
解像度の荒い画像を鮮明にするなど革新的なAI技術の用途は広がる一方だが、近ごろネットで世界最古の映画のデジタルリマスター版が話題を呼んでいる。
映像はフランスの発明家ルイ・ル・プランスがおよそ130年前に撮影した「ラウンドヘイの庭の場面」のコマをニューラルネットワークで補いカラー化し、より見やすくしたもの。
自身が発明したカメラで映画史初となる撮影をしたにもかかわらず、わずか2年で謎の失踪を遂げた「映画の父」プランスの最も有名な作品を見てみよう。
[動画を見る][60 fps] The oldest recorded video, “Roundhay Garden Scene”, England,1888
【最古の映画「ラウンドヘイの庭の場面」】
「ラウンドヘイの庭の場面」は、1888年10月14日にフランスの発明家ルイ・ル・プランスが自身で発明したカメラで撮影したもの。
左がオリジナルのコマ、右がリマスタリングしたコマ
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彼が監督と編集も兼ねていたこの作品は、ギネス認定された世界最古の映画フィルムとして知られ、プランスはのちに「映画の父」と呼ばれることになる。
【出演者は132年前に庭園で踊った4人】
この作品の出演者はル・プランスの義理の両親であるウィットレイ夫妻と息子のアドルフとハリエット・ハートレイ(またはアニー・ハートレイ)という女性の4人だった。
映像ではイングランドの北部のリーズ市付近にあったウィットレイ夫妻宅の庭園で、小さな円を描くように歩き回る4人の様子がうかがえる。
1秒あたり12コマから成るわずか数秒の白黒映像。ゴッホが傑作を描き、切り裂きジャックが殺人を重ね、エッフェル塔が未完成だった時代に撮られた短い記録が現代映画の原型と踏まえると、その驚異的な発展に思いを馳せずにいられない。
【より見やすく。AIで貴重な映画をリマスター】
そんな貴重な映画を刷新したのはYouTuberのデニス・シリヤエフだ。彼はまず英国科学博物館のウェブサイトからオリジナルの20コマを取得。
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そのコマ一つ一つを中央揃えにした後、アルゴリズムを使って顔などを復元し、輝度を統一した。
またニューラルネットワークでコマ内の欠けた部分を補い、映像がより滑らかになるようコマを追加し拡大した。
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さらにわずかな着色を加え、最後に背景音を加えて仕上げた。その結果は再生から2:40あたりで確認できる。
【この映画の背後に隠されたミステリー】
なお映画史に名を残すルイ・ル・プランスの生涯は不穏な疑惑に包まれている。
実はプランスはこの映画の撮影からわずか2年後に消息不明となり、ミステリアスな事件への推理が語り継がれているのだ。
当時彼は発明した映画用のカメラをアメリカに売り込むことに熱心で、ニューヨークでこの映画を一般公開する計画まで立てていた。
ところが公開予定の1890年、兄弟に会うため列車でフランスのパリに向かう途中で姿を消し、警察が捜索に乗り出すも発見されることはなかった。なお失踪時の年齢は49歳で、これといった持病も抱えていなかったようだ。
【エジソンに暗殺された?のちに溺死の疑いも】
結局7年後に消息不明のまま死亡と認定。しかし目撃者もなく荷物ごと消えた発明家の事件はさまざまな憶測を呼び、経済的な行き詰まりからの自殺や、熾烈だった特許紛争に巻き込まれトーマス・エジソンに暗殺された説なども浮上した。
それからおよそ1世紀以上も経った2003年、パリ警察に保管されていた1890年の死亡者記録からプランス似の溺死体めいた写真が見つかったという話もある。が、本人かどうかは依然不明だ。
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奇妙な失踪ばかりが取り沙汰され、その功績が忘れ去られていたプランス。しかし近年、彼の努力と発明は再び見直され、映画の本当の発明者とも呼ばれている。
References:iflscience / wikipediaなど /written by D/ edited by parumo
記事全文はこちら:世界最古の短編映画がカラー化。映画撮影の背後に隠されたミステリーとは? http://karapaia.com/archives/52294201.html