
スイスのヤマネコ、セクシーすぎて絶滅の危機/iStock
スイスに生息するヨーロッパヤマネコが絶滅の危機に瀕しているという。ヤマネコのオスのセクシーでワイルドなイケメンぶりに、イエネコのメスがメロメロになってしまい、交配が進んだ結果、純粋なヤマネコが減ってきているというのだ。
「据え膳食わぬは男の恥」ともいうし、ヤマネコ先輩のオスの場合にも、イエネコのメスの誘いを無下に断るわけにもいかないのだろう。
【スイスのヨーロッパヤマネコの純血種に危機】
ヨーロッパに生息する野生種、「ヨーロッパヤマネコ」は、スイス西部のジュラ山脈からほとんどいなくなってしまっていたが、50年前に行われた再導入計画により、再び繁殖し始めた。本来なら喜ばしいことなのだが、思わぬ事態が起きた。
ジュネーブ大学の生物学者と、チューリッヒ大学とオックスフォード大学の共同研究チームが、このヤマネコとイエネコの交配状況を調べた結果、新たな脅威が浮上していたのだ。
「モデル化されたさまざまなシナリオからは、進化のスケールとしては非常に短期間である次の200年から300年のうちに、異種間の交配によって不可逆的な遺伝子置換が起こるだろうことがわかった」と、ジュネーブ大学が発表した。
つまり、すでにスコットランドやハンガリーで起こっているケースと同様、近いうちにヤマネコとイエネコの区別ができなくなるということを警告している。
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ヨーロッパヤマネコ/iStock
【ヤマネコのオスがイエネコのメスを魅了。交配が進む】
学術誌「Evolutionary Applications」によると、現在、ヤマネコとイエネコははっきりふたつに分かれた別々の亜種だと考えられているが、これらの交配が続くと、繁殖力の強い混合種の子猫が増える。
野生と家畜化された生き物のこうした交配は、とくに野生種の遺伝子的特徴を脅威にさらすことが知られている。
例えば、スイスではヤマネコは数百匹しか生息していないのに対して、イエネコは100万匹以上いる。
「こうした交配を厳しく制限しないと、すべてのシナリオにおいて、ヤマネコの個体群への急速なイエネコの遺伝子移入が予測されます」
現在の交配率と個体数がこのまま変わらないなら、100年以内にヤマネコとイエネコの間の遺伝子的差異が失われてしまうという。
しかし、例えばヤマネコの数が急速に増えるなどの別のシナリオがあれば、こうした懸念はまだ先のことになるかもしれない。
研究によれば、ヤマネコとイエネコが5~10%の割合で接触すると、交配種の子どもの誕生につながるという。
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image by: Michael Gabler /Wikipedia Commons
【2種の交配を防ぐために必要なこと】
ジュネーブ大学の遺伝進化学のファン・モントーヤ=ボルゴスは、このままだと、元に戻すことのできない遺伝子置換につながり、やがて純粋なヤマネコがいなくなってしまうことを研究は示していると、懸念する。
「2種の交配を止めることだけが、ヤマネコという種を保護するための唯一の方法なのです」
森との境界付近にいるイエネコのメスすべてに不妊手術を施し、交配のチャンスを劇的に減らすことが必要だと研究者は強調する。
イエネコのメスにとって、ヤマネコのオスのほうがすいぶんと魅力的らしい。同胞のオスの存在が邪魔になるどころか、積極的にどんどんヤマネコのオスになびいてしまっているようなので、この問題を解決するにはイエネコのメスをどうにかするのがカギになるといえる。
早く行動を開始することが重要だという。手をこまねいていると、ジュラ山脈のヤマネコが直面している脅威が取り返しのつかないものになってしまう可能性がある。
References:courthousenews/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:スイスのヤマネコ、セクシーすぎて絶滅の危機。イエネコのメスがメロメロになり交配が進む(スイス研究) http://karapaia.com/archives/52295495.html
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