氷河期ってどのくらい寒かったの?最終氷期の平均気温が明らかに(米研究)

氷河期の平均気温が明らかに/iStock
 今年の夏も暑かった。今世界が温暖化しつつあることを思わず実感してしまう昨今だが、過去にはその反対の時代もあった。
そう、氷河期のことだ。

 寒かったとは言われるが、はたしてどのくらい寒かったのか? 最新の研究では、アリゾナ大学をはじめとする研究グループがその疑問に迫っている。
【地球上で一番新しい氷期「最終氷期」】

 今から7万~1万年前に起きた一番新しい氷期は「最終氷期」と呼ばれているが、その時代は、南北アメリカとヨーロッパの半分ならびにアジア各地が巨大な氷河でおおわれており、そうした環境を生きる動植物も寒さに適応するための進化を遂げていた。

 この時代についてはかなり研究されており、たくさんのデータが存在する。しかし当時の気温をうかがえる指標に偏りがあることや、いくつか不確かな点があることから、最終氷期の気候の全体像を知ることは難しかった。

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最終氷期の最寒冷期(LGM)における植生。灰色は氷床に覆われた地域
image by:public domain/wikimedia
【最終氷期は今より平均6.1度寒かった】

 そこでジェシカ・ティアニー氏らは、プランクトンの化石から得られたデータを海面温度に換算するモデルを作成。さらに天気予報などで利用されるデータ同化法という手法で、そのモデルを最終氷期の気候モデル・シミュレーションと組み合わせた。

 『Nature』(8月26日付)に掲載された研究によると、その結果、当時の世界平均気温は現在よりも6.1度低いと推定されるのだそうだ。

 今より6度寒かったと聞いても、それほど寒いようには思えないかもしれない。だが、ティアニー氏は、「大きな違い」であると述べている。

 また、氷河期に見られる寒冷化の影響をとりわけ強く受けるのは、高緯度地域であるとのこと。
たとえば、北極ならば現在よりも14度寒かった。

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【地球の気候と温室効果ガスとの関係】

 こうした氷河期の気温を知ることが大切なのは、それによって気候の感度が分かるからだ。つまり、世界の気温が温室効果ガスに対してどのくらい反応するのか推測するヒントになるということだ。

 ティアニー氏の推定によれば、大気中に含まれる炭素が2倍になるごとに、気温は3.4度上昇する。ちなみにこの推定値は、最新の気候モデルが予測する範囲(1.8~5.6度)のちょうど中間にあたる。

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【温暖化が避けられない今、それでもできることは?】

 最終氷期において、大気中の二酸化炭素は180ppm(1ppmなら、大気中の分子100万個中1個が二酸化炭素ということになる)で非常に低い。ところが産業革命前には280ppmにまで上昇し、今日では415ppmに達した。

 気候変動に関する国際的な枠組みである「パリ協定」には、平均気温の上昇を産業革命以前の1.5度未満に抑えることを目指すと規定されている。

 しかし「2度未満に抑えることすら非常に難しい状況にあります。すでに1.1度上昇してしまっているからです」と、ティアニー氏は説明する。

 だからといって、これからの行動がすべて無駄になるわけではない。「気温上昇は少ないに越したことはありません。
地球は、二酸化炭素の変化に確かに反応しているのですから――。」

Glacial cooling and climate sensitivity revisited | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2617-x
References:phys

記事全文はこちら:氷河期ってどのくらい寒かったの?最終氷期の平均気温が明らかに(米研究) http://karapaia.com/archives/52294207.html
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