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刑務所は法律に違反した犯罪者が実刑判決を受け収容される施設だ。刑罰を受ける場所であると共に、二度と罪を犯さぬよう受刑者を更生をさせるための場所でもある。
しかしながら出所もしくは仮出所後、また過ちを犯し、刑務所に戻ってくる者も多い。この再犯率を下げることが大きな課題となっている。
これはアメリカのケースだが、刑務所内で共感を育むトレーニングを行うと、仮出所した人の再犯率が低下するそうだ。
といっても仮出所者に行うのではない。保護観察官に対して行うのだ。
【アメリカ社会に重くのしかかる刑務所の負担】
アメリカでは今、刑務所にかかる費用が大きな問題になっている。刑務所といった施設や保護観察制度には、807億ドル(約8兆8770億円)もの税金が使われており、社会に重い負担となっているのだ。
それだけのお金を使って刑務所で更生したもらったはずなのに、出所後に戻って来られてしまったら、納税者は何のためにコストを負担しているのか分からなくなってしまう。実際に出所後に罪を犯し出戻ってくるケースは多い。
米カリフォルニア大学バークレー校のグループは保護観察官(プロベーション・オフィサー)に着目した。出戻りが減らないのは、保護観察官と仮出所者との関係にも多少なりとも原因があるのではないかと考えたのだ。
そこで両者の人間関係に介入するトレーニングを考案した。
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【保護観察官の共感を育むトレーニングを実施】
『PNAS』(3月29日付)に掲載された研究では、アメリカの大都市で任務をこなす保護観察官216名に参加してもらい、共感を育むトレーニングを受けてもらった。
参加した保護観察官が担当する仮出所者(執行猶予中の人も含む)は2万人以上だ。そんな彼らがオンラインで受講した30分間のトレーニングは、職務の目的意識を高め、仮出所者の立場を理解できるように設計されていた。
トレーニングではたとえば、「保護観察官と仮出所者が尊重・敬意をもって接されていると感じられることが重要な理由は何か?」といった質問に答えたり、将来的に保護観察官になるだろう人宛に、過度に冷酷になってしまうことを防ぐ方法や人間性を忘れないようにする方法といったアドバイスを書いたりする。
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【保護観察官の共感力トレーニングにより再犯率が13%低下】
それから10か月後に仮出所者の再犯率を調べてみたところ、共感トレーニングを受けた保護監察官が担当したグループのそれは、別のトレーニング(テクノロジーで集団をまとめる方法)を受けた保護観察官が担当したグループよりも、13%低かったとのこと。
こうした再犯防止効果は、保護観察官の人種・性別・勤続年数・所属部署といったものに関わりなく得られたそうだ。
研究によれば、この結果は、保護観察官と仮出所者の関係が、常習的な犯行と戦ううえで重要な出発点になることを示しているという。
References:
・Parole officer "empathy training" leads to a 13% drop in parolees' reoffending rates
・New study shows how empathy training for parole officers can keep people out of prison / written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:受刑者の更生に必要なのは保護観察官の教育。共感力訓練を行うことで再犯率が低下することが判明(アメリカ) https://karapaia.com/archives/52300761.html
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