茹でると立体化する平面パスタを開発。収納場所をとらないし輸送コストも削減できる

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 世界中で深刻化するプラスチック問題。その対策として食品に使われるプラスチック容器や包装の減量化などがあげられるが、環境問題に取り組むアメリカの研究チームが目からウロコの新形状パスタを開発した。


 彼らが開発したのはなんと変形するパスタで、調理前は平らなのに茹でると立体になるのだ。

 このフラットパスタは長年培ったモーフィング技術を応用したもので、従来の変形しない立体パスタより包装コストが抑えられ、保管や輸送スペースまで節約できるという。

 単に形を変えるだけでなく、見た目や食感も伝統的なパスタに寄せた新型パスタとは?その秘密に迫ってみよう。
[動画を見る]A new twist on pasta dough could reshape food manufacturing

【平らなのに茹でると立体!パスタにモーフィング技術を応用】

 この変形パスタを開発したのはアメリカのカーネギー・メロン大学でモーフィング材料設計を専攻するMorphing Matter Labの研究チームだ。

 茹でたら形が変わるとは面白い発想だが、その源にあるのは環境問題や食品包装にかかる費用の節約だ。このフラットパスタは調理前は平らなため、従来のパスタより包装コストを抑えられるのだ。

 にしてもなぜ立体になるのか?その秘密はパスタについた細かな溝にある。

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 通常のパスタは茹でると吸水し、ほぼそのままの形で膨張して柔らかくなるが、このパスタはその作用を計算に入れて施された水平な溝により茹でると立体になる。

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 このモーフィング(変形)技術は、プラスチックやゴム、布や食品などのモーフィングメカニズムやアプリケーションに携わったライニング・ヤオ助教授とMorphing Matter Labの長年の研究に基づいている。

【従来のパスタそっくりで包装コストを減らすパスタを】

 研究者たちは、包装コストを下げる新たな方法を求めてこのパスタにたどりついた。

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 従来のマカロニやペンネなどの立体的なショートパスタは、包装がかさばり輸送中も割れやすい。だが彼らの平らなパスタは包装も簡単で安価になるうえ、包装資材そのものも減量できる。


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 とはいえ古くから人々に愛されてるパスタは独特の食感や口当たりで、その形もさまざまなソースにからまるよう洗練されている。

 そこで彼らは茹でると見た目も味も、伝統的なパスタそっくりになるフラットパスタに取り組んだ。

【溝を作ってひたすら実験。野外調理テストも】

 実験を始めたチームは、セモリナ粉で作った平らな生地に溝をつけては茹でてを繰り返し、その深さと間隔によって茹で上がりの状態を調べ、いくつかのパスタの形を決めた。

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 そこで得たデータはすでにコンピューターモデルに入力済みで、工程の複製も可能。今後は機械学習を用いた自動化により食品メーカーが変形パスタを簡単に作り提供できるシステムを目指すという。

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 また彼らはケースに入れたフラットパスタをハイキングに持参して野外調理試験も行った。

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 その結果、平らなパスタはリュックに詰めても邪魔にならず、ハイキング中のゆれや衝撃にも割れない耐久性があり、キャンプ用のポータブルストーブを使った調理でも従来のパスタ同様おいしくなることがわかったそうだ。

【輸送と保管スペースのほかCO2排出量も削減する可能性】

 アメリカでは食品包装用のプラスチック材料が埋め立て地の大半を占めており、持続可能な未来につながる包装技術の重要性が高まっている。

 こうした環境問題に向き合うチームが作ったフラットパスタは、包装コストだけでなく輸送と保管スペースまで節約できる。

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 またチームは、このパスタが調理による二酸化炭素の排出量を削減する可能性を述べている。

 イタリアでは温室効果ガス排出量の約1%がパスタ調理によるものといわれているが、平らなパスタは筒状のパスタより速く調理できるため、調理中の二酸化炭素の排出量削減に貢献しうるという。


【和菓子のゼラチンにもモーフィング技術活用を視野に】

 アメリカだけでなく、世界中の埋め立て地や海を占拠するプラスチック製の容器や包装は地球規模の課題だが、包装ではなく中身の形を変えるというのは斬新な視点かもしれない。

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 なおこのパスタに使ったモーフィング技術は表面の溝で制御できるため、他の膨潤性材料の変形にも利用できる。そこで今度はアメリカでも人気の和菓子に使われているゼラチンなどの変形も視野に入れてるそうだ。

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 またチームはこの技術によるシリコンシートの変形も実証済みで、ソフトロボティクスや生体医療装置に使用できる可能性も示唆している。

 このパスタについての論文「Morphing Pasta and Beyond」は学術雑誌Science Advancesの2021年5月号に掲載された。

 なんというかそのまま揚げたら丸まりがちなイカやエビの天ぷらとは逆なんだ、と感心したのは私だけだろうか。でもってこの技術をお菓子に使うとどうなるのかそこんとこも気になるな。

References:laughingsquid / techxplore / youtubeなど /written by D/ edited by parumo

記事全文はこちら:茹でると立体化する平面パスタを開発。収納場所をとらないし輸送コストも削減できる https://karapaia.com/archives/52302489.html
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