
火山の溶岩から新種の鉱物を発見 image by:SPbU
ロシア、カムチャツカ半島にある火山の噴出した溶岩から新種の鉱物が発見された。その水色の美しい結晶は、「ペトロバイト(petrovite)」と名付けられた。
特徴的な原子構造を持っており、次世代バッテリーが抱えるある問題を解決する切り札になるかもしれないそうだ。
【溶岩から見つかった珍しい元素鉱物】
カムチャツカ半島にある「トルバチク山」は、もともと珍しい元素鉱物が産出されることで知られている複合火山だ。最近では1975~76年と2012~13年に噴火しており、その溶岩の中からそこにしかない鉱物がいくつも発見されている。
その中でも最新の発見が「ペトロバイト(petrovite)」と名付けられた新種の鉱物だ。ナトリウム硫酸と銅と7つの酸素原子が青く凝集したもので、化学式で表すと Na10CaCu2(SO4)8 となる。
特徴的なのはその酸素原子の並びだ。同じようなものは数えるほどの化合物でしか発見されていない非常に稀なものであるとのこと。
[画像を見る]
image by:SPbU
【次世代バッテリーの欠点を解決する切り札となる可能性】
現在繰り返し充電することが必要なデバイスには、「リチウムイオン電池」が採用されていることが多い。
しかしリチウムイオン電池の原料となる「リチウム」は、政情不安定な南米に偏在しており、電池の需要が増加すればするほど、その供給が不安定になるリスクをはらんでいる。
そこでこれに代わる電池として期待されているのが、次世代バッテリー「ナトリウムイオン電池」だ。その原料となる「ナトリウム」は、海や陸に無尽蔵に存在しているために、リチウムのような供給面での不安はない。
近年では性能面でもリチウムイオン電池に匹敵するようになっており、大きな注目を集めているが、ナトリウムイオン電池には大きな欠点がある。
リチウムイオン電池と同じように、ナトリウムイオン電池も「陽極と陰極」の間でイオンを移動させることで電気を発生させている。だが困ったことに、この過程を繰り返すうちに、不活性ナトリウムの結晶が陰極に溜まってしまい、電池をダメにしてしまうのだ。
ところが今回発見された新種の鉱物ペトロバイトは、この問題を解決する切り札になるかもしれないのだという。
[画像を見る]
ペトロバイトが発見されたトルバチク山 image by:SPbU
【ペトロバイトの多孔質構造が陰極の素材に最適】
ペトロバイトは多孔質構造をしている。内部の空間が道のようなもので互いに結ばれており、このおかげでナトリウム原子は自由に動き回ることができる。この性質がナトリウムイオン電池の陰極の素材としてぴったりなのだという。
「現在、この用途の最大の問題は、鉱物の結晶構造の中に遷移金属(銅)が少量しか含まれていないことです。実験室でペトロバイトと同じ構造の化合物を合成することで解決できるかもしれません」と、サンクト・ペテルブルク大学のスタニスラフ・フィラトフ氏は説明している。
この研究は『Mineralogical Magazine』(6月30日付)で発表された。
References:spbu/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:青白く美しい新種の鉱物が発見される。次世代バッテリーに利用できる可能性も(ロシア) http://karapaia.com/archives/52296710.html
編集部おすすめ