、分析された化石はいずれもアリゾナ州カイエンタ層のナバホ・ネイションに属する土地で発掘されたもの。
マーシュ氏らが、その解剖学的な特徴を記録し、アルゴリズムを利用して各化石の比較を行ったところ、いずれも間違いなくディロフォサウルスのものであることが確認されたという。
このアルゴリズムによって、進化の視点から見たディロフォサウルスとその近縁種との違いも明らかにされた。その結果からは、まだ他にも近縁種がいるだろうことが推測されるそうだ。
A comprehensive anatomical and phylogenetic evaluation of Dilophosaurus wetherilli (Dinosauria, Theropoda) with descriptions of new specimens from the Kayenta Formation of northern Arizona | Journal of Paleontology | Cambridge CoreReferences:news.utexas/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.cambridge.org/core/journals/journal-of-paleontology/
記事全文はこちら:ジュラシック・パークで有名になった恐竜「ディロフォサウルス」はトカゲより鳥に近い(米研究) http://karapaia.com/archives/52292622.html