
謎の大気現象スティーブにヒゲのような特徴を発見 image by:Stephen Voss
オーロラにとても良く似ているけど実はオーロラではない。空にすっと走る白味がかかった紫の筋、それが「スティーブ(STEVE)」だ。
スティーブは、普遍的に発生している現象だが、最近までその存在は全くと言ってよい程知られていなかった。
そして今回、この謎の大気現象にヒゲのような新しい特徴が観測されたそうだ。
【オーロラとは違う大気現象「スティーブ」、その発生メカニズムは謎】
北極や南極の空に光のカーテンをたなびかせるオーロラに似ているが、スティーブはそれとは別の大気現象だ。
普遍的な現象で昔から生じていたのだろうが、その存在がはっきり認識されるようになったのは、2016年と比較的最近のことだ。
[動画を見る]
名称は”Strong Thermal Emission Velocity Enhancement”の頭文字をとったものなのだが、じつはこれはNASAの研究者による後付け。実際は『森のリトル・ギャング』という映画の中で、突如出現した生垣の正体に首を傾げた動物たちが、それをスティーブと呼ぼうと提案したことに因む。
スティーブの発生メカニズムはよく分かっていない。オーロラの場合、太陽から吹き付けられる荷電粒子が地球の地磁気に衝突することが原因だ。
一方スティーブは、熱い乱流ガスの川のようなもので、太陽の状態とは無関係に現れる。地上から80~1000キロの上空、地磁気の下にあたる領域には「電離層」があるが、ここにおける何らかの反応によるという見解もある。
[画像を見る]
スペリオル湖にかかるスティーブ image by:public domain/wikimedia
【スティーブに奇妙なヒゲを観測】
今回この謎の大気現象に新たな奇妙な特徴が観測された。まるで柵のように並んだスティーブの根本の部分から、ヒゲのようなものが生えているのが分かるだろうか? 出現して20~30秒ほどすると消えるという。
『AGU Advances』(10月1日付)に掲載された研究では、民間人が撮影した数百時間分の映像をNASAの研究グループが観察し、このヒゲに「ストリーク」と名付けている。
[画像を見る]
image by:Alexei Chernenkoff (a), Shawn Malone (b), Stephen Voss (c) and Alan Dyer (d))
【ヒゲの正体も不明】
そもそもスティーブの正体がよく分からないのだ。ストリーク(ヒゲ)の正体とて分かるはずがないのだが、少なくともその基本的な特徴は分析されている。
まずストリークの筋のような見た目は、錯覚かもしれない。研究によると、ストリークの挙動は小さな点状の光のものであるらしく、細長い筋に見えるのは残像のせいであるかもしれないという。
またストリークはそれが生えている杭状のスティーブと物理的につながっているらしく、同じ磁力線に沿って動いている。
ストリークが形成される場所はかなり限られているようだ。研究グループの試算によると、地上から100~110キロ上空にある電離層の低い領域にしか現れない。
これらをまとめて、ストリークは「スティーブが持つ光学的特徴の中でもっとも高度が低く、最小スケールのもの」であると分析されている。
【緑色が謎を解く手がかり】
その正体に迫る手がかりは、緑色の光に隠されている。この緑の波長は、大気中の「原子状酸素」が発する光と関連しているのだという。
スティーブ内の乱された粒子が酸素と衝突し、急激に加熱。
これが発火して小さな緑色の炎をあげ、徐々に消えていく――ストリークはこうして発生している可能性が高いという。が、あくまで仮説だ。確かなことはまだはっきりしていない。
ちなみにスティーブを初めて報告したのは、今回のストリークと同様、民間人だった。情熱という点では、アマチュア科学者だって職業科学者に負けてはいないのだ。
References:space/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:オーロラのようでオーロラじゃない。謎の大気現象「スティーブ」に奇妙なヒゲを観測(NASA) http://karapaia.com/archives/52296907.html
編集部おすすめ