
キツネと人間の関係性 /iStock
キツネは食べ残しが大好きだ。野生では、彼らはたいていクマやオオカミなど大型の捕食者が食べ残したエサで生きている。
それが、徐々に人間の居住地近くに生息するようになるにつれ、人間の残りものも食べるようになった。
ドイツ、チュービンゲン大学の研究者、クリス・バウマン博士らは、キツネと人間とのこうした共生関係が遥か昔から行われていたとしたら、彼らが、過去における人間の影響を示す有益な指標になるかもしれないとしている。
【旧石器時代中期、キツネは大型捕食動物の食べ残しを食べていた】
南ドイツのシュヴァーベンジュラ山脈には、アッハタールやローネタールという谷があり、初期の人類が住んでいた洞窟が点在している。
ここから出土した旧石器時代のさまざまな草食動物、大型肉食獣、アカギツネやホッキョクキヅネの骨から、炭素同位体、窒素同位体の割合を比較してみた。これによってどんなものを食べていたかがわかる。
4万2000年より前に、ネアンデルタール人がここに点在していたとき、当時のキツネの食糧は、このあたりにいた大型肉食獣と同じようなものだった。
この研究では、人間の狩猟活動が、動物にとってなんらかの有利な状況をつくっていたのかどうか、それを確かめようとしました」クリス・バウマン博士は言う。
もともと、アカギツネやホッキョクギツネのおもな食糧は小型の哺乳類で、彼ら自身が狩りをしていました。
それは4万2000年以上前の旧石器時代中期のことです。南西ドイツでは、ネアンデルタール人の時代でしたが、ここシュヴァーベンジュラでは、それほど人口は多くありませんでした(クリス・バウマン博士)
[画像を見る]
Pixabay
【ホモサピエンスの時代になり、人間の残り物を食べるように】
しかし、ホモサピエンスが台頭してきたもっと新しい時代の遺跡では、キツネの食糧にはトナカイなども含まれるようになっていた。
トナカイは、キツネにとってはとても大きな相手で倒すのはなかなか難しいが、当時の人間にとっては重要な獲物だったことは知られている。
旧石器時代後期には、キツネの食糧は大型捕食動物の食べ残しから、人間が残したおこぼれへと変わっていた。
つまり、4万2000年前には、キツネは食糧を人間に頼っていたことになる。
キツネの骨を同位体分析したデータからは、彼らのおもな食糧が何度か変わっていることがよくわかります。
キツネは人間が残した肉を食べて生きていたか、もしかしたら人間にエサをもらっていた可能性があるかもしれません(クリス・バウマン博士)
データからは、食糧にしていた肉が、マンモスやトナカイのようなキツネが狩ることのできない大型動物のものだったことがわかる。
人間は仕留めた大型のトナカイを自分たちの住む洞窟へ持ち帰ってきました。でも、巨大なマンモスは、仕留めた場所で解体したのです
[画像を見る]
【キツネと人間の関係を調べることで人間が生態系に及ぼした影響を探る】
キツネと人間の関係をさらに研究していけば、古代のキツネの食餌が、長い間に生態系に及ぼした人間の影響を示す有益な指標になるかもしれないとしている。
氷河期のキツネの食糧の種類を復元することによって、初期の人類が4万年前に、その地域の生態系に影響を及ぼしていたことを知ることができます。
人間が特定の地域に広がっていき、キツネが人間に適応していったのです(クリス・バウマン博士)
この発見は、『PLoS ONE』誌のウェブ版に発表された。
Fox dietary ecology as a tracer of human impact on Pleistocene ecosystemsReferences:ancient-origins / sci-news/ written by konohazuku / edited by parumo
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235692
記事全文はこちら:キツネは4万2000年前から人間のそばで暮らし食べ残しをエサにしていた(ドイツ研究) http://karapaia.com/archives/52293176.html
編集部おすすめ