アメリカの諜報機関CIA(中央情報局)および米空軍・海軍が、かつて使った驚きの人間回収システムが話題を呼んでいる。
1950年代にアメリカの発明家が考案したスカイフック(フルトン回収システム)は、航空機が飛んでいる状態で地上(水上)の人間をノンストップで拾い上げるという前代未聞なものだった。
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【地上の人間を飛行機が止まらず回収。驚異のシステムスカイフック】
スカイフック(フルトン回収システム)は1950年頃にアメリカの発明家ロバート・フルトンがCIA向けに考案した回収システムだ。
イギリスとアメリカが第二次世界大戦などで用いた装置を応用したその方法は、諜報員や兵士の救出にぴったりだった。これに興味を持ったCIAは空軍とともに研究開発を重ね、実用できる形に仕上げたという。
その流れはざっと以下のようなものだ。
回収される人間は、航空機からも投下可能な専用キットを開封し、手順に沿って装備をセット。その過程で同梱の気球につながるロープの先のハーネスを自身の体に取り付け、同梱のヘリウム入りボトルで気球を膨らませる。
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それを空に上げると、気球を目印に回収用アタッチメントをつけた航空機が低空飛行でやってきてロープを捉えて上昇。この時にロープを吊るす役目を終えた気球は放棄される。
その間にロープにぶら下がってる人間を機内のクルーが回収する。
とまあトムクルーズもびっくりなスタント並みの回収法だが、このロープには「スカイアンカー」と呼ばれるバネ式のトリガー機構が仕込まれていて、回収機のアタッチメントの間にロープが捉えられ気球が放棄されると同時に、人間とつながるロープが機体に固定されるようになっていたそうだ。
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【気球を上げて迎えを待つ。
航空機の安全着陸が困難だったその時代、着陸なしで人や貨物を回収するスカイフックは空軍や海軍にも利用された。
回収に使われた航空機はB-17など。「ホーン」と呼ばれる長さ約9メートルの2本組アタッチメントを機首に付け、低速かつ低空飛行で接近し目標のロープをとらえるのに最適な機種が選ばれた。
一方、CIAが公開した指示カードによると、回収を待つ人間は、気球を上げたら風を背にして座り込み、迎えの機体にフラッシュライトでに合図をしたり、ロープのライトを点けるなどして位置を知らせた。
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そして間もなくノンストップな航空機に引き上げられる。なおロープ1本で宙づりになってから回収されるまでの時間はわずか数分だったという。
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だがそれまでは、ねじれの苦痛や回転を避けるため、腕と脚を広げたままの姿勢で後方に流されることになり、待機クルーがロープを引き寄せて機内設置のウインチに巻き付けるまで耐える必要があった。
ちなみに命綱となるロープの長さは150メートルほど。高強度ナイロン製で簡単に切れるようなものではなかったが、現実にはけっこう過酷で生きた心地がしなかったのではなかろうか。
以下の動画は1968年に一般公開されたスカイフックシステムの様子。南ベトナムで敵陣に知られずに空軍のクルーを救助するのに役立ったという
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【CIAの諜報作戦にも登場。1990年代まで使われたシステム】
このシステムはCIAの諜報作戦にも役立ち、1962年のコールドフィート計画で北極圏に放棄されたソビエトの研究基地を調査した工作員の回収にも使われた。
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大胆なシステムはフィクション界にも多大なインスピレーションを与え、バットマンの映画「ダークナイト」やゲームなどにも類似のものが登場している。
高い木が無い開けた場所など、実行にはそれなりの条件がいくつかあったが、滑走路や誘導員などもいらず、必要な人間だけを素早く回収できるシステムの用途は多岐にわたったと推測される。戦場以外にも要人の奪還などに使われたかもしれない。
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にしてもこれ高所恐怖症じゃなくてもスリル満点にすぎやしないか。
タフな兵士なら平気かもだがリアルじゃかなりの反動がありそうだし、加速する飛行機にぶら下がるなんて怖すぎる。万が一ロープが絡まったらどうなるのかとかそのへんも気になっちゃうよ。
References:vintag / ciaなど /written by D/ edited by parumo
記事全文はこちら:CIAがかつて行っていた、地上の人間を航空機によって回収する驚きのシステム「スカイフック」とは? https://karapaia.com/archives/52300098.html











