死刑になった殺人犯を電気ショックで生き返らせようとした地質学者

credit:Wikimedia Commons (Public Domain)
 1818年11月4日 スコットランド・グラスゴー大学医学部の公開手術室に大勢の人が集まった。死刑になった男が、電気ショックによって蘇生されるのを今か今かと辛抱強くまっているのだ。


 男の名はマシュー・クライデズデール。2ヶ月前に70歳の男性を殺した罪で死刑を宣告された。スコットランドでは、1751年に制定された殺人法によって、死刑後に解剖されることも刑罰の一部として認められていた。

 これにより死刑囚は死んだあとも、更なる罰が与えられることになり、医師には研究として、解剖用の遺体を提供することができる。今回の場合は 地質学者が大勢の聴衆のまさに目の前で遺体に電気ショックを与えるという試みだった。

【死刑囚の遺体を使った電気ショック実験】
 クライズデールの死刑は刑務所で行われた。その後遺体は荷馬車に乗せられて 大勢が待ちうけている大学に運ばれた。

 アンドリュー・ユアは地質学に貢献したことで知られているが、ビジネス学や化学もかじっていた。

 死んだカエルに電気刺激を与えると手足が痙攣することや、死刑後の犯罪者の心臓を確実に感電させるこれまでの試みから、死者を電気刺激することで生き返らすことができると固く信じていた。

 筋肉や神経に電気刺激を与えて、その影響を知る実験を行ったこれまでの科学者たちと違って、ユアは、もっと強力なバッテリーを使って独自の実験を行うことを望んでいた。

 もっと効果を長続きさせれば、遺体を蘇生することができると考えたのだ。
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【強力な電気ショックを与えれば死者は生き返るのか?】
 当然、誰かが蘇生を信じて遺体と大きなバッテリーを手に入れたりすれば、たくさんの人が集まる。
そんな大勢の見物人の前で、ユアは遺体の血を抜き、首と背骨に切り込みを入れて、脊髄にバッテリーをつないだ。

「すぐに、体中のすべての筋肉が、寒さに激しく身を震わせるように痙攣した」ユアはこの実験について書いている。

「バッテリーを接触させるたびに、とくに体の左側が激しく痙攣した。2本目の電極を腰から踵にかけて動かすと、あらかじめ曲げてあった膝が、勢いよく投げ出され、足を押さえようとした助手のひとりがひっくり返りそうになったほどだった」
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 電圧を上げながら遺体にショックを与え続けると、この見世物を楽しみに集まっていた人たちの中には、意識を失う者が出たり、耐えきれずに出ていく者が出る始末だった。

「遺体の顔のあらゆる筋肉が、怒り、恐怖、絶望、苦悶、ぞっとするような笑みといった、この世のものとは思えないほどおぞましい表情になった」ユアは続ける。

 「この時点で、見物人たちは恐怖と吐き気でその場を出て行き、ひとりの紳士は意識を失って倒れた」

 1時間もすると、ユアは今度は肺の刺激を試みた。「この成功はそれはすばらしいものだった。完全な、いや、苦し気な呼吸がすぐに始まったのだ。胸が持ち上がり、下がる。腹が突き出て、引っ込む。横隔膜が引っ込んで、虚脱した」【死者は蘇らず】
 ユアは、遺体の血を残しておいたら、生き返ったかもしれないと考えた。

「この試みは殺人者にとっては望ましいことではなく、法律にも反しているが、科学にとっては非常に名誉なことであり、役立つことなので、ひとつの例として許されるだろう」

 だが結局は、実際には大したことはなにも証明できなかった。
地質学者の思いつきだからといって、遺体を無責任にもてあそぶべきではないという教訓だけが残った。

References:The Geologist Who Tried To Electrocute An Executed Murderer Back To Life | IFLScience/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:死刑になった殺人犯を電気ショックで生き返らせようとした地質学者 https://karapaia.com/archives/52302242.html
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