SWATに家を破壊された女性、修理代約540万円を自腹で払わなければならない可能性(アメリカ)


 アメリカの警察に設置されている特殊部隊、SWATは時に過剰な行動をとり、罪のない市民が犠牲になるという事例が何度も報じられている。

 去年の夏、テキサス州に住む女性は、自身とは全く関係のない事件に巻き込まれた。
売りに出そうとしていた自宅に武装した犯人が立てこもったことでSWATが突入し、家を破壊したのだ。

 その修理代金は540万円にものぼるそうだが、保険会社も市も警察も、損害賠償を支払うことを拒否したため、女性は自腹で支払わなければならない可能性があるという。『Institute for Justice』などが伝えている。
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SWAT Team Destroyed Innocent Woman’s Home and Refused to Pay for Repairs

【販売契約を済ませていた家に男が立てこもる】

 2020年7月25日は、ヴィッキー・ベイカーさん(76歳)にとって忘れられない悪夢のような日となった。

 ベイカーさんは、テキサス州北東部コリン郡マッキニーに自宅を所有していたが、モンタナ州に引っ越すため、2007年から住んだその自宅を売りに出し、既に買い手がついていた。

 当時、その家にはベイカーさんの娘ディアナ・クックさんと彼女の愛犬が住んでいた。

 そこへ、銃を持った男、ウェズリー・リトルが15歳の少女を連れてベイカーさんの家にやって来た。その男は、過去に家の修理を依頼したことがあったが、ほんの一時期のみであり、以降は一切連絡など取っておらず友人でもなかった。
 
 クックさんは、無理やり家に立てこもろうとする武装した男に対して「食材を買ってくるから」と説き伏せ、家を出た。

 ウェズリーが少女を母親のもとから強引に連れ去り逃亡中であると知ったクックさんは、直ちに母親のベイカーさんとマッキニー警察に知らせた。

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【SWATが突入し家を破壊】

 ベイカーさんとクックさんは、警察がウェズリー逮捕のために家への侵入許可を尋ねて来た時、「1週間前に買い手が見つかって契約済の家なので、どうか壊すようなことはしないで」と懇願した。

 ところが、SWATチームはそんなことはお構いなしで、30個もの催涙弾を窓ガラス越しに家の中へ投入。
装甲車を使ってフェンスやガレージ、玄関のドアを破壊した。

 SWATがこうした行動を起こす前に、警察は誘拐されていた少女を引き渡すようウェズリーを説得することに成功していた。

 少女は警察に保護されたが、逃げ場がないと思ったのかウェズリーはベイカーさんの寝室に引きこもったまま自らの命を絶った。

 
【莫大な被害額に対して訴訟中】

 売る予定の家を破壊されただけでなく、その中で死人まで出す最悪の事態となり、ベイカーさんは大きなショックを受けた。

 娘のクックさんには被害がなかったが、SWATの攻撃時に家の中にいたクックさんの愛犬は、催涙弾の煙と爆発音によりほとんど盲目状態となり、耳も完全に聞こえなくなってしまったという。

家の外装だけでなく家の中の水道管パイプもボイラーも床も、それに大切な所持品も、もうめちゃめちゃです。

地域住民を犯罪者から守るという点では、警察に感謝しなければならないのでしょうが、私の家や娘の犬に被害を与えながら何の弁償もしないのは全く持って不公平です。

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 このように話すベイカーさんは、市や警察、保険会社が拒否した家の修理費を個人の退職金から賄わなければならず、その費用総額は5万ドル(約540万円)以上になったという。

マッキニー市も財政的支援を拒否し、保険会社も「警察には免責があり、こちらに支払い義務はない」と拒否しました。

全く自分の関係ない出来事で起こったことで、私が全てを支払わなければならなかったのです。あんなふうになった家ですから、当然買い手は契約を白紙に戻したいと言ってきました。その後、家の売値もかなり下がってしまいました。

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 数か月かかってようやく修理したベイカーさんの家は、かなり安い売値で、去年の冬にようやく別の買い手がついたという。

 その後、モンタナへ引っ越したベイカーさんだが、「自分だけではなく、自分と同じような目に遭わされ被害を受けた人たちのために、闘いたい」と、現在は公益法律事務所である司法研究所の助けを借りて、同市に損害賠償金を求める訴訟を起こしている最中で、司法研究所側はこのように述べている。

米国とテキサス州の憲法は、当局が住民の所有している敷地内に侵入する時、それが治安維持のためであっても、当局は所有者に補償しなければならないことを明確にしています。

犯罪者を市民から引き離すことは、全ての人に利益をもたらすといえます。SWATチームによって引き起こされた損害の費用は、ベイカーさんだけではなく、市や保険会社も負担する必要があります。

 ベイカーさんが、引退生活を心から楽しめるようになる日は来るのだろうか。アメリカでは家屋の保険に、火災や水害、地震だけではなくSWAT突入保障も入れておいた方がいいのかもしれない。

written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:SWATに家を破壊された女性、修理代約540万円を自腹で払わなければならない可能性(アメリカ) https://karapaia.com/archives/52299929.html
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