
最初から偽薬とわかっていても効いてしまうプラセボ効果の不思議/iStock
薬効成分はまったくないにもかかわらず、効き目のある薬を服用していると本人が思い込むことによって、なぜか病気や症状が治まってしまう。これはプラセボ効果(偽薬効果)と呼ばれるものだ。
プラセボ効果は、効く薬を飲んでいるという安心感や暗示的な力が作用しているのではないかと言われているが、まだまだ謎の部分も多い。
本来は「効く薬です」と言って処方する偽薬だが、最初から「偽薬ですよ」と患者に渡しても効果を発揮する場合があるというのだ。
新たな研究では、最初から「偽薬」と告げて処方したケースを分析したものだ。
【最初から「偽薬」であることを告げて薬を渡す】
偽薬でも、薬と同じ効果を発揮することはすでに知られているが、1つ問題がある。それは患者をだますのは倫理的にどうなのかということだ。
患者に薬と嘘をついて、ただの砂糖の塊を処方するのは、医療倫理的に許されないのではないだろうか?
そこで「非虚偽プラセボ」が登場する。「非虚偽プラセボ」とは、最初から「偽物ですよ」と告げた上で、患者をだますことなく偽薬を渡すことだ。
ミシガン大学(アメリカ)などの研究グループによる今回の実験では、参加者には事前にはっきりとプラセボだと伝えた。
だが、それだけでなく、プラセボが実際の薬と同じように心に作用して気分を楽にする可能性も伝えられた。
プラセボ効果を発揮させるのは、そうした知識だ。それを服用した人が、プラセボには効果があると信じていれば、きちんと効果が発揮される。それでいて医療倫理に触れるようなこともない。
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【プラセボであると告げられたグループの気分が緩和】
実験では、参加者に嫌な気分になる映像を見てもらい、それから鼻に生理食塩水をスプレーした。
このとき半数には、生理食塩水はプラセボ(偽薬)であり、気持ちが楽になる場合があると伝えられる。もう半数には、生理的反応を測定しやすいようにするための、ただの生理食塩水だと伝えられる。
その結果、プラセボと伝えられたグループでは、そうでないグループに比べて、感情的苦痛のレベルが低いという結果が得られたという。
なお、これは参加者からの自己申告による結果ばかりではない。同内容の2度目の実験では、脳波の測定も行われ、実際に脳内で感じられている心の苦痛が神経レベルで下がっていることまで確認されているのだ。
【プラセボ(偽薬)が実際に効くことを伝えることで偽薬に効果が】
「この発見は、少なくとも感情的苦痛においては、単なるバイアスではなく、非虚偽プラセボに本物の精神生物学的効果があるという最初の裏付けである」と、研究論文では述べられている。
要するに、プラセボ(偽薬)にも効果があるという事実をはっきりと伝え、それを信じてもらえれば、偽薬ですよと告げて渡しても作用するということだ。
その安全性や患者への渡し方などについてはまだまだ研究が必要であるそうだが、いつの日か非虚偽プラセボが病院で処方されるようになることもあるだろうと、研究グループは述べている。
よく言われるように、信じるものは救われる――ということなのかもしれない。
この研究は『Nature Communications』(7月29日付)に掲載された。
Placebos without deception reduce self-report and neural measures of emotional distress | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-020-17654-y/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:プラセボ効果の不思議。
偽薬とわかっていても効くので心の苦痛を緩和できる(米研究) http://karapaia.com/archives/52293914.html
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