
魚がぶっ刺さたスターゲイジー・パイ wikipedia.org
イギリスの伝統料理というと「フィッシュ・アンド・チップス」が真っ先に思い浮かぶが、様々な具材が入った「パイ」もその1種だ。
アップルパイのような甘いものから、シェパーズ・パイ(羊のミンチ肉)、コテージ・パイ(牛ミンチ)、エールパイ、フィッシュ・パイ、キドニー・パイなど様々な種類のパイが存在する。
その中でも絶大なるインパクトを誇るのが、イングランド南西部コーンウォールの伝統料理「スターゲイジー・パイ」だ。
その特徴は、なんといっても魚の頭と尻尾が、パイ生地からにょっきりと突き出ていることだろう。魚だけにギョっとするが、意外にも美味しいのだという。
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The Pie Made of (Fish) Heads
【イングランド南西部で名物のスターゲイジー・パイ】
「イギリスの飯は不味い」と言われて久しいが、イギリスは昔ながらの伝統的料理法を大切にしており、一言でいえばシンプルさが全てだ。
その伝統料理として知られる数々のパイ料理も、昔から家庭に親しまれてきた懐かしの味のひとつであり、現在はパブ料理としても一般的になっている。
どのパイも個性豊かな味わいだが、特にイングランド南西部コーンウォールには、「スターゲイジー・パイ」と呼ばれるいわゆるフィッシュ・パイのユニーク版ともいえるパイが伝統名物料理として地元民に受け継がれており、見た目がかなりインパクト大だ。
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ボリュームたっぷりの生地から、調理された魚の頭部や尻尾が天に向かって突き出ているのだ。
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【スターゲイジー・パイには16世紀の伝説があった】
スターゲイジー・パイが生まれた背景には、1つの伝説の物語が存在する。
遡ること16世紀。ある冬の日、コーンウォールの港町マウスホールの住民は、悪天候が続いたことから漁に出られず、飢餓に直面していた。
しかし、1人の地元漁師トム・バウコックは危険を顧みず、嵐の海へとボートで出た。そして鰯やサバ、ニシンなど7種の魚を大量に捕って持ち帰り、全ての魚は巨大なパイに入れて焼き上げられた。
中に大量の魚が入っていることを証明するかのように、そのパイからは魚の頭や尻尾が突き出ていたそうだ。
住民を飢餓から救ったバウコックは、ヒーローとして称えられ、彼の偉業は毎年12月23日になると『トム・バウコックのイブ(Tom Bowcock's EVE)』と呼ばれて「スターゲイジー・パイ」で祝福する伝統の日となった。
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【パイ生地から突き出ているのは鰯の頭】
マウスホールにあるパブ『The Ship Inn』では、12月23日には必ず「スターゲイジー・パイ」を焼き、常連客らに無料で提供しているという。
パブでは、サーモンを含む6種の魚を使い、ハーブとレモンの皮で魚の臭みを消し、マッシュポテトやゆで卵、クリームを混ぜてパイ生地で覆い、仕上げに焼いた鰯の頭と尻尾、そして小さく形どった星型のパイをのせて焼く。
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天に向かって突き出した魚の頭部や尻尾以外は、イギリスの伝統料理「フィッシュパイ」のレシピと変わらない。
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「スターゲイジー・パイ」においては、やはりパイ生地から出ている魚の頭がプレゼンテーションとして何より重要だが、最近では鰯の代わりに、ニシンやサバが代用されることもあるようだ。
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初めて見ると、やはりギョッとしてしまうようなインパクト大の見た目だが、ユニークさを示す以上に、魚の頭や尻尾を突き刺す理由には、オーブンでの調理時に魚の脂分がパイ生地に染み込むことで、より一層パイがしっとりと風味豊かになるからだと言われている。
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見た目に反して、意外に美味しいスターゲイジー・パイ。いつかコーンウォールに旅する機会があれば、トライしてみるのもいいかもしれない。
written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:見た目のインパクト!イギリス南西部の伝統料理「スターゲイジー・パイ」に関するトリビア http://karapaia.com/archives/52298117.html
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