アンモニアをジェットエンジンの燃料に / Pixabay
現在、アンモニアをジェットエンジンの燃料として使う研究が進められている。アンモニアとはそう、人体においては、尿素に含まれるツーンとする匂いのあのアンモニアである。
イギリスの航空宇宙企業「リアクション・エンジンズ社」と「科学技術施設研究会議(STFC)」が目指すのは、最先端の熱交換技術と触媒を組み合わせて実現する化石燃料を使用しない、カーボンフリーな空の旅だ。
【飛行機の排出する二酸化炭素を軽減する取り組み】
飛行機に搭載されるジェットエンジンは、石油の分留成分の1つ「ケロシン」を主成分とする燃料を利用して、音速を超えるスピードや乗客/荷物の空輸を可能にする。
しかし、ジェット燃料は化石燃料であり、二酸化炭素が大量に排出されるために、航空産業や政府には2050年までの抜本的な対策が求められている。
ジェット燃料に代わる新たなエネルギー源が求められているのはそれゆえだ。しかし、そうした代替物のほとんどは、従来の燃料に比べてエネルギーの密度が低いといった欠点がある。
たとえば、現在のバッテリーの性能では、かなり小型の飛行機を、ほとんど何も積載しないまま短い距離を飛行させることしかできない。
液体水素ならエネルギー密度の点はクリアできそうなものの、実際に利用するには飛行機の設計を刷新し、新しいインフラまで整えなければならない。
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【アンモニア燃料は二酸化炭素を排出しない】
アンモニアを航空機の燃料として使うという発想自体は、かなり以前からある。
エネルギー密度は軽油の3分の1しかないが、液化して保存するのが容易で、1950、60年代には高高度極超音速実験機X-15に使われた実績もある。そして、何より二酸化炭素を排出しない。
問題があるとすれば、それをコスト面で実用可能なものにすることだった。
そこでリアクション・エンジンズ社は、同社の空気吸入式エンジン「SABRE」(関連記事)に採用されている熱交換技術とSTFCの先端触媒を組み合わせて、新型の推進システムを開発している。
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熱交換技術(青色)を搭載した「SABRE」エンジン image by:reactionengines
新型システムでは、ちょうど現行のケロシンと同じように、アンモニアを冷却・加圧して液化した状態で翼の部分に保存。
タンクからアンモニアを汲み出すには、熱交換器によってエンジンから取り出した熱を利用する。温められたアンモニアは化学反応器に送られ、ここで触媒によって一部が水素に分解される。
ジェットエンジンは、このアンモニア・水素の混合気を燃焼し、動力を得る。排出されるのは主に窒素と水蒸気だけだ。
【既存の機体とエンジンを流用可能】
リアクション・エンジンズ社によると、アンモニアのエネルギー密度は十分に高いため、機体の設計を大幅に変える必要はなく、エンジンの改良も短時間でできるという。現時点では地上での実験が行われており、数年内にはテストフライトも実施される見込みだ。
「リアクション・エンジンズ社の熱交換技術とSTFCの触媒が合わさることで、ゲームチェンジャーと言うべき、環境に優しいアンモニアベースの航空推進システムを開発することが可能になります。」(主任技術者、ジェームズ・バース博士)
機体もエンジンも既存のものを流用可能なおかげで、カーボンフリーな空の旅への移行が速やかに進むと期待できるとのこと。2050年よりずっと前に最初の就航が実現したとしてもおかしくはないそうだ。
References:reactionengines / newatlas/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:アンモニアが燃料。二酸化炭素を排出しない飛行機用ジェットエンジンが開発中(イギリス) http://karapaia.com/archives/52294023.html











