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大量絶滅は、280万年という期間内に全種の4分の3以上が死に絶える現象と定義されている。そうした大量絶滅は、これまで5度起きたと考えられており、これらは「ビッグファイブ」と呼ばれている。
だが、それは過去のことなどではない。現在、6度目の大量絶滅が進行しているという意見があるからだ。国際自然保護連合によると、1970年以降、脊椎動物の個体数は平均68%減少し、3万5000種が絶滅の危機にあるという。
はたして私たちの行為は地球に生息する種にどのような影響を与えているのか? 過去に起きた大量絶滅はそれを学ぶヒントになるかもしれない。
ここでは過去5回起きた大量絶滅イベントを1つずつ見ていこう。
【1度目:O-S境界(4億4000万年前)絶滅率:85%】
オルドビス紀とシルル紀の境目に起きた、地球史上最初の大量絶滅。37億年前に誕生した生命は、拡散して多様化。この時期、まだ生物は地上に進出していなかったが、浅瀬にはサンゴや腕足類がひしめいていた。
しかしオルドビス紀末、ゴンドワナ超大陸で急速に氷河が発達。大量の海水が氷になったために、海の水位が大幅に下がった。こうして海洋生物は生息域を奪われ、食物連鎖が崩壊。繁殖することが難しくなった。
寒冷化の原因ははっきりしないが、一説によると、北米アパラチア山脈の形成が関係している可能性があるという。山脈に含まれるケイ酸岩塩が侵食されたことで、大気から温室効果ガスである二酸化炭素が吸収されてしまったのだ。
ほかにも有害な金属が海に流れ込んだことが原因とする説、超新星から放たれたガンマ線がオゾン層に大穴を開け、大量の紫外線が降り注いだとする説、火山が原因とする説もある。
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The Ordovician Extinction Documentary【2度目:F-F境界(3億6500万年前)絶滅率:75%】
後期デボン紀におけるフラメニアン期とファメニアン期の境目で発生。デボン紀はいわば「魚の時代」で、古代海洋生物が興亡した時期だ。すでに生物は陸上に進出していたが、大多数は海で暮らしていた。が、それも木や花といった維管束植物の登場によって終わりを迎える。
植物が根を進化させると、岩だらけだった陸が栄養豊かな土に変わっていった。これが海に流れ込むと、大量の藻類が繁殖するようになる。海中から酸素が奪い取られる結果となり、海洋生物を窒息させてしまったのだ。
異説もあり、海洋の酸素濃度が低下したのは、火山の噴火が原因とする説もある。
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Exploding Star Triggered Mass Extinction【3度目:P-T境界(2億5300万年前)海洋生物96%、陸上生物70%】
ペルム紀と三畳紀の境目では、地球上に生息していた全生物の90%が絶滅した。
地球史上最大の大量絶滅で「大絶滅」とも呼ばれる。
原因は現在のシベリアにあたる地域で火山活動が活発化し、それによって噴出した二酸化炭素によって気候が激変。海の水位が上昇し、酸性雨まで降り注いだことだと考えられている。二酸化炭素はさらに海水に溶け、海洋生物を害し、酸素まで奪った。
当時、大陸は1つにまとまりパンゲア超大陸が形成されていたが、このために海流が生じず、二酸化炭素の蓄積が長期化したという説もある。また海水温の上昇も海水から酸素が奪われた原因とされる。
特に打撃を受けた生物にはサンゴがいる。大絶滅からサンゴが再び回復するには1400万年の時間がかかった。
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The Permian Extinction【4度目:T-J境界(2億100万年前)絶滅率80%】
三畳紀は新しい生命が増加し、恐竜が進出し始めた時代だ。だがジュラ紀との境目にまたも大量絶滅が起きることになる。
その原因ははっきりしていないが、現在の大西洋一帯で火山が活発化したことではないかと推測されている。
P-T境界と同じく、火山から大量の二酸化炭素が排出され、気候が激変。
気温が上昇したことで世界中の氷が解けて、海の水位が上昇するとともに、酸性化も進行。これが海洋生物と陸上生物を絶滅に追いやったとされる。
二酸化炭素の増加が永久凍土に閉じ込められていたメタンの放出にもつながり、気候を激変させたとする説もある。
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Lecture 1 Triassic Jurassic【5度目:K-Pg境界(6600万年前)絶滅率75%】
おそらくもっとも有名な大量絶滅は、中生代と新生代の境目に起きたこの大量絶滅だ。恐竜が絶滅したのはこの時期だ。
現在のメキシコ、ユカタン半島にあたる地域に、直径13キロの小惑星が時速7万2000キロで落下。これによって「チクシュルーブ・クレーター」と呼ばれる幅180キロ、深さ19キロの大穴が口を開けた。その衝撃によって1450キロの範囲が焼き尽くされ、1億8000万年続いた恐竜の時代が終わりを迎えることになった。
粉塵が大気中に巻き上げられたことで空は数ヶ月も暗く陰り、植物は光合成ができなくなった。こうして植物が枯れ果て、恐竜の食物連鎖が断ち切られる。さらに地球の気温も急激に下がり、世界が長く寒い冬に突入したことも追い討ちとなった。
ほとんどの絶滅は小惑星の衝突からわずか数ヶ月のうちに起きたと推定されている。
だが空を飛んだり、穴を掘ったり、あるいは海に潜れた生物の多くは生き残った。たとえば、恐竜の直接的な子孫で唯一今日まで生き残っているのは鳥だ。1万種以上の現生種が、この災厄の生き残りの子孫だと考えられている。
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Experience the Disaster that Wiped Out Dinosaurs【そして現在進行している種の激減】
現在進行している種の激減は、人間が関係しているかもしれないと言われている。だからこそ、私たちはそれを食い止める鍵を握っているのだ。
種の絶滅を食い止めようと奮闘する研究者や活動家は世界に大勢いる。パリ協定からグローバル・リソース・イニシアチブまで、こうした立法は大量絶滅を防ぐ戦いの最前線だ。
絶滅危惧種が直面する最大かつ直接的な脅威の1つが違法取引だ。野生動植物の違法な取引は環境の観点から無責任であるだけでなく、新型コロナの大流行のおかげで、動物由来の感染症が広まるリスクを高めるものとしても認識されるようになってきた(新型コロナウイルスの本来の宿主はコウモリだったのではないかという説がある)。
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種の絶滅を食い止める最善の方法の1つは、個体数をモニタリングし、手遅れになる前に問題を特定することだ。
隠しカメラや人間による実地調査でそのためのデータが集められているが、最近では人工衛星や人工知能を使った研究も進められている。空から高解像度画像を撮影し、アルゴリズムで一瞬のうちに個体数を数え上げるのだ。
あるいはクローンを使った保全も検討されている。たとえば今年2月、30年以上前に死んだクロアシイタチの細胞からクローンを作成することに成功した。
クロアシイタチはすでに絶滅したと考えられていたこともある北米の固有種で、今も危機的な状況にある。こうしたクローン技術は、生物多様性保全における新しいツールになるのではと期待されている。
References:The 5 mass extinction events that shaped the history of Earth — and the 6th that's happening now | Live Science/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:地球を襲った5回の大量絶滅「ビッグファイブ」から学ぶ、現在進行中の種の激減が及ぼす影響 https://karapaia.com/archives/52302384.html
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