お酒は注意力を高める化学物質をブロックする/iStock
お酒を飲むとホワっとした気分になり高揚感が得られるが、その反面、注意力や判断力が鈍くなったり、体が思うように動かなくなったりする。
危険を感じ取る能力も低下し、それが飲酒運転による交通事故や暴力事件につながっていく。
ではなぜお酒を飲むと注意力や判断力が低下するのか?どうやらアルコールが注意力を促す脳内化学物質の分泌を邪魔していることと関係があるようだ。
【注意力に関連する脳内化学物質「ノルアドレナリン」】
注意力が必要な作業を行うとき、脳内の「青斑核(せいはんかく)」から「ノルアドレナリン」が分泌される。ノルアドレナリンは、神経伝達物質やホルモンとして機能し、注意力に関連するとされる化学物質だ。
これまでの研究では、注意力が必要になるとノルアドレナリンが分泌されることまでは分かっていたが、そこから先のプロセスが不明だった。
【飲酒が化学物質の活性化を阻害する】
今回、米テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのグループは、2光子イメージングという最新技術を駆使して、生きているマウスの脳の活動をリアルタイムで観察。
その結果、ノルアドレナリンが小脳皮質のアストロサイトの一種「バーグマングリア細胞」にある受容体に結びつき、細胞内のカルシウムが活性化することが明らかになった。哺乳類でこれが確認されたのは初のことであるそうだ。
「アルコールで急激に酩酊することで、脳全体で注意力に関係するバーグマングリア細胞のカルシウム活性が阻害されることはほぼ間違いないでしょう」と、研究グループのマーティン・パウケルト氏は説明する。
お酒を飲むとふらふらと千鳥足になるが、これもバーグマングリア細胞でカルシウムが活性化しなくなることと関係がありそうだ。
小脳が運動制御に関係していることは昔から知られていたので少々意外ではありますが、バーグマングリア細胞のカルシウム活性は、運動協調に不可欠ではありません。
それでも今回の発見は、小脳が非運動機能においても重要な役割を果たしているという知見や、アストロサイトが脳の基本的な維持機能をサポートしているだけでなく、認知機能にも大いに関与しているかもしれないという知見と整合的です
警戒レベルを決める脳回路の探索や、そうした回路と干渉する化学物質が脳の警戒システムを低下させる仕組みなどを解明する新しいレベルの研究につながる成果であるそうだ。
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飲酒運転は違法であり危険行為であるということがこれだけ認知されていても、今だに後を絶たないその理由は、飲酒することで、脳内で危険を感じ取る化学物質の分泌が阻害され判断力が鈍るからだ。
飲んだら乗るなは鉄則だが、飲んで運転しても大丈夫という脳の声は間違いであるということも合わせて覚えておくようにしよう。
この研究は、『Nature Communications』(12月2日付)に掲載された。
References:Drinking blocks a chemical that promotes attention - UT Health San Antonio/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:飲酒運転が危険な化学的理由。アルコールが脳内の注意力を促す化学物質をブロックする(米研究) http://karapaia.com/archives/52297255.html











