
NASA / John Glenn Research Center
土星の衛星タイタンは、太陽系の衛星の中では唯一、濃い大気(窒素)とメタン循環を持っている。また、地球以外の天体で、安定した液体の存在が明確に確認されている唯一の天体でもある。
タイタンには液体メタンの雨が降り、海などが存在することが確認されているが、北極には、「クラーケン海」という液体メタンやエタン、窒素でできたこの衛星最大の海がある。
米コーネル大学の研究グループがその深さを推定したところ、中心付近の一番深いところは計測不能で、少なくとも300メートル以上はあると推測された。
【窒素ガスに包まれる土星最大の衛星「タイタン」】
土星最大の衛星タイタンは、窒素のガスに包まれ、霞がかかって見える。
しかし、そうした雲の下にはまるで地球のような風景が広がっているという。液体メタンやエタンの川が流れ、湖や海までたたえられているのだ。
海や湖の深さはこれまでも計測されてきたが、北極にある最大の海クラーケン海はまだだった。
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タイタン最大の海、クラーケン海 / public domain/wikimedia
【探査機カッシーニのデータを分析、海の深さを探る】
『Journal of Geophysical Research』(20年12月11日付)に掲載された研究は、探査機カッシーニがタイタンで最後のフライバイを行ったときに収集したデータを分析したものだ。
2014年8月21日の最後のフライバイで、カッシーニはタイタン上空960キロを時速2万900キロで通過。そのさいにレーダー高度計でクラーケン海とマレー入江の深さの計測を試みた。
水面に反射されたレーダーと海底に反射されたレーダーの時間差をもとに深さを算出すると、マレー入江の深さはおよそ85メートルであることが判明。
しかしクラーケン海は深すぎて海底からの反射を確認できなかったという。クラーケン海の海水がマレー入江と同じ成分だとするなら、100メートル以上はあるということになる。
一番深いところで300メートルはあると推測された。
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タイタンの北極にある湖のイメージ図 / NASA/JPL-Caltech
【クラーケン海の成分分析】
さらにレーダーが液体を通過するときに吸収されたエネルギーの量から、海水の成分が推測された。
それによると、海水はメタン70%、窒素16%、エタン14%でできており、2番目に大きなリゲイア海と似ていることが分かったとのこと。
クラーケン海は非常に大きく、より低い緯度にまで広がっていることから、ほかの海に比べてエタンが多いのではと考えられてきた。そうした予想を裏切り、ほかの海とほとんど同じだったのは、研究者にとっても意外だったようだ。
この新事実は、タイタンの水文系モデルを構築する手掛かりになるとのことだ。
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土星の衛星タイタン/iStock
【謎めいたメタンの起源】
タイタンの海については、そのメタンがどこから来たのかという謎がある。
タイタンに届く日光は地球の100分の1程度でしかないが、つねに大気に含まれるメタンをエタンに変え続けている。1000万年が経過する頃には、タイタンの地表からメタンが完全に失くなるだろうと考えられているそうだ。
References:Astronomers estimate Titan's largest sea is 1,000-feet deep/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:土星の衛星「タイタン」の最大の海の深さは少なくとも300メートル https://karapaia.com/archives/52298693.html
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