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嘘つきは嘘になれているのだから、他人が嘘をついても簡単に見破ってしまうはず、と思うかもしれないが、事実はそうではないようだ。
よく嘘をついて他人を騙そうとする人は、事実とフィクションの違いを区別する力が弱く、嘘に騙されやすく、誤った情報を信じてしまうという。
「説得力のある嘘が得意な嘘つきほど、皮肉なことに一番嘘に騙されやすい人たちであるようです」と、カナダ、ウォータールー大学のシェーン・リトレル氏は意外な真実を暴いている。
【2種類の嘘「説得型」と「回避型」】
ちなみに、ここで言う嘘とは、「他人を感心させたり、説得したり、誤解させるような情報を流すことで、それが真実かどうかは気にされていないもの」だ。そのため、他人にただ虚偽を信じさせることが目的の嘘とは違う。
また、今回の研究では、嘘を「説得型」と「回避型」の2種類に分けている。
「説得型」は、誇張や尾ひれを付けることで、他人を感心させたり説得したり、うまく取り入ったりするための嘘だ。
「回避型」は、あまり率直に言うと相手が気分や評判を害したりするような状況で、無関係な話をしたり、回りくどい反応を示したりすることだ。
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【嘘を見抜けるかどうかをテスト】
リトレル氏らがアメリカとカナダで826人を対象に行った実験は、参加者に”似非”科学的な説明や”フェイク”ニュースの見出しを読んでもらい、科学的に正しい事実と「印象的だが無意味なフィクション」とを区別することができるかどうか試すというものだ。
内容はたとえばこんな具合だ――。
「我々は相互関連性が高度に開花しようとしている時代に生きており、いずれは量子スープそのものを利用できるようになるだろう」
それらに加えて、次のような含蓄ある自己啓発的な格言や科学的に正しい説明も評価してもらった。
「川は岩をも割ることができる。力ではない、忍耐によって」
「自然の熱力学プロセスにおいて、相互に作用する熱力学系のエントロピーの総和は増加する」
こうした試験とあわせて、被験者には説得型の嘘と回避型の嘘をつく頻度を自己申告してもらい、さらに認知能力、メタ認知的な洞察力、知性についての自信過剰レベル、思索能力を評価するテストも受けてもらった。
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【説得型の嘘吐きほど嘘に騙されやすい】
そして明らかになったのが、説得型の嘘をつく人は、自らもまた誤解させるような情報に弱いということだ。
「頻繁に説得型の嘘をつく人ほど、さまざまなタイプの誤解を生む情報に騙されやすいことが判明しました。認知能力の高さ、思索的かどうか、メタ認知スキルの高さは関係ありません」と、リトレル氏は説明する。
たとえば説得型の嘘吐きは、実際には無意味なのに表面的にはいかにも奥深そうなことを言っていそうな文章を読んで、本当に奥深いものと勘違いする傾向にあったという。つまり、もっともらしく聞こえさえすれば、そうした人はそれを正しいことと受け止めるのだ。
一方、回避型の嘘吐きは、そうした点でかなり分別があったという。
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【嘘つきほど偽の情報を信じ、拡散している可能性】
嘘つきは、「トイレットペーパーから新型コロナウイルスが検出」といったフェイクニュースの見出しにころっと騙されてしまう。
コロナ禍ではSNSなどを通じてあっという間にデマが広まったことがあるが、今回の研究は、特定の種類の虚偽情報が広まるプロセスを理解するヒントになるかもしれないとのことだ。
この研究は『British Journal of Social Psychology』(2月4日付)に掲載された。
References:Research shows that BSers are more likely to fall for BS | EurekAlert! Science News/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:嘘をつく人ほど誤った情報に騙されやすいという研究結果 https://karapaia.com/archives/52300112.html
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