
数学の才能と遺伝子の関係性を調査 /iStock
世の中には数学大好きという人もいれば、恐怖症になるほど数字を見るのも嫌という人もいる。更には数学恐怖症になる。
そうした数学への態度は、それが得意かどうかにも左右されていることだろう。もちろん数学の力は訓練によって鍛え上げることができる。一所懸命クラスで頑張ればそれはきっと伸びる。
だが新しい研究によれば、持って生まれた才能の部分も無視できないようだ。
【数学脳を発達させる遺伝子】
『PLOS BIOLOGY』(10月22日付)に掲載された研究では、独マックス・プランク人間認知・脳科学研究所をはじめとする研究グループが、「ROBO1」という遺伝子と数学の力との関連性を調べている。
この遺伝子は、脳のなかで数的表現を担っている「右頭頂葉」という部分の「灰白質」の発達に関係している。
研究ではまず最初に、まだ学校で数学の教育を受けていない3~6歳の子供たちを対象に、その右頭頂葉の灰白質の体積を計測。その後、彼らが2年生(7~9歳)になってから数学のテストを受けてもらった。
その結果、ROBO1の種類と灰白質の体積には関連があり、体積が大きいほどにテストの成績も高くなることが判明。この遺伝子によって数学の才能が形作られていると結論づけられた。
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数学脳/iStock
【幼児期の経験(環境)もまた重要】
ただし、この結果には注意が必要であると、米ピッツバーグ大学のメリッサ・リベルタス氏は第三者の立場から『Inverse』で解説している。
彼女によれば、確かに遺伝子と灰白質の体積と数学の力とには関係があるかもしれないが、就学前の幼児期に数に触れた経験もとても大切なことなのだという。
たとえば、子供の頃に「数を数えなければならないボードゲームで遊んだり、買い物のときに親からお金の話をされたり、料理で計量したり」といった経験が数学を理解するための重要な土台になる。
今回の研究では、3~6歳と7~9歳の2時点での結果を調べただけで、子供たちがその間にどのような育ち方をしたのかまでは触れられていないと、リベルタス氏は指摘する。
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【生まれか? 育ちか?】
数学の力と遺伝子が関係していることは揺るぎない事実であるようだ。
たとえば、遺伝性の疾患である「ウィリムズ症候群」や「ターナー症候群」になると数学の力が著しく低下することが知られている(なお前者の場合、大の音楽好きになることも知られている)。
さらに数をなかなか理解できない学習障害の1つ「算数障害」の子供は、母親の66%、父親の44%、兄弟の53%、2親等の親族の44%に同じ症状があることを示した研究や、直感的な数学センスが家族に共通していることを明らかにした研究もある。
こうした事例からは、数学の力と遺伝子とには確かに関係があることをうかがい知ることができる。
しかしもしあなたが今、数学が苦手だと感じているのなら、そのすべてを生まれ持った才能のせいにしてはいけない。
今回の研究グループは、ROBO1が数学の力に与える影響は2割程度だと述べている。逆を言うのなら、残り8割は天賦の才能以外によるということだ。あなたが数学を頑張るのなら、その努力はきっと報われることだろう。
References:inverse/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:数学の才能は生まれつきか?環境か?遺伝子がどれくらい関係するのか調べてみた(ドイツ研究) http://karapaia.com/archives/52295935.html
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