
credit:The Greater Southwestern Exploration Company/Flickr ( CC by 2.0 )
アメリカ、カリフォルニア州のラスベガスとロスの間に広がるモハーベ砂漠は、道路もほとんどなく、人間が住む世界からは隔絶された謎めいた場所だ。
一番近いのはゴーストタウンと化したクルーセロの町だ。
こんな乾燥した何もないところに、なぜか拡声器に似た金属製の巨大なメガホンのようなものが置かれているという。いったい誰が、何のために置いたというのだろう?
【砂漠の丘に置かれた巨大メガホン】
金属でできたなんとも場違いなこのメガホンは、モハーベ砂漠国立保護区のはずれにある丘の岩の上にしっかりとはめこまれているが、年月のせいかすっかり錆びている。
いったいなんのためのものなのか誰にもわからない。謎めいた標識だと言う者もいれば、アート作品だと言う者もいる。2020年11月に世界を騒がせた「ユタ州のモノリス」のような謎だとされている。
何マイルにも渡って、周囲にはなにもないし、誰もいない。長さが2.4メートルもあるこんなに重たいものを、どうやってこんな高いところまで引っ張り上げて設置したのかもわからない。
真ん中にふたつの角のような形をした金属がボルトで固定されているが、人ひとりで使うにはあまりに大きすぎる。こんな奇怪なものを文明から隔絶された崖の上にわざわざ取りつけたのは、大勢の人間なのか、それともエイリアンめいた何かなのか?
これが、どれくらいの間ここにあるのかも、誰も知らない。
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【30年前くらいに設置された?】
「だいたい30年くらい前に置かれたものだと思います」と言うのは、CampsitePhotosというサイトを運営しているエリック・エドワーズ氏だ。
自身のブログにもこのメガホンのことを書いていて、実際に現地も訪ねている。「ふたつに分割することができるようですが、それぞれはかなり重い。
数人で引きずっていけば運ぶのは可能でしょうが、それでも、この丘を担ぎ上げるのには時間がかかるし、かなり難しいでしょう」
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【いったいこれはなんなのか?様々な仮説が飛び交う】
「これは最大の謎です」とエドワーズ。「1940年代や1950年代ごろに使われていたサイレンに似ていますが、違うようです。でも、この地域は、鉄道で化学薬品を輸送するために使われていたので、事故があったりした場合、サイレンが使われたことは考えられます」
これがなんなのか、どこで作られたものなのかのを示すマークなどはなにもないという。最近、誰かが、開口部に動物の革をかぶせて、ドラムのようにして使ってみたが、それは本来の目的ではないようだとのこと。
ロケットの一部だとか、パイプラインの砂時計型をしたベンチュリ管(口径に変化をつけることで、圧力差を利用して流速計、気化器などに利用する)ではないかとか、さまざまな憶測が飛び交っている。
内部に十字型の金属片が取りつけられているため、銃の照準器、あるいはなんらかの照準器ではないかと言う者もいる。
また、数百マイルにもわたって広がっているカリフォルニアの洞窟の場所を示す道具だとか、十字は巨大な金鉱のありかを示す場所を示すXマークだと言う者さえいる。
その形から、メガホンと言われるのももっともだが、おそらく大方の予想どおり、大昔の警報システム、空襲警報用のサイレンのようなものだったのかもしれない。だが、どうやらそうではなさそうだ。
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「おそらく、民間の防衛対策システムや空襲警報システムとは違うでしょう」というのは、アイダホ州立大学の歴史学教授サラ・ロービー。
「冷戦初期のサイレンのほとんどは、開口部が長方形でした。第二次大戦時代の空襲サイレンももっと円筒形で、これとは形が違います。
それに、民間人のためにサイレンを設置するなら、このような人のいない砂漠ではなく、もっと人口の密集した地域のはずでしょう」
では、ロービー氏の推測は? なんらかの測定装置のようなものではないかという。
「ここは、エドワーズ空軍基地が近いことが大きなヒントです。エドワーズ空軍基地では、多くの音の障壁実験を行っていました。史上初、音速を超えたチャック・イェーガーの有名なフライトもここで行われました。あのメガホンのようなものは、飛行や衝撃・音波などに関係する測定器の類のものだと私は思います」
さらにロービー氏は、ネバダ核実験場(現在はネバダ国家安全保障施設)もここからそれほど遠くないことを指摘する。ここではかつて、1963年まで地上で、それ以降は地下で核兵器の実験が行われていた。
「このメガホンがある場所は実験場から241キロも離れていますが、それでも、長距離衝撃波やその他の地殻変動などを検出するのに使われた可能性はありえることです。あくまでも憶測の域で、疑わしいですが」
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【モハーベ・メガホンを見に行く】
十分な広さのある頑丈な車を持っているなら、このメガホンがある場所まで実際に赴いて、尾根歩きをすれば、その目で実物を見ることができる。
「現場にたどり着くには、4WDが必要です。モハーベ川を渡り、砂漠やぬかるんだ泥道などひたすら悪路を突っ走らなくてはなりません」エドワーズは言う。
「高速15号線から、アフトンキャニオンへの出口をおりて、キャンプ場目指して東へ走ります。そこから、さらに峡谷の間を21~24キロ東へ、鉄道の線路に沿って進みます。
クルーセロロードを右(南)へ折れると、数マイルで目指す小さな丘のてっぺんを探すことができます」
北緯35.0056度、西経116.1963度という、メガホンの正確な座標を知っておくと便利だ。
メガホンを直に見るつもりもなく、その手段もなくても、この奇妙な物体が人間の想像力を大いに刺激するのは明らかだろう。
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The Mojave Megaphone, Afton Canyon and Spooky Cave
「人の生活から隔絶した砂漠というものは、それでなくても謎めいています」エドワーズは言う。
「人の手の入らない原始的な場所に、驚くような光景や美しくも奇妙な地形を目にすることはよくあるでしょう。こうした場所に、不思議なオブジェを置きたがる人たちは、その場所に謎と不思議のスパイスを加えたいからなのだと思います。彼らの意図は、特定の分野への興味ではなく、むしろ人々の反応を見るのを楽しむことだと思います」
References:Who's Behind the Mysterious Mojave Desert Megaphone? | HowStuffWorks/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:いったいなぜそこに?砂漠にぽつんと置かれている巨大メガホンの謎(アメリカ) https://karapaia.com/archives/52300045.html
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