
image by:Steven Kuiter
ユーカリの葉っぱを食べるのはコアラだけではない。オーストラリアに生息するフクロムササビのような有袋類も、同じくユーカリを食べて生きている。
フクロムササビは、これまで単一の種に分類されていたが、FNA配列を使った遺伝子構造を調べた結果、実際には3種いることが判明したため、新種の有袋類2種が発見されたという位置づけになった。
【空飛ぶ有袋類フクロムササビ】
東海岸の森林のほか、北部のクイーンズランド州から南部のビクトリア州まで、オーストラリアの幅広い地域に生息する「フクロムササビ」は、コアラやカンガルーと同じ有袋類でありながら空を飛ぶことができる。
鳥のように大空へ羽ばたくわけではないが、最大100メートルも滑空して木から木へと飛び移ることができるのだから、空飛ぶ有袋類の名に恥じることない立派な飛行能力だ。
これまでフクロムササビ属に属する動物は公式には1種しかいないとされていた。
しかしオーストラリアの各地に生息しており、それぞれの地域によって外見に若干の違いがある(亜種として扱われていた)ことから、じつは複数の種がいるのではないかという意見は以前からあった。
そしてこのほど、そのことがDNAからも証明されたとのことだ。
[画像を見る]
Petauroides volans image by:Steven Kuiter
【DNAの検査から3種いることが判明】
『Scientific Reports』(11月6日付)に掲載された研究では、オーストラリア各地に生息するフクロムササビ50匹以上から採取した組織サンプルを「多様性アレイ技術(DArT)」という遺伝子型判定ツールで解析。
その結果、これまでの予想が正しいことが確認された。フクロムササビは単一の種ではなく、じつは3種いたのだ。
従来フクロムササビ属に区分されたのは「Petauroides volans」のみだったが、「操作的分類単位(OTU)」なる遺伝子上の標識によるならば、その亜種とされた2つの仲間は独立した種であるらしいことが判明。
それぞれ「Petauroides armillatus」(オーストラリア中部に生息)と「Petauroides minor」(北部)と命名され、P. volansは主に南部に生息するフクロムササビの1種ということになった。
[画像を見る]
ーストラリア北部に生息するP. minor(左上)、中部のP. armillatus(左下)、南部のP. volans(右)。image by:Denise McGregor遺伝子解析によってフクロムササビは3種であることが確認された
【危機に直面しているオーストラリアの野生生物】
新たな種が確認されたことは明るいニュースだが、それは同時に困難をも予想させるものだ。
ただでさえフクロムササビは以前から絶滅が危惧されてきた。しかし3種が確認されたことで個体数が細分化され、さらに数が少ない種を守らなければならなくなったのだ。
特に今年、オーストラリアでは過去になかったほどの大規模な森林火災が発生し、フクロムササビをはじめとする多種多様な野生生物の住処が失われてしまった。
適切な管理や保全政策は正しい知識があってこそ可能になる。こうした危機に瀕した動物たちを救うためにも、さまざまな種の遺伝的な構造を知ることが大切なのだそうだ。
References:https://www.anu.edu/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:かわいいが増えてた!オーストラリアで新種のフクロムササビ2種が発見される http://karapaia.com/archives/52296488.html
編集部おすすめ