
太陽系にある天体の高速道路 / Pixabay
太陽系内の惑星の重力が生み出すカオスは、「宇宙多様体」という目に見えない構造を作り出している。
太陽はもちろん、地球を含めた惑星はそれぞれの重力を持ち、これらが相互につながりあっており、「惑星間輸送ネットワーク」すなわち宇宙の高速道路を作り出しているのだそうだ。
星の王子さまはこれで星々を旅したのかもしれないし、異星人もちゃっかり地球に遊びに来ちゃってるのかもしれない。
【宇宙の高速道路の手がかり】
この隠された構造を見つける手がかりは、彗星や小惑星にある。
木星と海王星の間を公転する彗星・小惑星のグループ「ケンタウルス族」は、軌道が不安定で、巨大惑星の影響によっていずれは太陽系の外に飛び出すだろうと推測されている。
こうした一時的な性質から、その起源は散乱円盤天体といった「太陽系外縁天体」で、やがてケンタウルス族の軌道に入り、現在は「木星族」の短周期彗星に移り変わっている途中だとされる。
これまで、このプロセスには1万年から10億年がかかると考えらえていたが、最近の研究+では、もっと速い経路がある可能性が指摘されていた。
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【重力が生み出す力学的アーチ構造】
ロシア、ベオグラード天文台のナターシャ・トドロヴィッチ氏らは、太陽系外天体・ケンタウルス族・木星族それぞれの領域をつなぐ経路を把握するために、数百万という軌道データを集め、金星から海王星までの7つの惑星によって生じる摂動をモデル化した。
一般にはカオスの検出に用いられるFLI法を行ったところ、太陽と惑星の重力によって形成された力学的に結びついたアーチ構造が明らかになったとのこと。中でも一番顕著だったのは木星につながるアーチであったという。
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image by:University of California San Diego
【100年以内に10AUに到達】
シミュレーションで粒子を飛ばして経路を調べてみたところ、数ダースの粒子は木星に衝突したが、それよりはるかに多くの粒子(2000個ほど)が、太陽周辺の軌道から外れて双曲線の脱出軌道に入った。
粒子が天王星と海王星に到達するまでの時間は、平均するとそれぞれ38年と46年。もっとも速いものだと海王星まで10年たらずで、70%は100年以内に100AU(150億キロ)にまで到達したという。つまり太陽から冥王星までの距離(39.5AU)のおよそ2.5倍も遠くに飛んだことになる。
太陽を除けば、木星は太陽系最大の天体だ。そのため木星の巨大な影響はそれほど意外ではないそうだ。しかし、おそらくどの惑星でも、それぞれの公転周期に応じたタイムスケールで、同じ構造が形成されているだろうという。
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Researchers discover a new superhighway system in the Solar System
【彗星などの軌道解明や将来の宇宙探査に】
今回の発見は、内太陽系を移動する彗星・小惑星の軌道や、それが地球にもたらすリスクなどを理解する手がかりになるとのこと。
もちろん星の王子さまが星々を旅したように、将来的には太陽系の探査にも利用できるかもしれないそうだ。
ただし、天体の高速道路を完全に解明するのはそう簡単ではなく、より詳細な定量的研究が必要になるとのことだ。この研究は『Science Advances』に掲載された。
記事全文はこちら:太陽系を物体が高速移動できる「宇宙の高速道路」が発見される。惑星の重力を利用 http://karapaia.com/archives/52297492.html
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