頭蓋骨を並べたアステカの祭壇「フエイ・ツォンパントリ」が発掘される(メキシコ)

頭蓋骨の塔「フエイ・ツォンパントリ」image by:INAH
 数百年前に栄えたアステカ帝国時代のものと思われる、大量の頭蓋骨がメキシコで発掘された。

 これらの頭蓋骨は「フエイ・ツォンパントリ(頭蓋骨の塔)」に掲げられていたものだ。ツォンパントリは柱をもつ足場のような構造物に、穴をあけた人間の頭蓋骨を通してずらりと並べた祭壇だ。

 これらの頭蓋骨の多くは捕虜となった敵の兵士のものがほとんどだが、女性や子供の頭蓋骨も含まれていたという。
【今年新たに発見された119個の頭蓋骨】

 2017年、おおよそ5メートルの幅のフエイ・ツォンパントリに陳列された650個の頭蓋骨が発見された。この不気味な展示物は、現在のメキシコシティの地下にあった古代アステカ帝国の首都、ティオティワカンのテンプロ・マヨール神殿下に設置されていた。

 アステカ帝国は1428年頃から1521年まで、約95年間北米のメキシコ中央部に栄えたメソアメリカ文明の国家である。

 そして今年12月11日、メキシコ国立人類学歴史研究所(INAH)は、この祭壇の正面と東側から新たに119個の成人男女や子どもの頭蓋骨が見つかったと発表した。

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メキシコ・シティの地下から発見された、フエイ・ツォンパントリの一部

【ツォンパントリは神への捧げものか、それとも神そのものか】

 この不気味なオブジェはメソアメリカ時代にはあちこちで見られた。1521年にエルナン・コルテスがアステカの町を征服したとき、こうした巨大な骸骨の列は、スペインの征服者たちに恐怖を植えつけたに違いない。

 メキシコ文部大臣のアレハンドラ・フラウストは、ウェイ・ツォンパントリの発見は、もっともすばらしい考古学発見であることは間違いなく、1486年から1502年の間に建てられた祭壇に、それぞれ3段階に分かれた建設の痕跡がはっきりわかるという。

 こうしたさらしものにされた頭蓋骨はたいてい、戦士だった若い男性のものだが女性や子供の頭蓋骨も含まれていた。

 この頭蓋骨タワーが初めて発見された2017年、メキシコの人類学者たちはこの事実にショックを受けた。

 これは、アステカ帝国における人間の生贄行為について、現代の私たちが長い間、誤解していたことを示している。考古学者のラウル・バレーラは、このうち何人が戦士だったかはわからないが、おそらく一部は生贄の儀式として捧げられた捕虜だったのではないかという。

 さらに、なぜ、女性や子どもたちが神聖なものとみなされたのかもわからないが、彼らは神への捧げものになった、あるいは神自身の擬人化だったのかもしれないと推測した。

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頭蓋骨の塔からは女性や子供の頭蓋骨も見つかった

【人身御供:社会統制のための究極の道具】

 アステカの神権は、神々に奉仕するために血眼になって、町中から気まぐれで庶民を拉致してきた。

 通常、捕虜にした戦士は、生贄用の石に寝かされ、司祭が鋭い黒曜石の刃物で腹を切り裂き、次に胸を切り裂いて、まだ動いている心臓を取り出して、無慈悲な戦争の神ウィツィロポチトリに捧げた。

 犠牲者が絶命すると、その遺体はテンプロ・マヨール神殿の階段から下へ投げ落とされ、まだ動いて心臓を空に向かって掲げて、神を崇める。

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1587年の Codex Tovarからの挿絵。左はメキシコ先住民にかしずかれるふたりの神が高みに鎮座する神殿かピラミッドの絵、右は骸骨の連なるツォンパントリ

 歴史は、スペイン人が中央アメリカにやってきたことが、アステカの終焉の始まりだとしているが、その前からすでに衰退していたという議論がある。

 人間を生贄に捧げるような儀式が、社会を不安に陥れ、神権や貴族階級への不信感を増幅させたのか、スペイン人たちが到着する10年ほど前には、アステカのこうした生贄儀式はもう行われていなかったことは知られているが、祭壇に女性と子供の頭蓋骨が見つかったことで、新たな議論が出てくることになった。


【刃をふるうアステカ司祭にとって、戦士、女性、子どもは皆同じだった】

 ツォンパントリの発見は、アステカ帝国で人身御供が終わった通説になっている時期についての異論が出てくるだけでなく、誰がなぜ、虐殺されたのかという疑問をもたらすことになった。

 メキシコシティの骸骨祭壇で発見された女性や子供が、戦争の神に捧げられたかどうかははっきりせず、おそらく彼らは、東からの悪魔、つまりスペイン人の到来に応じて、追加されたものではないかというのだ。

 この死の祭壇は、スペイン人征服者の聖書の神は、女性や子どもでさえ、神殿に生贄にされるのを逃れることができなかった影の大陸アメリカには居場所がないことを、思い起こさせ、恐怖を与えるものだったのかもしれない。

References:Tzompantli, A Morbid Aztec Skull Rack, Unearthed In Mexico City | Ancient Origins/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:頭蓋骨を並べたアステカの祭壇「フエイ・ツォンパントリ」が発掘される(メキシコ) http://karapaia.com/archives/52297685.html
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