なぜ、人は幽霊をみるのか?考えられる7つの要因

人が幽霊を見る理由 / Pixabay
 幽霊は本当にいるのだろか? 現在の科学では、壁を通り抜けたり、床下で叫び声をあげたりする幽霊の存在を証明することはできていない。だが、不気味な存在を目撃したという証言は後を絶たず、確かに幽霊はいるのではないかと思わせる。


 人間がそこにいる限り、幽霊は目撃されてきた。幽霊をみる理由はある程度は説明がつく。次にあげる7つの精神状態や身体的要素で、不気味な幽霊の出現のほとんどは説明できる可能性があるという。

 長い文章だが、幽霊が怖くて眠れないときに読むと落ち着くかもしれない。
【1. あなた自身がいると信じたがっている(暗示にかかる)】

 「この世を彷徨う亡霊がいるのは確かだ」苦しみに苛まれるヒースクリフは小説『嵐が丘』の中でこう叫んでいるが、そう言うのは彼だけではない。

 しっかり地に足をつけた者でさえ、幽霊屋敷に居座る幽霊にどこか惹きつけられるものを感じている。幽霊を見たい見たいと思い焦がれる(あるいは、ヒースクリフのように恐れおののく)、それだけで幽霊の出現に十分なのだ。

 キャンプファイアで語られる怪談話や、吐いて捨てるほどあるホラー映画、気味の悪いイメージは、実際に超常現象に出くわさなくても、わたしたちの意識下に浸透している。

 ある調査によれば、アメリカ人の半数が幽霊がいると信じているという。こうした先入観のせいで、床板がきしんだり、急に寒気を感じただけで、わたしたちの心は暴走するのだ。

 「幽霊を信じている人たちは、異常な感覚をよく報告していて、こうした異様な感覚こそが、幽霊がいる証拠だと思い込むのです」ロンドン大学ゴールドスミス校の異常心理学研究者で、自らを"場をしらけさせる"懐疑論者だとする、クリス・フレンチは言う。

 わたしたち人間の心はかなり暗示にかかりやすいため、こうした傾向があるのだとフレンチは言う。


 例えば、動物に追いかけられるといった脅威から逃れるために、わたしたちは外界からさまざまな手がかりを感知できるよう進化してきた。そのため、まさにドンピシャでなんらかのきっかけがあると、わたしたちはそこにないものまで見てしまうことがある。

 1990年代、スプリングフィールドにあるイリノイ大学の心理学者が、100年前に建てられ、長く閉ざされていた古びたリンカーン・スクエア・シアターの中を、ふたつのグループに同じようにツアーさせた。

 ひとつのグループには、これは幽霊調査だと前もって知らせておき、もうひとつのグループにはなにも言わなかった。案の定、知らされたほうのグループは、なにかの強い感情をおぼえた、奇妙な出来事に遭遇したと報告する者が多かった。

 こうした精神的な歪みはとても強烈で、現実の世界でも騙されることがある。フレンチが行ったべつの研究では、自分のすぐそばにいた人が不気味な出来事を体験したと言うと、自分もおかしなものを目撃したと報告する傾向が高かったという。

 先入観のせいで、わたしたちは異様な音やぼんやりした人影の中に、超常現象の証拠を見つけたと思い込む。

 フレンチはパレイドリア(視覚刺激や聴覚刺激を受けとり、普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象)というこの現象で、幽霊の声を録音したといった多くの超常現象の説明がつくという。

 もし、ゴーストハンターや霊媒師に、不気味なフレーズを聞くよう言われたら、パターンを見つけたがるのが好きなあなたの脳は、なんの意味もないランダムな音の断片から、なんらかの正確な言葉を見つけ出そうと懸命に努力するのだ。

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【2. 生存本能】

 明るい日中なら幽霊などあまり意識しないが、暗い地下室へと向かっていたら、話は違ってくる。未知の脅威に囲まれた状態は、人間の生存本能を一気に高める。


 「あなたが森の中を歩いていて、視線の端になにかの動きを感じたとします。そのとき、あなたはふたつのエラーを犯す可能性がある」ライデン大学の社会心理学者マイケル・ファン・エルクは言う。

 「気のせいかもしれないが捕食者がいるかもしれないと思うか、捕食者がいるかもしれないが気のせいだと思うかだ」心理学者たちは、人間が認知バイアスを進化させて、後者の間違いを犯すようになったのには十分な理由があると考えている。

 わたしたちのご先祖さまたちは、常にヒョウやヘビといった危険に目を光らせていなくてはならなかった。"備えあれば憂いない"を徹底した者たちほど、生き残って子孫を増やせる可能性がより高いからだ。

 しかし、ヴァン・エルクによれば、こうした用心深さが、自分ひとりしかいないはずなのに、なにかがいるのではという感覚を引き起こす可能性があるという。だから、小枝の折れる音がしただけで、闘争─逃走反応が全開になって、反射的に叫び声をあげるのだ。

 前述のゴーストツアーの実験では、よくわからないまま、心を無理やり格闘させる、昔からの人間の強い怖れの習性を利用したものだ。

 すぐれたお化け屋敷は、あなたの目の前にもろに幽霊を登場させることはしない。視線の端にちらりと入り込み、見えちゃったかもという思いを抱かせるのだ。

 この確信のなさ、疑いが、恐怖の要素に一気に拍車をかける。家具がきしむなんのことはない音だけでも、この原始的な恐怖のスイッチが入ってしまう。


 1975年、イギリスの地理学者ジェイ・アプレトンは、自分が住んでいる家に戻ってくると安全だと思うのは、外の世界がはっきり見える見通しと、危険から身を隠すことのできる避難所というふたつのものがあるからだ、ということを発見した。

 明かりのない古い家は、このふたつの恩恵が得られない。隅になにがあるのか見えないし、邪悪なものが潜んでいそうな暗がりだらけだ。

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【3. 痛ましい出来事に対処するため】

 『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』や『悪魔の棲む家』などのホラー映画の幽霊は、人間の犠牲者を執拗に追いかけてくるが、幽霊は生来、人を怖がらせるものではない。

 人間の脳が、愛する人を亡くした悲しみなどのトラウマに対処する手段として、勝手に幽霊を呼び出してしまうのかもしれない。手足などを切断した人が、あるはずのない体の一部に痒みを感じたりする"幻肢"という現象のように、生き残ったほうが、死んだはずの配偶者の姿を見た、その存在を感じるということはよくある。

 1971年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの調査では、ウェールズやイングランドの未亡人の半数近くが、死んだつれあいの姿を見たことがあるという。こうした鮮明な邂逅、心理学者が
言う"死後のコミュニケーション"は、超常現象体験の中でももっとも一般的なもので、信じない人、信じる人問わず、さまざまな影響を与えてきた。

 幽霊の出現は、混乱をきたすような痛ましい出来事に対処する助けになる、と専門家は考えている。

 2011年、学術誌Death Studiesに掲載された論文では、死者と交流したとされる多数の事件を分析していて、幽霊など不思議な体験をすると、ひどい悲しみから一時的に解放されると結論づけている。一方で、もとからあった宗教的なものの見方を強調する者もいる。

 友好的な幽霊と出くわすきっかけは、死だけではない。
いじめられたり、危険な状況にさらされている子どもは、異様な体験をすることが多く、大人でも、心に傷を負った子ども時代を過ごした人は、その傾向があるという。

 幽霊をみることは、ほかにも精神衛生上のメリットがあるという証拠もある。1995年、アメリカ心霊研究協会の調査によると、被験者の91%が、幽霊との遭遇は、他者とのつながりを感じられるといった、少なくともひとつは利点がある言っているという。

 これを聞いたら、廊下を行く幽霊を見てしまっても、逃げ出したいと思わなくなるかもしれない。

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【4. 脳の状態が悪い】

 幽霊を見てしまうのは、自分の灰色の脳細胞自体に大きな問題があるせいなのかもしれない。幻聴や幻視は、統合失調症などの疾患の初期症状を示している場合もある。

 脳に障害を抱える人は、健常者よりもより恐ろしく強烈な超常現象を体験することが多いのが、いくつかの証拠からわかるという。

 とくに精神的な疾患がない人でも、一時的な脳活動の変化によって、幽霊と出くわす場合がある。LSDやマジックマッシュルームのような薬物を摂取した人は、幽霊や幻影をよくみる。

 精神科医たちは、幻視の多くは「金縛り」のせいだと考えている。金縛りは、目が覚めているのに、まったく体を動かすことができない、詳しいことがあまりよくわかっていない症状だ。

 この現象の原因は、まだはっきり解明されていないが、ちゃんと意識があるときと、まどろんでいるときなど、よく夢をみるレム睡眠の間の脳の混線が原因ではないかと考える者もいる。
こうした混同は、閉じこめられたり、宙に浮いたり、自分の体から意識だけが離脱したりといった感覚を伴うことが多く、そのときにたいてい、悪魔や幽霊の姿を目撃する。

 2018年のthe International Journal of Applied and Basic Medical Researchの調査では、人口の少なくとも8%の人と、精神疾患をもつ人のおよそ30%が、人生のある時点で、夜に幽霊との遭遇を体験しているという。

 幽霊の出現など異常な出来事に特別な名前をつけている文化も多い。例えば、コロンビアでは、異様な出来事のことは"幽霊に打ちのめされる"と言い、ナイジェリアでは"背中に悪魔が憑く"と言われる。

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【5. 音の周波数】

 まわりにある未知のものが幽霊に変わる可能性がある。身の回りで妙な音がしただけで取り乱し、あの世のものを見てしまうこともあるのだ。

 1980年代始め、イギリスの技術者ヴィク・タンディは、医薬品供給会社の研究室で働いていたとき、異様な感覚に襲われた。すぐに、ひどい寒気を感じ、これはまずいと直感した。

 タンディは部屋を歩き回って落ち着こうとしたが、突然、この世のものとは思えないものの存在を感じた。視線の端に灰色の幽霊の姿が確かに見えたが、振り向くとそれは消えていた。

 タンディの同僚たちは、この研究所には幽霊が出ると言っていたが、彼はもともと幽霊など信じなかったので、原因を探るためにその場所を調べ始めた。そして、18.9ヘルツで回っていた換気扇の音が元凶だったことがわかった。


 わたしたち人間は、この周波数の振動を感じることはできないが、眼球はこれと非常に近い周波数で振動する。その音がタンディの視覚を歪め、ぼんやりした幽霊を見せたのだ。換気扇のせいで、一瞬、タンディはパニックになっていた可能性がある。

 研究によれば、ある音は人間の臓器を揺さぶり、実際に過呼吸を引き起こしたりすることもあるという。

 聴覚のスイートスポットの周辺や下部にあるこうした波形は、超低周波不可聴音として知られている。20ヘルツ以下の音域は人間の耳には聞こえないが、聞こえないはずの音域が、奇妙な副作用をもたらすことがある。

 実際、タンディが1998年にこの発見を発表した後で、18.9ヘルツ(あるいは19ヘルツ)が、"恐怖の周波数"として有名になった。

 わたしたちのほとんどは、いつも音の計測器を持ち歩いているわけではないので、かすかにうなる換気扇や、妙な音をたてる冷蔵庫が、幽霊の原因だとどれほど説明できるのかは断言するのは難しい。

 タンディの場合は、恐怖心によって却って、これまで以上に幽霊への好奇心をそそられたが、「超常現象かどうかという話になったら、どちらとも言えない」と言っている。

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【6. 物理現象・カビやその他の汚染物質・自然現象】

 その場の状況のきまぐれが、わたしたちの感覚を簡単に操って、そこにはないものを見せたりすることがある。

 テキサス州アンソンの田舎町では、車で墓地に一番近い十字路に向かい、ヘッドライトを光らせると、それに応えるように謎の光が点滅すると、地元の人々はずっと信じている。伝説では、この光の点滅は息子を探しまわる悲劇の母親のランタンの光だという。

 2011年、懐疑主義者のグループがアイフォンとグーグルマップ持参で、この謎にきっちり現実的な説明をつけた。近くのハイウェイを走る車がカーブを曲がるとき、そのライトが不気味に点滅するように見えるのだという。

 さらに厄介なのは、古い建物などでよく見られるカビやその他の汚染物質が、人の心を惑わせることがあることだ。

 過去数年にわたり、ニューヨーク州ポツダムにある、クラークソン大学の環境エンジニアリングの学生たちが、微生物がこの手の悪さをしている証拠を求めて、ニューヨーク中の"出る"と言われる建物を訪ねて歩いた。

 結論を出すにはまだ早い段階だったが、彼らが訪ねた場所は、人が普通に居住している建物よりもかなり胞子の数が多かったようだ。

 幽霊を信じる人たちは、腐った食べ物のにおい(菌類やカビが合わさった)を引き合いに出して、幽霊がいる確かな証拠だと主張するが、微生物やカビがはびこっていると、不安やうつ、精神病の引き金になる可能性があるという。

 麦角菌(LSDの原料と同じ微生物)に汚染されたライ麦パンが、1600年代後半のセーラム魔女裁判につながる"憑依"を引き起こした可能性があると考える歴史家もいる。

 皮膚科医でもある、ロンドンのガイ病院の菌類専門家は、カビだらけの朽ちた書物が奇抜な精神状態を誘発し、文学の最高傑作の発想につながった可能性があるという説をうちたてた。

 科学者が、"悪魔の魔術"のからくりを説明するために、自然の仲介者を特定できるのと同様、すでに周知の地質学的な自然現象が、一見、不気味に思える出来事に影響を与える可能性はある。

 例えば、地球の地磁気活動が突然起こった日に、幽霊の目撃が数多く発生したと言う理論家もいる。

 太陽フレアのような宇宙の異常な出来事によって、地球の磁気圏が乱され、それが、人間の脳内の働きまで混乱させ、妙な方法でわたしたちの知覚を攪乱する可能性があるという。これまでのところ、この仮説を裏づける証拠はほとんどないが。

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【7. 脳の電気信号の乱れ】

 昨今、神経学者たちは、誰か、あるいはなにかに憑りつかれていると感じる、潜在的な根拠を特定した。視覚的記憶や話し言葉を処理する脳の部位、側頭葉の発作が、幽霊の目撃を誘発するらしい。側頭葉の電気信号の乱れが、わたしたちにあの世とつながっている感覚を引き起こすようだ。

 幽霊を目撃したことのある人は、たいてい超常現象を信じる傾向にあり、そうした体験は午前2時から4時の間に集中して発生している。この時間帯は、側頭葉の乱れがもっとも頻繁に起こる時間帯と一致しているという。

 脳の研究者もまた、管理された実験室という環境だが、同じような脳の活動を見ている。

 2016年、エルサレム病院の医師たちによる研究では、てんかんの治療中に側頭葉を刺激すると、とたんに神と遭遇したかのような体験をした患者のことがとりあげられた。

 2008年の論文では、テレパシーをもつとされる人たちが心を読む課題を終えようとしたとき、記憶を処理する部位のひとつである右海馬傍回と呼ばれる葉で、異常な活動が見られたという。

 脳のほかの部位もまた、幻の混乱の犠牲になることがある。

 2014年の研究では、スイスの神経学者が被験者に目隠しをして、機械に置いた手の指の動きを追った。被験者が手を動かすと、後ろのロボットの手が同じように被験者の背中に触れる。しかし、被験者の真似をしているロボットの腕の動きをほんのわずか遅らせると、被験者は、まるで幽霊が自分の背中を突いているかのように、知性をもつ存在が背後にいるような気がするという。

 こうしたわずかに遅れた動きは、脳の前頭頭頂皮質に入ってくる信号のタイミングを混乱させてしまう。

 この部位は、入ってくる感覚と運動の合図を制御する場所なのだ。過去に超常現象を体験したことがある人の脳をスキャンすると、多くが灰白質のある領域に傷害があって、正常な機能に影響を及ぼしていることがわかった。

 この"何かがいるのを感じる"という感覚は、研究が難しい超常現象分野の一般的な現象だ。わずかな動きの遅れのせいで幽霊が現われるのなら、わたしたちの脳自体がもともと、まわりで幽霊が歩き回っているのを深層レベルでイメージしやすくなっているのかもしれない。

References:Why do we see ghosts? | Popular Science/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:なぜ、人は幽霊をみるのか?考えられる7つの要因 http://karapaia.com/archives/52295726.html
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