ラクダの毛皮から着想を得た冷却素材/iStock
水分が蒸発するとき、その物質は冷えるが、水分がなくなってしまったら、冷却効果はストップしてしまう。
この事実を踏まえ、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちがラクダの毛皮にヒントを得た、電気を使わない冷却材を開発した。
【ラクダの毛皮から着想を得た2層のゲル】
ラクダの体は毛に覆われている。一見、毛がないほうが涼しそうに見えるが、そうではない。毛が酸素透過性のある断熱層として機能し、ラクダの皮膚を外の熱から遮断し汗を蒸発させる。その結果、蒸発冷却効果が長く持続する。
ラクダはが汗をかいても、毛がないむき出しの皮膚ままでいるよりは脱水症状がひどくならない。
MITの研究チームは、この原理を応用することにした。下部にヒドロゲル(水を分散媒とするゲル)、その上部に多孔質シリカベースのエアロゲル(液体を気体で置き換えたゲル)という2層の冷却素材を作った。ヒドロゲルは、97%が水でできていて、温められると蒸発して、ゲルの温度が下がる。
エアロゲルは、非常に熱伝導率が低く、まわりの熱をあまり吸収しない。つまり、下にあるヒドロゲルが低温のままで、蒸発冷却効果が長続きすることを意味する。
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エアロゲルとヒドロゲルが上下2層になった厚さ12ミリ未満の冷却素材 image by:MIT
【2層のゲルで200時間以上も冷却効果を維持】
研究室での試験では、5ミリのヒドロゲル層のみの場合、周辺温度が30℃だと、40時間ですべての水分が蒸発した。ところが、このヒドロゲル層を5ミリのエアロゲルで覆った場合、完全に水が蒸発するまでに200時間も一定の温度が持続した。
蒸発冷却効果によって、2層のほうの温度は7℃下がった。これに対して、ハイドロゲル単独の場合は、8℃温度が下がったが、その持続時間は短かった。
ヒドロゲルが渇いてしまったら、さらに水を加えれば、また同様の冷却効果が得られる。
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【コスト面をクリアして実用化】
難点は、この素材の生産にはまだ、大型で高額な機器が必要だということだ。研究者たちは、より実用的でコストのかからない代替品を模索している。
ゆくゆくは、ラクダの毛皮に着想を得たこの冷却素材が、発展途上国やその他インフラが整備されていない場所で使われ、食品や医療品の出荷や保管に利用できるようになることが期待されている。
この研究の論文は『Joule』誌に掲載された。
References:Power-free system harnesses evaporation to keep items cool | MIT News | Massachusetts Institute of Technology/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:ラクダの毛皮から着想、電気なしでものを冷やす冷却素材が開発される(米研究) http://karapaia.com/archives/52297415.html











