
飼い猫が子供の自閉スペクトラム症を改善させる / Pixabay
猫は、自閉スペクトラム症(ASD)をもつ子供たちの症状を改善する大切な友だちになる。こんな研究結果が、『Pediatric Nursing』誌に発表された。
ASDの子どもがいる家庭で猫を飼い始めると、その子は他者への共感を示すようになり、分離不安が軽減され、問題行動が少なくなったという。
【自閉スペクトラム症に有効な動物を研究】
発達障害の一種、「自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群」(以下ASD)をもつ子どもは、社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手く出来ない、興味や活動が偏るといった特徴を持っていて、不安に苛まれる傾向がある。
最近の調査では子どものおよそ20~50人に1人が自閉スペクトラム症と診断されると言われている。男性に多くみられ、女性の約2~4倍という報告がある。
こうした症状に対処するための治療法は様々あるが、ASDを抱える子どもは孤立することが多く、その家族は過度なストレスにさらされているのが現状だ。
そこで、この問題の改善に効果的だと証明されている治療法のひとつが、動物を飼うことだ。
コンパニオン・アニマルとしてよく知られているのは犬だが、ミズーリ大学のグレッチェン・K・カーライル氏ら研究チームは、猫ならではの利点も役立つ可能性があると考えていた。
猫はだいたい犬よりも静かな動物で、散歩やトイレなどの手間がかからないため、ASDの子どもやその家族の負担が少なくて済むかもしれない。
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【猫がASDの子供の症状を改善させたことが判明】
この分野の研究は少ないので、カーライル氏らは、ASDをもつ子どもが飼い始めたペットの猫とうまく絆を築けるかどうかをみる実験を行った。そして、猫の受け入れ後、その子どもの社交スキルや不安症が改善されたかどうかを観察した。
6歳から14歳のASDの子どもがいる15家族に、保護猫を家に迎え入れる介入グループと、迎え入れない対照グループをランダムに割り振って18週間様子を見た。その後、介入グループと対照グループを入れ替え、さらに18週間追跡した。
猫はおとなしい性格の個体が選別された。
最終的に保護猫を迎え入れた8家族は、猫がやってきてからわずか2~3日で、子どもも親も猫と固い絆を結び、実験が終わるまでずっとその愛情は続いた。
これらの家庭では、子供の社交スキルが改善した。子どもが他者に対してより共感を示すようになり、暴れたり、注意散漫だったりする行為が減り、不安も少なくなったという。
ASDの子どもには、突如攻撃的になったり、怒りを爆発させるなどの問題行動を起こすことがあり、家族全体にストレスがたまる。
猫は子どもの過剰行動をなだめ、穏やかにさせる効果があるようだ。ASDの子どもは、環境の変化についていくことができず、戸惑うことが多いが、家の中に猫がいると、そうした子供の不安が軽減され、家族全体に前向きな影響を与えることが、今回の研究でわかった。
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【今後はサンプル数を増やし、他の動物も研究対象に】
「ASDの子どもをもつ親が、ペットを飼うことを検討している場合、どんな動物がいいかにはあまりこだわらずに、子ども自身と家族が欲している希望を考えるのが一番いいのです」カーライル氏は語る。
研究結果は、猫はASDの子どものいい友だちになりえることを示しているが、将来的には、もっとたくさんのサンプル数で調べてみる必要があるという。
また、安易に猫を迎え入れず、ASDの子どもをもつ家庭が猫を飼う場合は、穏やかな性格の猫を選んでもらうように支援してもらい、正しい猫の飼い方、世話の仕方、猫の性質などをきちんと学んでもらう必要があるという。
今回の研究は対象サンプルが少なかったので、もっと規模の大きな調査をすれば、この発見をさらに確固たるものにすることができるだろうとカーライル氏。
今後はモルモットやウサギなどほかのペットについても、同様の効果があるかどうかを研究する予定だという。
References:sciencedirect / psypost/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:飼い猫が自閉スペクトラム症の子供の症状を改善してくれるという研究結果 https://karapaia.com/archives/52299057.html
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