人間の脳を食らう「殺人アメーバ」アメリカで着実に勢力を拡大中

殺人アメーバ「フォーラーネグレリア」/iStock
 アメリカ南部には、古来より人間の脳を食い死にいたらしめる恐るべきアメーバが潜んでいる。最新の研究によると、その人食いアメーバがおそらくは温暖化の影響で徐々に北上しているのだそうだ。


 アメーバの名を「フォーラーネグレリア(学名 Naegleria fowleri)」という。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、過去40年間に報告されたこのアメーバによる症例を調査。その結果を『Emerging Infectious Diseases』(12月16日付)で報告した。それによると発症地域が徐々に北へと移動していることがわかったという。
【脳が溶ける原発性アメーバ脳髄炎】

 フォーラーネグレリアは、湖や温泉といった暖かい淡水に潜んでおり、汚染された水が人の鼻に入ると、粘膜や鼻腔組織から体内に侵入。神経繊維を伝って脳に入り込み、中枢神経を冒して「原発性アメーバ脳髄炎」を引き起こす。

 感染者は最初は味や匂いに異常を感じ、やがて吐き気・発熱・頭痛といった症状が続き、最終的に意識を失い死にいたる。もっとも治療効果があるとされる薬物も、すでに症状が出ている場合はあまり効果が期待できず、予後は深刻なまでに悪い。

 日本では、1996年に佐賀県の女性が発症したという事例があるが、2019年の段階でこれが唯一の感染例であるとのこと。ただし、その脳は半球を保てないほどに軟化していたそうで、絶対にかかりたくない病気の1つだ。

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image by:フォーラーネグレリア / public domain/wikimedia
【発症地域が徐々に北上】

 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告書によると、年間の症例数は0~6件とほぼ変化がなかったものの、発症地域が徐々に北へと移動していることが明らかになったそうだ。

 1978~2018年に報告された85件のうち、74件は南部の州で起きていたが、6件はミネソタ州・カンザス州・インディアナ州などの中西部で起きており、うち5件は2010年以降のものだった。


 発症地域の分析からは、発症の北限が毎年13.3キロずつ北上していることが判明。生息域が北上している原因としては、温暖化による気温の上昇が考えられるとのことだ。

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image by:CDC, Emerging Infectious Diseases, 2021
【暑い日の水遊びが危険】

 発症と天候との関係を分析してみると、発症前の2週間の気温が平均よりも高い傾向にあることが分かったという。

 CDCによると、暑い日が続くと川や湖で遊ぶ人たちが増えることとどうやら関係があるようだ。

 水にフォーラーネグレリアが潜んでいるのかどうか、すぐに検査することはできないため、暖かい淡水に近寄らないのが基本的には唯一の予防策であるという。どうしても水遊びをしたいなら、鼻栓をしたり、頭を水の中に入れないといった対策もある。

References:livescience/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:人間の脳を食らう「殺人アメーバ」アメリカで着実に勢力を拡大中 http://karapaia.com/archives/52297520.html
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