
ゾディアックの暗号文Z-340を解明 image by:San Francisco Police Department
アメリカ、サンフランシスコで1968年から74年の間に少なくとも若い男女5名が殺害された。犯行後に犯人と思われる人物から警察やマスコミへ犯行声明文などが多量に送り付けられた。
その中には謎めいた暗号文で記されたメッセージもいくつか含まれていた。
この未解決殺人事件は「ゾディアック事件」と名付けられ現在も犯人は謎のままだ。その後も捜査が続けられていたのだが、事件から51年がたって、最も難解だった暗号文の1つがアマチュアの暗号解読チームによって解読されたそうだ。
【謎の連続殺人犯、ゾディアック】
1968年から1974年にかけて、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコで若いカップルを中心に少なくとも5人が殺害されるという事件が起きた。
男性と推測される犯人が犯行声明の中で自らを「ゾディアック」(黄道帯や十二宮図の意)と称していたことから、この連続殺人事件は「ゾディアック事件」と呼ばれ、現在でも捜査が続けられている。
アメリカでも特に有名な未解決殺人事件である本件は、2007年映画『ゾディアック』をはじめ、さまざまな映画やドラマの題材にもなった。
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ゾディアック(字幕版)(予告編)
【犯行声明と最初の暗号文】
ゾディアック事件が特徴的なのは犯人が警察やマスコミに対し多量の犯行声明文が送りつけており、そこに謎めいた暗号のメッセージが含まれていたことだ。
最初の犯行声明は1969年8月、3名の犠牲者が出た後、地元の新聞社3社に郵送された。同一人物によって記されたらしき手紙のほか、シンボルで記載された断片的な暗号文が同封されていた。
3分の1ずつに分けられていた暗号文は全体では408文字(Z-408暗号文)。犯人はこれを解読すれば自分の身元がわかると主張。新聞社に対して手紙の公開を要求した上で、受け入れられない場合はまた殺すと綴られていた。
「408暗号文」の公表から一週間後、カリフォルニア州在住の高校教師であるドナルド・ハーデン夫妻が暗号の解読に成功。その内容は以下のようなものだ。
私は人を殺すのが好きだ。森で野生の動物を狩るより楽しい。なぜなら人間は最も危険な動物だからだ。私は死後の世界で自分に仕える奴隷を集めている。この計画の妨げになるので、身元を明かすつもりはない
【最も難解とされる暗号文がついに解読される】
さらに2名が殺された後、1969年11月にサンフランシスコ・クロニクル紙宛にまたも暗号文が送られてきた。こちらは340のシンボルで構成されていることから「Z-340暗号文」と呼ばれている。
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Z-340として知られるゾディアックの暗号文。末尾にはケルトの十字によく似たマークが描かれているimage by:San Francisco Police Department
これまで、スーパーコンピューター「CARMEL」を使い、ゾディアックの思考ができるというプログラムが開発され暗号の解読が進められていたが、完全解明にはいたらなかった。
だが今回、51年ぶりに、ついにZ-340暗号文の解読に成功したのである。
解読したのはソウトウェア開発者のデイブ・オランチャク氏(米)、応用数学者サム・ブレイク氏(オーストラリア)、倉庫オペレーターでプログラマーのヤール・バン・アイク氏(ベルギー)の3人のアマチュア暗号解読チーム。
彼らは自作の暗号解読ソフトを利用して、その読み方を解明した。
Z-340は古くから利用されている「転置式暗号」というタイプで、一定のルールにしたがって文字や文字の集まりを変換するもの。ゾディアックの暗号は、シンボルをアルファベットに置き換えた上で、斜めに読むと意味が通じるようになっていた。
解読された暗号の内容は次のようなものだという。
私の捜査を楽しんでくれているだろうか。テレビで私について語る人物は私ではない。ガス室は怖くない、私を早く天国へ送ってくれるから。今や自分に仕える奴隷も十分いる。他の連中が天国へ行っても何もありはしない。だから死を恐れる。私は恐れない。天国の死における私の新しい人生は安楽なものだろう。
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Let's Crack Zodiac - Episode 5 - The 340 Is Solved!
【ゾディアック事件の捜査は引き続き行われる】
暗号はすでに知られている情報に言及しているだけだ。暗号内で触れられているテレビとは、その1月前にKGO-TVで放送された番組のことで、ゾディアックを自称する人物が電話出演し、「助けて欲しい。自分は病気なんだ、ガス室送りは嫌だ」と発言していた。
天国の綴りは「paradice」で間違っているが(正しくはparadise)、これも前回の暗号と同じ。同様に、死後の世界の奴隷についても前回の暗号で言及されていた。
FBIは解読された内容が正しいと声明を発表。サンフランシスコ支局で現在もゾディアック事件の捜査が継続されていると明言している。
References:sanfrancisco.cbslocal / arstechnica/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2020/12/14)本文を一部修正して再送します。
記事全文はこちら:楽しんでいただけただろうか?連続殺人犯「ゾディアック」の暗号が51年を経て解読に成功 http://karapaia.com/archives/52297416.html
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