1960年代にフランスが行った核実験のしっぺ返しか?放射線を含んだサハラ砂漠の砂塵で赤く染まる


 アフリカ北部から北に向かって吹く強い季節風によって、サハラ砂漠から飛ばされた砂塵によりフランスの街は赤く染まった。だがそれだけではない。
フランスの西部地域放射線管理協会(ACRO)の放射線量モニター分析結果によると、砂塵は放射線物質も運んでいるという。

 人体には影響はないレベルとされているとはいえ、海を越えてフランスにまで到達しているこの放射線だが、これはかつてフランスがサハラ砂漠で行った核実験によるもので、因果応報とも言える皮肉な結果となったようだ。
【サハラ砂漠で行ったフランスの核実験のつけ】

 西部地域放射線管理協会(ACRO)によると、この放射線物質は、フランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争中の1960年2月13日、サハラ砂漠内のアルジェリア中部で行なわれたフランス初の原子爆弾による核実験によるものだという。

 この核実験は、「ジェルボアーズ・ブルー」(青いトビネズミの意)というコードネームがつけられている。

 皮肉にも、核爆発で生じた核分裂生成物質セシウム137がフランスに舞い戻ってきたのだ。

 ACROは、フランスとスイスの国境近くのジュラで、最近飛んできたサハラ砂漠の砂を採取して分析してみた。

 この分析結果をベースに、広範囲における蓄積量を見積もってみると、1平方キロあたり8万ベクレルのセシウム137が存在すると推定されるという。

 遥かに離れた場所での核爆発から60年もたってなお、いまだに放射線がまき散らされていることを考えると、フランスのせいでサハラ砂漠がいかに長い間、放射性物質に汚染されてしまっていたかを思い知らされる。

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Signals from the sky! Huge dust storm turns the sky of France to red color ! Lyon

 スペイン、カナリア諸島にあるラグーナ大学のペドロ・サラザール=カルバロ氏はこう語る。

カナリア諸島では、サラハ砂漠から飛んできた砂はカリマと呼ばれます。この砂には放射性物質、カリウム40とセシウム137が含まれていることがあります。カリウム40は、鉱物の中に自然に存在するものですが、セシウム137はフランスの核実験によるものです

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フランスの核実験「ジェルボアーズ・ブルー」

【放射性物質を帯びた砂漠の砂の影響は?】

 2020年に、空港が閉鎖され、大勢の乗客が足止めをくらうほどの強い砂嵐が吹いた。
カルバロ氏の研究所は、この嵐で飛んできた砂の中に存在する放射性物質のレベルについての研究を発表した。そのとき、カリウム40とセシウム137の値が高かったことがわかった。

 カルバロ氏は、このレベルなら安全だとしているが、研究室は引き続き数値の観測を続け、原子力安全委員会に報告している。今のところ、チェルノブイリのような、危険なレベルの放射性物質は検出されていない。

私たちは、実際に普段の生活の中で放射線物質にさらされていますが、もっとも多いのは、土壌から自然に放出される天然のラドンです。

肺ガンの8~14%は、特に地下や閉鎖された空間で吸い込むラドンガスのせいだと推測されています

 西ヨーロッパは現在、サハラ砂漠ダストの真っただ中にあり、今シーズンは少なくとも3回は発生している。

 地中海を渡ってきたかなり厚い塵の雲が、スペイン、フランス、イギリス、ドイツなどにかけてかかっていて、泥の雨が降ると言われている。

 また砂嵐が猛威を振るえば、アルジェリア国内にも影響を及ぼし、1960年にフランスの核実験が行われた現場から、またしてもセシウム137をヨーロッパへもたらすことになりそうだ。

 フランスに里帰りした核実験「ジェルボアーズ・ブルー」の名残は、まさに因果応報となり、いつまでも消えない核実験の残滓を思い出させるものとなるだろう。

References:euronews/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:1960年代にフランスが行った核実験のしっぺ返しか?放射線を含んだサハラ砂漠の砂塵で赤く染まる https://karapaia.com/archives/52300292.html
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