世界最古、5000年前のビール醸造所が発見される。生贄の儀式に使用されていた可能性(エジプト)

credit:Ministry of Tourism and Antiquities
  エジプトの首都カイロから450キロの南、ナイル川の西岸にあるアビドスは、冥界の神オシリスが復活する場所とされ、その信仰の中心地として知られる町だ。

 そのアビドスで5000年前の世界最古のビール醸造所が発掘されたそうだ。


 ここで作られるビールは、仕事の後の一杯を楽しむだけでなく、支配者階級にとっては生と死に関係するスピリチュアルな意味合いもあったという。
【5000年前の大規模なビール醸造所】

 発見されたのは、それぞれ長さ20メートル、幅2.5メートルある8つの大型生産施設で、一度に2万2400リットルのビールを生産できたと推定されている。

 ムスタファ・ワジリ考古最高評議会事務局長によれば、「古代エジプト初期の主要都市で、ビールを大量生産していた」跡地で、エジプト第一王朝の創始者ナルメル王(在位 前3125~前3062年頃)の時代にまでさかのぼる。

 それぞれの施設では、2列に並んだ40点の土器が発見されている。土器は、穀物と水を熱してビールを作るためのもの。環状に粘土の棒を立て、その上に置いて使われていたとのことだ。


 なお、この醸造所の存在が最初に明らかになったのは20世紀初頭のことだそうだ。しかし、イギリスの考古学者が発見したその場所ははっきりしていなかった。今回、エジプトとアメリカの共同発掘チームによって、それがようやく再確認された形だ。

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【生贄の儀式に使用されていた可能性も】

 アビドスで信仰されていたオシリス神は、。エジプト神話では冥界で死者の魂をさばく神とされており、ヘリオポリス九柱神に数えられる。

 発掘チームの中心人物、米ニューヨーク大学のマシュー・アダムズ博士の考えでは、ビールはただの飲み物だっただけでなく、支配者層によるスピリチュアルな儀式でも使われていたという。


 「ファラオの葬儀場で行われる儀式に供えるために作られたのかもしれません」とアダムズ博士は話す。そうした施設からは、ビールが生贄の儀式に利用されたという証拠が見つかっているのだそうだ。

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穀物を水を熱してビールを作ったと考えられている土器
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【農業の発明前から存在したビール】

 なおビールの歴史は古く、イスラエル北部の「ラケフェット洞窟」では、まだ農業すら始まっていない1万3000年も前にナトゥーフ文化でビールが作られていたらしい証拠が発見されている。

 さらに、トルコ東部にある「世界でもっとも古い寺院」と呼ばれる1万1000年前の「ギョベクリ・テペ」でも、ビール作りに使われたらしき桶が発見されている。

 あの黄金の液体はそんなにも昔から、私たちの喉の渇きと心を癒し続けてきてくれたのだ。

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References:phys / Ministry of Tourism and Antiquities / written by hiroching / edited by parumo

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生贄の儀式に使用されていた可能性(エジプト)
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