
太陽系にある惑星はどれも個性派揃いだが、天王星はひときわユニークな星だ。
自転軸がほとんど水平に傾いており、横倒しに回転している。
硫化水素のおかげで腐った卵のような悪臭が漂い、磁場が中心から大きくズレており、ついでにどの太陽系惑星とも似ていないリングを持つ。
天王星のユニークさはまだある。20年ほど前、土星、海王星、天王星のX線を検出しようと試みられたことがある。しかし、このとき天王星だけはチラリともX線を見せてくれなかったのだ。
そんな天王星から、このほど史上初めてX線を検出することに成功したそうだ。ただし、それが放たれるメカニズムはよく分かっていない。
【天王星のX線放射を初検出】
今回の成果は、NASA「チャンドラX線観測衛星」のお手柄だ。最初の観測は2002年、次が2017年のこと。このデータを英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの天文学者チームが分析したところ、そこにはっきりとしたX線の証拠が見つかった。
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A Quick Look at: Uranus
天王星がX線を放っていたこと自体はそれほど意外ではない。地球を含め、太陽系のいくつもの惑星から検出されているし、彗星や衛星だってそうなのだ。また非常に遠いことを考えれば、これまでX線が検出されなかったことも意外ではない。
【天王星のX線は一体どこから放出されているのか?】
研究者の首をひねらせるのは、天王星がどうやってX線を放出しているのかはっきりしないことだ。
太陽系のX線のほとんどは太陽が発生源だ。木星や土星はこれを散乱させるので、天王星もそうなのかもしれない。
しかしウィリアム・ダン氏らの計算では、散乱されたにしてはX線量が多すぎるという結果になったのだ。そこでいくつか仮説が立てられた。
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仮説1:天王星の環
この謎を解く手がかりはほかの惑星にあるかもしれない。たとえば土星の環の場合、エネルギーを帯びた粒子が酸素原子と作用するために、X線の中に蛍光が含まれることが知られている。
天王星の環は土星ほど目立たないが、その周囲はエネルギー電子の強度が高いことが判明している。これが環に含まれる原子と作用すれば、蛍光X線が生じたとしてもおかしくはない。
仮説2:天王星のオーロラ
オーロラもX線を発生させる。オーロラは磁力線にそって加速したプラズマが大気中の粒子と衝突することでできる現象で、地球だけでなく、木星、火星、土星、さらには彗星でも確認されている。
天王星でも大気上部でオーロラが生じている可能性はある。
ただし、その磁場は中心からズレているために、これまで太陽系で観察されてきたオーロラよりもずっと複雑なものであるかもしれない。
仮説としてはこちらの方がロマンがあるだろう。そして天王星に複雑なオーロラが本当にあるのなら、きっといつの日か我々に紹介されるはずだ。それは一体どんな光景なのか、今から楽しみに待つとしよう。
この研究は、『JGR Space Physics』(3月31日付)に掲載された。
References:First X-rays from Uranus Discovered | NASA
記事全文はこちら:天王星から発せられるX線を初めて検出(チャンドラX線観測衛星) https://karapaia.com/archives/52300794.html
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