母親を亡くしたホッキョクグマの子、炭鉱作業員に救助され、子犬のようになつく(ロシア)


 北極圏セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島の南端に位置するボリシェヴィク島で、母を失ったホッキョクグマが、現地で金採掘をしていた作業員らに発見された。

 その孤独なホッキョクグマの子は、お腹を空かせて作業員らの拠点に近付いてきた。気の毒に思った作業員らが食べ物を与えたところ、ずっと彼らのそばを離れなくなった。

 まるで子犬のように作業員らになついたホッキョクグマはとてもかわいがられた。だがこのままでは自然の中を生き抜くことは困難だろうと心配した彼らは、専門家に相談し、現在子グマはロシア本土のモスクワ動物園に保護されたようだ。『The Siberian Times』などが伝えている。

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Polar bear cub【母を失ったホッキョクグマの子、人間の前に姿見せる】
 去年の12月、北極圏に位置するボリシェヴィク島で、金採掘をしていた作業員らの前に、子供のメスのホッキョクグマが姿を現した。

 作業員たちは、その子グマの母親が数か月前に命を落としていたことを知っていたが、孤児とはいえ野生生物にむやみに近付いてはいけない。当初彼らは、子グマが拠点にやって来ても最初は見て見ぬふりをしていたという。

 しかし、まだ自分で狩りをすることができない子グマは、明らかに飢えており、食べ物を必死に探し求めている様子だった。

 作業員らが準備する食事の匂いにつられて、何度も拠点に姿を現す子グマを見るうちに、作業員らは気の毒に思い、食べ物を与え始めた。

 子グマはずっと孤独だったのだろう。食べ物をくれる作業員らに懐き始めた。

 動画には、子グマが木製の梯子に登って遊ぶ姿や、作業員に声をかけられると駆け寄り、抱き着くようにしてじゃれつく姿などが収められている。
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【犬のように作業員になついた子グマ、しかし別れの時が...】
 まるで犬のように懐いてくる子グマを可愛がっていた作業員たちだったが、数ヶ月後には現地での仕事を終え、ロシア本土に戻らなければならない。

 人になつき、食べ物を与えられていた子グマが、この先たった1頭で自然界で生き延びることは困難だろうと、作業員らは心配していた。

 ついにその日がやってきた。現場から適切な場所に相談することは叶わず、少しでも子グマが食べ物を口にできるようにと、拠点のゴミ箱の蓋を開けたままにし、彼らは本土へ戻ってすぐに専門家に相談した。
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【モスクワ動物園が子グマを保護】
 2月初旬、作業員たちから連絡を受けて子グマの保護に名乗り出たのが、ロエフ・ルチェイ動物園の園長を務めるアンドレイ・ゴーバンさん(56歳)だった。

 ゴーバンさんは、数年前にもクラスノヤルスク地方の都市に突如現れた栄養失調のホッキョクグマを保護するプロジェクトに参加し、自身の園で飼育している。

 今回、ゴーバンさんがモスクワの野生生物当局に相談をもちかけたところ、ホッキョクグマは絶滅危惧種に指定されていることもあり、このままでは生き残れないだろうと判断された子グマを保護することが決定した。

 モスクワ動物園の協力を得て、ヘリで現場へ向かったゴーバンさんは、たった1頭でさまよう孤独なその子グマを発見した。ゴーバンさんは無事に保護し、モスクワ動物園へと運び込んだ。
本来野生動物に餌を与え、飼いならすようなことをしてはいけません。ですが、彼らが食べ物を与えなければ、母を失ったホッキョクグマの子供は生き延びることはできなかったでしょう。

ホッキョクグマは絶滅危惧種です。彼らの行動が正しいかどうかは別にして、ホッキョクグマの命を救ったことは確かです。(ゴーバンさん)
 炭鉱作業員は孤独で空腹なホッキョクグマの子供を放っておけなかった。餌付けしてしまったが、自分たちが帰った後、すぐにそのことをしかるべき場所に報告し、結果的にその子グマは生きながらえることができた。

 ちなみに、ホッキョクグマが人間と長期間接した後、野生に戻った事例はこれまで報告されていない。

 現在、保護された子グマはモスクワ動物園で飼育されているが、数か月も経てばかなり成長するため、今後もこのホッキョクグマが快適に暮らしていくことのできる、より大きな保護区を見つけることが次の課題になるようだ。
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Медведь с острова Большевик | Московский зоопарк | Прямая трансляция - Москва 24
written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:母親を亡くしたホッキョクグマの子、炭鉱作業員に救助され、子犬のようになつく(ロシア) https://karapaia.com/archives/52301493.html
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