父親をお父さんと呼ぶこともできなかった自閉症の生徒が唯一心を許したのは学校の用務員さんだった(アメリカ)


 ノースカロライナ州にある小学校に、みんなからとても愛されている用務員の男性がいる。彼は、用務員としての仕事を懸命にこなすだけではなく、全ての生徒を目にかけ、いつも思いやりの心で接している。


 そんな用務員さんのやさしさは、言葉を発しない自閉症の少年の心にも伝わった。用務員さんが毎日少年に目をかけ、自然に接していくうちに、ついに「こんにちは」と言えるほどになったのだ。『11abc News』などが伝えている。
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Mr. Brown's Surprise

【学校のみんなから愛されている勤続15年の用務員】

 レイモンド・ブラウンさんは、ノースカロライナ州イーデントンのホワイトオーク小学校で用務員として勤務して15年になる。

 学校の用務員というと、主に学校の雑務だが、ブラウンさんはそれ以上のことをして毎日学校に尽くしている。

 それは、全生徒との関りだ。同校のミシェル・ニューサム校長は、ブラウンさんの人となりについて、このように話している。

彼は、この学校にとってなくてはならない、基盤のような人です。何が彼を特別にしているかというと、それは生徒たちとの関係です。

彼は、全ての生徒ととてもいい絆を育んでいて、子供たちのため、学校のために本当によく尽くしてくれてます。


【自閉症の生徒がついに心を開いた】

 ブラウンさんの人柄をよく知っているのは、学校職員や生徒だけでなはない。自閉症の子供を持つ母親、エイドリアン・ウッズさんも、ブラウンさんによって我が子を救われたと語る。


私には4人の子供がいますが、3人はホワイトオーク小学校の卒業生です。今は末っ子のエイモス(7歳)が通っていますが、自閉症で言葉を発しないエイモスを毎日学校に送り出すことは、正直容易ではありません。

でも、ブラウンさんはエイモスに救いの手を差し伸べてくれました。登校初日に、彼の方から自然に息子に声をかけてきてくれたのです。

それから毎日、彼は息子にやさしく接し、怖がらないように話しかけ、いつでも気にかけてくれました。

そんなブラウンさんに対して、息子は徐々に心を許していったのです。自閉症の子供を持つ親にとって、これがどれほど嬉しいことか。

やがて、息子が「こんにちは」とブラウンさんに返すようになり驚きました。当時、家では息子は自分の父親に「お父さん」と呼ぶことさえなかったのです。

ブラウンさんが息子の心に大きな変化をもたらしてくれたのです。とても感動し、2人の絆を特別なものに感じました。

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 ブラウンさんとの交流が深まるにつれて、エイモス君の周りには他の生徒たちも集まるようになったという。


 みんな、ブラウンさんが大好きで、そんなブラウンさんが気にかけるエイモス君を、他の生徒たちも気をかけるようになったのだ。

 やがて、エイモス君は人気者になった。誰がエイモス君の手をつないで教室まで連れていくかで争ったりまでするようになった。

 「息子がこんなふうに他の子供たちに愛されることは、私にとっても本当に嬉しいこと」そう感激したエイドリアさんは、常々ブラウンさんの息子への思いやりに感謝していた。

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【学校職員と親たちからサプライズ】

 ある日、ノースカロライナ州でスクールヒーローイベントが開催され、ブラウンさんも学校推薦でノミネートされた。残念ながら優勝することはできなかった。

 それを知ったエイドリアさんは、自身のFacebookアカウント『Tales of an Educated Debutante』で生徒の親やホワイトオーク小学校に呼びかけ、「自分たちがブラウンさんにヒーロー賞を与えるのはどうか」と提案。寄付金を募ったところ、なんと35000ドル(約380万円)ものお金が集まった。

 実は、ブラウンさんには結婚38年になるという妻との間に、4人の子供がいたそうだが、そのうちの1人をバイク事故で失ったそうだ。

 ブラウンさんの娘の1人に協力してもらい、「結婚38周年記念のイベント」だと言って、父親を呼び出すことに成功した。

 3月20日、ブラウンさんはタキシードを着て、娘が指定した場所へと向かった。するとそこには、ホワイトオーク小学校の職員や子供たちの親が大勢いた。


 これにはブラウンさんもびっくり!

 更に、エイモス君の母エイドリアさんから、ヒーロー賞として35,000ドルの小切手を手渡されたブラウンさんは、信じられないと声を上げた。

 エイドリアさんは、「学校職員や訪問者にも、いつも丁寧で親切なブラウンさんは、子供たちにもちゃんと向き合って接してくれる。私は、そんなあなたのやさしさを何度も見ました」と、ブラウンさんの人柄を改めて称賛。

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 また、ニューサム校長も感激するブラウンさんの前で、このように絶賛した。

あなたは、この賞に値する素晴らしい人物です。私たちホワイトオーク小学校の良き仲間として、あなたを当校に迎え入れたことを、本当に嬉しく思っています。全生徒、スタッフ、そして私も、みんなあなたのことが大好きです。

 予期せぬ高額の寄付金を受け取ったブラウンさんは、そのお金で学校の全ての子供たちをアイスクリームパーティーに招待し、職員に食べ物を購入すると約束。

 「まずは、子供たちの喜ぶことを」と考えるところが、いかにもブラウンさんらしい。

 残ったお金は、自宅を修繕する費用にして中古のトラックを買う予定だという。でも、コロナで長い間身内にも会えていないので、妻と旅行に出て親戚に会いたいとも話している。

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 生徒たちの中には、「ブラウンさんがお父さんやお祖父ちゃんだったらいいな。
そしたら学校へ行くのももっと楽しくなる」と言う子もいるそうだ。

 ブラウンさんはそれほどまでに回りから愛されているのだ。愛を捧げ続けていくうちに、その愛は全て自分の元へと帰ってくる。まさにそれを体現したかのような話だ。

written by Scarlet / edited by parumo
追記(2021/04/10)心を開くという表現を心を許すという表現に変えて再送します

記事全文はこちら:父親をお父さんと呼ぶこともできなかった自閉症の生徒が唯一心を許したのは学校の用務員さんだった(アメリカ) https://karapaia.com/archives/52300936.html
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